◎劇の厳密なる作動(後編)
清末浩平
5-散文性の優位
山口猛は『同時代人としての唐十郎』(三一書房、1980年)の中で、70年代の唐十郎戯曲に共通する構成を「一幕においての登場人物の紹介、及び事件の発端、二幕における展開(この場合、ほとんどヒロイン、あるいはヒーローが傷つく)、そして三幕におけるヒロインの再生と後日譚」というふうに明快に整理し、唐がこの戯曲構造を「崩すことなく守っている」ことを批判的に重要視している。扇田昭彦もまた、唐十郎全作品集第4巻(冬樹社、1979年)の解題において「唐十郎の戯曲は、一編一編が独立しながらも、しかし結局のところ、同心円状に渦まくいつも共通のドラマを読んでいるのではないかという印象を私たちに与える。[……]唐十郎のドラマの原型を探ることは、つねに唐十郎読解の基本作業であろう」と述べる。