3人で語る「2010年10月はコレがお薦め!」

「長短調(または眺(なが)め身近(みぢか)め)」公演チラシ
「長短調(または眺(なが)め身近(みぢか)め)」公演チラシ

★カトリヒデトシさんのお薦め
・Kermit Office Presents「て、に、を、は、がおかしい。」(Artist Space
千石空房
10月8日‐10日)
遊園地再生事業団「ジャパニーズ・スリーピング 世界でいちばん眠い場所」(座・高円寺10月15日‐24日)
★鈴木励滋さんのお薦め
まことクラヴ「事情地域ヨコハマ」(象の鼻テラス10月13日‐16日)
KENTARO!!「僕はまた今日も未完成の音楽で唄う」(こまばアゴラ劇場10月14日‐24日)
・身体地図/岩渕貞太「UNTITLED」(STスポット10月14日‐16日)
★徳永京子さんのお薦め
・あうるすぽっとプロデュース「長短調(または眺(なが)め身近(みぢか)め)」(あうるすぽっと9月30日‐10月3日)
カンパニーデラシネラ「異邦人」(シアタートラム10月7日-13日)
城山羊の会プロデュース「微笑の壁」(ザ・スズナリ10月22日-31日)

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テレビで見る演劇(~10月末)

 昨年亡くなったピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団が6月に来日。その折上演された「私と踊って」が10月2日と10日に放映されます。ピナと言えば、演劇的手法を取り入れた〈タンツ・テアター〉で知られますが、これはそうした独自の表現を確立しつつあった1977年の作品。古楽器リュートを伴奏に、ダンサーが歌うドイツの古い民謡が流れます。同時放映のドキュメンタリーは、ピナの指導のもと、一般からの参加者で上演された「コンタクトホーフ(=ふれあいの館)」の製作過程をたどったもの。参加したのは、ボスニア紛争で家族を失った少女や、差別を受けている移民の少年たちで、彼らは果敢に作品に挑んでいきます。
 同じくドキュメンタリーでは、23日の「長すぎた青春が終わる日―人気劇団・ラストステージの夏」。27年前に旗揚げし、作・演出のマキノノゾミのもと、紀伊国屋ホールなどで公演を続けてきた人気劇団M.O.P.の解散公演までを追います。
(場合により、番組内容、放送日時などが変更になることがあります。また、地上波デジタル放送の番組表は関東地区のもので、地域により一部番組が異なります)
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初日レビュー2010 第2回 鳥公園「乳水」

鳥公園「乳水」公演チラシ
鳥公園「乳水」公演チラシ

 初日レビュー2010の第2回は、鳥公園「乳水」(9月23日-26日、日暮里d-倉庫)を取り上げます。主宰の西尾佳織さんは会場で配布されたパンフレットで、2年半在籍した劇団「乞局」を6月に離れたことを明らかにしています。今回はいわば一本立ちした最初の公演でした。9人の評者による五つ星評価と400字レビューをお読みください。掲載は到着順です。(編集部)

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第七劇場「雨月物語」

◎「野良仕事」で得た越境の可能性
 カトリヒデトシ

第七劇場「雨月物語」公演チラシ 第七劇場は野良仕事をしてる。と言ってみよう。

 このところBeSeTo+やポスト・トークなどで「現在、演劇には三つの系がある」と、私は話している。「を」と「で」と「な」と名付け、分類している。まず、テキスト「を」やる人たちを「を」派と呼ぶ。完成したテキストを元に上演をしていくもので、ほぼ戯曲=作家中心主義といえる。次に、テキスト「で」やる人たちを「で」派と。古典などの既成戯曲を元に作品づくりをしていくもので、ほぼ演出中心主義といえる。最後の「な」はちょっと苦しいが、テキストは「ない」か、あっても作品の要素のひとつにしかすぎず、作品の中心にこないものを「な」派と考えている。身体表現を重視したり、物語性の「ない」テキストを使ったりするものをここに分類している。これらは固定したものではなく一つのカンパニーや作家でも、時に系をかえたり、横断したりもする。チェルフィッチュだから「な」とか、単純には言えない。

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アリスフェスティバル2010始まる

アリスフェスティバル2010チラシ
アリスフェスティバル2010

 小劇場の老舗、新宿・タイニイアリスを拠点に開かれるアリスフェスティバル2010が9月22日から始まった。来年2月までの期間中、東京、大阪、札幌など各地の劇団のほか、日本、韓国の劇団、それに台湾の演劇人も加わった合同公演など計14公演が予定されている。今回は特に韓国の東亜演劇賞3賞( ‘Best Play’, ‘Best New Director’ , ‘Best Stage Design’)を獲得、昨年度の韓国ベストプレイと言われる「 Floor in Attic 屋根裏の床を掻き毟る男たち」公演(10月2日-4日)が話題を呼びそう。
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初日レビュー2010 第1回 サンプル「自慢の息子」

「自慢の息子」公演チラシ
「自慢の息子」公演チラシ

 ワンダーランドの「初日レビュー2010」第1回をお届けします。
 公演初日の舞台を見てレビューを掲載するのは、ワンダーランド創設以来の懸案でした。万端の準備が整ったわけではありませんが、評者の方々の協力を得てとりあえず年内は続けたいと思います。
 第1回は、松井周主宰のサンプル公演「自慢の息子」です。岸田國士戯曲賞にノミネートされ、戯曲が海外でも翻訳される期待の劇作家、演出家の手による公演は、新しい演劇の可能性を探り、多様な試みを取り上げてきたワンダーランドの「初日レビュー」企画にふさわしい門出だと思います。 レビューは、★印の5段階評価+400字。到着順に掲載します。(編集部)

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平田オリザ+石黒浩研究室(大阪大学)「ロボット版 森の奥」

◎ロボット演劇 感心と感動のあいだに
 鳩羽風子

「ロボット版 森の奥」公演チラシ
「ロボット版 森の奥」公演チラシ

 「ロボット」という新語がチェコの作家、カレル・チャペックの戯曲「R.U.R」で生まれてからちょうど90年後。ロボットと人間が共演する舞台「ロボット版・森の奥」が8月、世界で初めて劇場公開された。名古屋市で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の開幕を華々しく飾り、新聞やテレビ、雑誌などでも大々的に報道された。
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連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」 第2回

笠原玲子さん(ポケットスクエア支配人)
◎「貸小屋」のプライドとやりがい

 中野駅南口から徒歩5分。4つの劇場が集まったポケットスクエアは、私企業が経営する小劇場群としては、下北沢の本多グループに次ぐ規模のものと言えます。数多くの劇団に舞台を提供しながら、経営者の素顔はよく知られているとは言えません。支配人の笠原玲子さんに演劇への思いや劇場経営の実情、劇場法案(仮称)について感じることなどをうかがいました。(編集部)

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「初日レビュー」を始めます

 ワンダーランドでは新企画として、公演初日を対象にレビュー、翌日ウエブに掲載する「初日レビュー2010」を始めます。始まったばかりの公演について評価を下すという、ワンダーランドとしては初めての試みです。3人以上のレビュアーが星5つ満点の評価付きでレビューします。まずは年内いっぱいの期間限定、月1~2回掲載の予定です。
 記念すべき第一回は9月15日に初日を迎えるサンプル「自慢の息子」を取り上げます。世界的に注目を集める鬼才松井周の最新作です。レビューは翌16日中にワンダーランドのサイト(http://www.wonderlands.jp/)に掲載されます。どうぞご期待ください。
(ワンダーランド編集長 水牛健太郎)

シアター・リフレクション「箱とジョージさん」

◎ 人形たちの映し出すもの
 柾木博行

「箱とジョージさん」公演から
撮影=神崎千尋

 演劇関係者が集まると必ず出る言葉が「最近面白い舞台ありましたか?」。今回この原稿を書くきっかけも、ある芝居の帰りに(ワンダーランドの)北嶋氏から言われたこの言葉がきっかけだ。いつもは、「いやー、これっていうのはないですねぇ」という枕詞を挟んで、2、3記憶に引っかかった芝居の名前をあげるが、その時は違った。
 「この前、座・高円寺でやったシアター・リフレクション、あれはすごかったです。子どものための人形劇だけど、内容は大人向けというか、もうシュールで不条理、カフカを観ているような感じで、なかには怖がってる子どももいたくらいで。最後はタルコフスキーの『惑星ソラリス』を思い出したりして…」
 まさに今年見た舞台ではダントツに刺激的な作品であった。今思い起こせば7月は芝居関係で会う人すべてにシアター・リフレクションを勧めていたようにも思う。このカンパニーが面白いのは昨年観て分かっていたからだ。しかし今回の『箱とジョージさん』は、こちらの予想をさらに裏切るような刺激的な作品だった。今回はこのデンマークの人形劇団シアター・リフレクションの魅力について解き明かしてみたい。

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