◎「庭」が可能にするリアルな妄想の感触
木村覚
庭というのは自然そのものではない。むしろ妄想そのものだ。自然の内に押し込め入念にしつらえた妄想。庭とはまたひとを招く場所、庭が体現する妄想に客人が巻き込まれ吸い込まれる場所。時折迷いネコが通り過ぎたりする。庭劇団ペニノ(以下、ペニノ)の庭ではそんなネコのように役者は観客の存在を無視したまま、現れて消えていく。普通のセリフ劇がセリフとそれを口にする役者へ観客の注意を一元化するのに、ここでは庭とそこにいるすべてのものどもが等しく興味深い。
小劇場レビューマガジン
◎「庭」が可能にするリアルな妄想の感触
木村覚
庭というのは自然そのものではない。むしろ妄想そのものだ。自然の内に押し込め入念にしつらえた妄想。庭とはまたひとを招く場所、庭が体現する妄想に客人が巻き込まれ吸い込まれる場所。時折迷いネコが通り過ぎたりする。庭劇団ペニノ(以下、ペニノ)の庭ではそんなネコのように役者は観客の存在を無視したまま、現れて消えていく。普通のセリフ劇がセリフとそれを口にする役者へ観客の注意を一元化するのに、ここでは庭とそこにいるすべてのものどもが等しく興味深い。
◎この舞台はちょっと凄いぞ 身体表現の新次元を開示 藤原央登 結論から言えばこの舞台はちょっと凄いぞというのが観劇後の率直な感想である。とにかく何はなくともそれだけは言っておきたい。これまで人間の不確かな存在を「死」 … “前田司郎作・演出「ノーバディ」(演劇計画2006)” の続きを読む
◎この舞台はちょっと凄いぞ 身体表現の新次元を開示
藤原央登
結論から言えばこの舞台はちょっと凄いぞというのが観劇後の率直な感想である。とにかく何はなくともそれだけは言っておきたい。これまで人間の不確かな存在を「死」という命題に照射させて表現してきたのが前田司郎だが、本作は登場人物がただ死んでいき、舞台上に累々と死体が増えていくという「死」そのものを描いた作品である。身体表現の新奇な領域を開示したという点で、そして前田司郎がやろうとしていることの一旦を垣間見ることができたという点でもこの作品は以後ターニングポイントとして記憶されてしかるべき公演である。
◎果実の香り立ち上る 五感で描く女と生命の姿
葛西李奈
劇団から送られてきたDMの手触りと質感で「匂い」を思い出した。「ニセS高原から」では本家本元の脚本から全てのキャストの男女を入れ替えた演出が話題になっていたが、どうやら頭で覚えていた情報と肌で覚えていた感覚は違うらしい。作品中に出てきたスイカ、夏みかん、ブルーベリーを含め、皮をむくと瑞々しさが溢れ出すような台詞やしぐさに五感を刺激されていた部分が大きかったようだ。いまだ本公演を拝見したことがなかった私は、その「匂い」を確かめるために、今回劇場に足を運んでみることにした。
週刊マガジン・ワンダーランドの第9号が発行されました。庭劇団ペニノ「アンダーグラウンド」(木村覚)のほか、前田司郎作・演出「ノーバディ」(藤原央登)蜻蛉玉「へ音記号の果物」(葛西李奈)の3本。いずれ劣らぬ力作です。次号 … “週刊マガジン・ワンダーランド第9号発行” の続きを読む
週刊マガジン・ワンダーランドの第9号が発行されました。庭劇団ペニノ「アンダーグラウンド」(木村覚)のほか、前田司郎作・演出「ノーバディ」(藤原央登)蜻蛉玉「へ音記号の果物」(葛西李奈)の3本。いずれ劣らぬ力作です。次号予告(第10号)は10月4日発行。別役実作「壊れた風景」(竹内孝宏) エジンバラ演劇フェスティバル(中西理)などを予定しています。購読は登録ページからお願いします。
海外でも評価の高いダンスカンパニー「H・アール・カオス」(H.ART CHAOS)の演出・振付を担当してきた大島早紀子さんのインタビューが国際交流基金のwebサイトに掲載されています。「オーラを発していた」ダンサー白河 … “H・アール・カオスの大島早紀子インタビュー” の続きを読む
海外でも評価の高いダンスカンパニー「H・アール・カオス」(H.ART CHAOS)の演出・振付を担当してきた大島早紀子さんのインタビューが国際交流基金のwebサイトに掲載されています。「オーラを発していた」ダンサー白河直子との出会いから最新作まで、「独自の美意識と哲学に支えられた」作品の成立過程や社会との関わり、影響などが語られています。聞き手はダンス評論家の立木燁子さん。
◎ピンク:かわいい子には悪ノリさせろ! 伊藤亜紗 高めのポニーテールにリストバンド、揃いのハイソックスにはもちろんミニのスコートか短パンを合わせてめいっぱいの元気をアピールっ!なのはいいけど思いっきり振りあげたナマ足 … “ピンク「We Love Pink」” の続きを読む
◎ピンク:かわいい子には悪ノリさせろ!
伊藤亜紗
高めのポニーテールにリストバンド、揃いのハイソックスにはもちろんミニのスコートか短パンを合わせてめいっぱいの元気をアピールっ!なのはいいけど思いっきり振りあげたナマ足はバレリーナだったらちょっとあり得ないようなぽてっとくびれのないラインで……。
◎「近所」のドラマを掘り起こす
柳澤望
「ポタライブ」というのは、岸井大輔さんが自身で生み出した演劇様式をあらわすためにあみだした造語で、ポタリングのポタとライブを組み合わせた言葉。観客は実際の街を散歩しながらそこで行われるパフォーマンスを見ていきます。
学習院大学の公開セミナーで22日(金)、演出家の鈴木忠志氏が「現代世界演劇とスズキ・メソッド」のテーマで講演します。聞き手は演劇評論家の大岡淳氏。この11月には新国立劇場に初登場、しかも16年ぶりの東京公演で、「シラノ … “鈴木忠志氏、無料公開セミナー” の続きを読む
学習院大学の公開セミナーで22日(金)、演出家の鈴木忠志氏が「現代世界演劇とスズキ・メソッド」のテーマで講演します。聞き手は演劇評論家の大岡淳氏。この11月には新国立劇場に初登場、しかも16年ぶりの東京公演で、「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ」「オイディプス王」の鈴木演出3作品を一挙に上演するなど話題になっている折り、世界から注目される「鈴木身体論」を直に聴ける珍しい機会です。しかも参加費無料!
週刊「マガジン・ワンダーランド」第8号が20日発行されました。 今週は2本、お届けします。今月23日から始まる「ポタライブ最終自主公演」を前に、その特徴を緻密に読み解いた柳澤望さんの公演評と、ダンスシーンで話題の3人 … “週刊「マガジン・ワンダーランド」第8号発行” の続きを読む
週刊「マガジン・ワンダーランド」第8号が20日発行されました。
今週は2本、お届けします。今月23日から始まる「ポタライブ最終自主公演」を前に、その特徴を緻密に読み解いた柳澤望さんの公演評と、ダンスシーンで話題の3人組「ピンク」の「動物化」を分析する伊藤亜紗さんのレビューです。柳澤さんはチェルフィッチュやポタライブの可能性をいち早く指摘した慧眼の持ち主。伊藤さんは東大大学院で美学を学ぶ若い才能です。
次号(第09号, 9月27日発行)は庭劇団ペニノ「アンダーグラウンド」(木村覚)、 前田司郎作・演出「ノーバディ」(藤原央登)の予定です。
公演が終わって2カ月もたってからの紹介は気が引けるのですが、まあご勘弁願って、ポツドール特別企画「女のみち」を取り上げます。三浦大輔作・演出の本公演(本番!)も意見が分かれますが(例えば「夢の城」公演評)、今回の特別企画の評価もだいぶ振り幅が大きかったようです。いつものように、肯定的評価から入って、だんだん問題の所在を洗い出していくという構成にしましょう。長くなりましたが、ご容赦を。