青年団若手自主企画vol.36「御前会議」

青年団若手自主企画vol.36 現代口語ミュージカル「御前会議」 @アトリエ春風舎 4月7日~14日 作・平田オリザ 潤色/演出・柴幸男 平田オリザの戯曲をラップで読んでみた、というこまばアゴラ劇場の会員向けフリーペーパ … “青年団若手自主企画vol.36「御前会議」” の続きを読む

青年団若手自主企画vol.36
現代口語ミュージカル「御前会議」
@アトリエ春風舎 4月7日~14日
作・平田オリザ 潤色/演出・柴幸男

平田オリザの戯曲をラップで読んでみた、というこまばアゴラ劇場の会員向けフリーペーパーに惹かれて行ってみた、が、若干の不安もあった。
リズム感がないのには自信がある。
歌い上げないで、台詞と歌を乖離させないで作るというミュージカルを、どこまで感じ取れるかを危惧していた。
「目を閉じればミュージカル 耳を閉じれば口語演劇」(当日パンフより)
もし耳が、閉じっぱなしだったらどうしよう。

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庭劇団ペニノ「苛々する大人の絵本」

◎困惑の無為と不可知論
伊藤亜紗(Review House編集長)

「苛々する大人の絵本」公演チラシ会場となった渋谷にほどちかいマンションの一室は、かつて王侯貴族のあいだで流行した「驚異の部屋」もかくやという標本空間である。剥製のオオツノジカやイノシシの頭と脚でできたテーブル、クロコダイルの模型、時代がかったワインなど奇妙なものが陳列され、それらの珍奇品と同じように役者もまた陳列される。物量がふえるのと同時に空間はますますちぢんでいくようにみえるが、もともとこの空間は何かの誤りであるかのようにせまい。背筋をのばせないほど天井が低いのに役者は頭におおきなかぶりものをしており、たちまちスカートやクロスに引火しそうな燭台をもってウロウロと歩き回っている。

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「ムネモパーク」(シュテファン・ケーギ構成・演出)

◎舞台メディアを人びとが出会うツールに 演劇のフレームから離れて
大岡淳(演出家・批評家・パフォーマー)

「ムネモパーク」公演チラシヨーロッパで人気を博するリミニ・プロトコルのメンバー、シュテファン・ケーギ構成・演出による『ムネモパーク』は、期待に違わず見応えのある公演であった。

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Port B「サンシャイン62」

◎陽光と昔日 ~豊島区サンシャイン百景の旅
村井華代(西洋演劇研究)

「サンシャイン62」公演チラシPort Bの「ツアー・パフォーマンス」第3弾、『サンシャイン62』である。一昨年の『一方通行路 ~サルタヒコへの旅』では巣鴨地蔵通り商店街を、昨年の『東京/オリンピック』では「はとバス」で新旧東京の様々な “戦場”を旅した。今回は、メトロ東池袋駅の上にある劇場「あうるすぽっと」から5人一組で出発し、地図とタイムスケジュールに従って池袋サンシャイン60ビル周辺に散在するポイントを移動、再び出発点に戻ってくるという手筈である。

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鹿目由紀「不惑と窓枠の行方」

◎女性の心理を重層的にあぶり出す 「不惑」と「窓枠」を使って
鳩羽風子(新聞記者、演劇評論)

「劇王」チラシ1、上演時間20分の制約の下で

劇作家に与えられた上演時間はたったの20分。その制約の下で一体、どこまで表現できるのか? そんな興味を持って足を運んだのが、愛知県の長久手町文化の家で開かれた「劇王Ⅴ」というイベント。日本劇作家協会東海支部が毎年、プロデュースしており、今回で5回目を数える。

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ポツドール「顔よ」(クロスレビュー)

「顔よ」公演チラシポツドールの新作「顔よ」が下北沢・本多劇場で開かれました(4月4日-13日)。テーマはずばり「顔の美醜」。「逃れられない人間の最大の業である顔の美醜は、(主宰の)三浦が5年間あたため続けたテーマであり、執拗なまでにリアルにこだわった演出はそのままに、人間関係においての究極のテーマを生々しく、ありのままに描出する」と劇団リリースにありました。 そこで4月のワンダーランド・クロスレビュー(第5回)はこの「顔よ」公演を取り上げました。いつものように5段階の評価と400字コメント(ミニレビュー)です。
4月16日発行の週刊マガジン・ワンダーランド クロスレビュー特集(ポツドール)号に、その後寄せられたレビューを追加しました。(掲載は到着順)

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悪い芝居「なんじ」

◎相互理解への疑義と不信 観客の挑発から次なるステージを
藤原央登(「 現在形の批評 」主宰)

「なんじ」公演チラシ開演前の劇場で流れていた尾崎紀世彦の『また会う日まで』。客入れ音楽のみならず、随所に挿入歌として使用される歌謡曲が未経験のノスタルジーを喚起し、それと共に原色鮮やかな照明と有り余る身体の力をバカバカしい笑いとギャグへ接続して駆け抜けてゆく悪い芝居の劇世界は、そのセンスの良さに反し、演劇を志向する自己と刹那の享楽を求めて観客席に座る我々への冷めた視線によって早くも一つの文体を獲得している。この根底に流れる基本テーゼこそ、この集団が他の若い集団と峻別した意識の高さの発露となっているのだが、舞台を観ながらではなぜ彼らは演劇というジャンルで表現活動をしているのか、なぜ演劇でなければならなかったのかということを考えさせられた。

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青年団リンク青☆組「うちのだりあの咲いた日に」

◎揺るがないリアリティ ぎっしり詰まった伏線が見事
小畑明日香(慶大生)

「うちのだりあの咲いた日に」公演チラシ処女作の五年ぶりの再演、であり、執筆当時の自分の意向をも演出家の立場からよく汲み取っていたと思う。
脚本家コンクール入賞作家の、演出家としての力量も充分に感じさせてくれた。あ、若手演出家コンクールで賞とっている人でした。失礼しました。

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MONO「なるべく派手な服を着る」

◎「おひ!」
武田浩介(演芸作家・ライター)

「なるべく派手な服を着る」公演チラシ劇団MONOの第35回公演は、『なるべく派手な服を着る』。
まずは、このタイトル。特に難しい単語も使っていないし、非日常的な動作の描写でもない。「なるべく派手な服を着る」。うん。服を着る。派手なね。派手なのを着るわけね。分からないことは、一つもない。

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「ヤン・リーピンのシャングリラ」

◎滅びゆくものは美しく、喪われたものだから懐かしい
文月菖蒲(古書・骨董研究家)

「ヤン・リーピンのシャングリラ」公演チラシ東京渋谷のBunkamuraで『ヤン・リーピンのシャングリラ』は喝采をもって迎えられた。同時期、チベットでは2008年3月10日から始まったデブン寺の僧によるデモを発端として大規模な暴動が発生し、中国政府への抗議活動と中国政府による鎮圧行動が続いている。華やかな祭典、北京オリンピックを目前に控え、中国における少数民族のあり方が改めて注目されている。それは中国が大国だからこそ人道的であるべきだという理論よりも、アメリカを中心とした近代感覚が無意識に抱いている、文化・歴史への強い憧憬に近い。

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