◎眼差しが照り返されて生のありように向けられる
武藤大祐(ダンス批評)
どれだけ「斬新な」ダンスか、どれだけ「秀逸な」作品か、などということより、それに立ち会うことが自分の日々の生活にどれだけ深刻な影響や衝撃をおよぼすか、ということを基準にして、作品なりダンスなりに立ち会いたい。いいかえれば、日々の瑣末事や社会の中の諸々の出来事とともに生きている自分の身体をきちんと携えたままで作品やダンスに行き当たりたい。そんな気持ちを目覚めさせてくれたという意味では、まるで湯水のように「作品」が大量消費される年度末の東京の不毛な公演ラッシュにも感謝せずにいられない気さえする。