◎男と女の距離と作品と作品の距離、そして観察者
高木龍尋(大阪芸術大学大学院助手)
France_panの公演は観ようと思っていた。というのも、前回公演「前向きな死に方」(2007年3月、精華小劇場)が私にとって衝撃的な作品だったからである。関西、というよりも大阪の小劇場には珍しく、何もしない、作品だった。何もしない、というのは勿論、芝居をしない、ということではない。舞台の上から観客の反応、つまりはウケを無闇に狙わないということだ。ひとりのダメ男が自殺するまでを淡々と舞台の上に載せてゆき、後方に張られた男の生命線となっている赤い糸を自ら切る瞬間へと集中してゆく作品には、観客に媚びたような箇所は全くなかった。ただ、作品の中の時間を進めてゆく…… それがダメ男の感覚の虚無と異常を客席にまでしのばせてきていた。