さいたまゴールド・シアター「白鳥の歌」「楽屋」

◎劇場に根を張る巨木に
 木俣冬

さいたまゴールド・シアター公演チラシ

 劇場脇の通路を抜け階段を上がり、さいたま芸術劇場大ホールのステージ上に特設された劇空間に足を踏み入れると、左側の奥に複数の鏡とテーブルがあって、さいたまゴールド・シアターの俳優たちが座っている。そこがアクトスペースかと思ったら、違って、右側に階段上の客席が設置されていた。
 客席前のアクトスペースのつきあたりには、舞台裏を想像させる機材や小道具などの入った棚がいくつか並んでいた。
「こいつあしまった!」と老俳優ワシーリー・ワシーリイチ・スヴェトロヴィードフが上手からよろよろと登場し、チェーホフの短編戯曲「白鳥の歌」がはじまる。
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SHIMADA STUDIO 「EYES もつれた視線の彼方の夢は?」

◎リアル過ぎるバックステージ群像劇
 木俣冬

「EYES もつれた視線の彼方の夢は?」公演チラシ
「EYES」公演チラシ

 開演時間、数分前に突如「稽古開始○分前です」という声が劇場に響く。この作品の演出家であり、劇中の演出家も演じる石丸さち子の声だ。本番じゃなくて稽古? 稽古を見にきちゃったの? なんてあせる人はワンダーランド読者にはいないだろうが、ふだん演劇を見ない人なら、油断してたら不意打ちされた気持ちだろう。ここから既に芝居ははじまっている。

 「EYS もつれた視線の彼方の夢は?」は、シェイクスピアの「夏の夜の夢」をミュージカルにして上演する、その舞台稽古のもようを描いたミュージカル。劇中劇ならぬミュージカル中ミュージカルが展開していく。
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さいたまネクスト・シアター 「2012年・蒼白の少年少女たちによる『ハムレット』」

◎世代を超えた普遍性映す
 木俣冬

「2012年・蒼白の少年少女たちによる『ハムレット』」 公演チラシ
公演チラシ

 役者というものは、時代の縮図、ちょっとした年代記だ。

 ハムレットの台詞にこういうものがある(訳:河合祥一郎)。
 とすれば、蒼白の少年少女俳優が、2012年という時代を映し出す鏡だ。今回、『ハムレット』を上演するにあたり蜷川幸雄は、蒼白い顔をして表情に乏しく、何を考えているのかわからないとされる現代の若者たちだけで『ハムレット』をやることにした。
 これまでのさいたまネクスト・シアター公演では、キャリアの長い俳優の客演によって大人の役をまかなっていたが、今回は1979年-92年生まれ、十代から三十代前半の劇団員のみで、年配者の役までやることに。
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「喜劇一幕 虹艶聖夜」(作・演出 藤田俊太郎)

◎蜷川をどう「継承」するか
 木俣冬

「喜劇一幕 虹艶聖夜」公演チラシ 劇場の中へ入り席につく。そこは新宿ゴールデン街劇場。小さな舞台には天井から床、壁面までモノクロ写真が整然と貼られていた。ところ狭しと本棚やテーブル、椅子、ランプなどが置いてある。どうやら誰かの部屋のようだ。
 開演までまだ10分くらい時間がある。ふと隣席を見ると、女性客がビデオを取り出し舞台に向けた。
「撮影はご遠慮ください」とやんわりとスタッフが声をかける。
 そのうち、劇場入り口から俳優たちが行列を作り始めた。ライブを見に来た客という設定らしい。
 ライブがはじまった。
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さいたまネクスト・シアター「真田風雲録」

◎泥まみれの舞台 「他者」意識さす蜷川演出
木俣冬

「真田風雲録」公演チラシ彩の国さいたま芸術劇場大ホールのロビーに入ると、正面にある客席への扉は閉ざされている。代わりに、向かって右にある客席脇の廊下を通るようにと誘導される。次に階段を降りる。どこに向かっているのかよくわからない(実は楽屋と舞台袖をつなぐ通路)が、案内に従って歩いていくと、やがて、階段状になった仮設の客席にたどり着く。こういう迷路のような仕掛けは、アングラ演劇の野外劇を思わせる。

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鵺的「暗黒地帯」

◎澱んだ世間、汚物が逆流 暗闇の中に一筋の光も
木俣冬

「暗黒地帯」公演チラシ舞台の壁面に、細いパイプが一面に張っている。場面転換は、この壁面に、
章の数字を幻想的に映すことで理解できる。
薄暗い舞台に、時折、ゴボッゴボッと不快な音が響く。
やがて、この音は、マンションの下水がうまく機能せず、逆流している音だということがわかる。この音のように汚物がうまく流れていかない気持ちの悪さが、芝居の通奏低音となっている。

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弾丸MAMAER「デマゴギー226」

◎演劇への果敢な挑戦に熱くなる 女中部屋の密室劇で2・26事件を描く
木俣冬(フリーライター)

「デマゴギー226」公演チラシなんて隙のない鮮やかな作戦!
冒頭から最後まで、演出家・竹重洋平の指揮に魅入られた。今更ながらorganize が団体を組織することであり、芸術を構成することでもあることを体感させてもらった。

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Co.うつくしい雪「My space, のようなので。」(インタビュー・ショウ)

◎ことばとからだが生成する「幸福な空間」
木俣冬(フリーライター)

「My space, のようなので。」公演チラシ新しそうな白く清潔なホールの中に入ると、アクトスペース上の中心にはマトリョーシカが2体飾ってある。その後ろには、上下に2体のマシーンが向き合って置かれている。ピッチングマシーンのようなもので、それぞれが投げたボールは、見事に相手のマシーンの受け口に入り、受けたボールが循環してまた投げられるという仕掛けになっている。もらったリーフレットによると「きまぐれキャッチボール」という名前の装置らしい。ジーッジーッとゆっくり定期的にボールが投げられるが、時々、軌道が外れてしまうこともある。すると、袖に待機している出演者らしき人物が、ボールを拾って、マシーンの中に戻す。ボールを投げるタイミングも時々ずれる。その、ズレが、見ていて飽きさせない。

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新感線プロデュース いのうえ歌舞伎☆號「IZO」

◎平らな目線でふつうの人間を描く
 木俣冬(文筆自由労働者)

 結論から言ってしまおう。
 いのうえひでのりが平らな目線を獲得した。
 これまでの新感線は、異界の人間と人間の対立や共存を描く作品が多かった。ハデなアクションも多くなるので、斜めになった八百屋舞台が必須だったし、縦横無尽に舞台空間を使っていた。リアルではないが、俳優を前後に立たせ、対話するというドラマチックな見せ方も多く用いていた。

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