◎劇場に根を張る巨木に
木俣冬
劇場脇の通路を抜け階段を上がり、さいたま芸術劇場大ホールのステージ上に特設された劇空間に足を踏み入れると、左側の奥に複数の鏡とテーブルがあって、さいたまゴールド・シアターの俳優たちが座っている。そこがアクトスペースかと思ったら、違って、右側に階段上の客席が設置されていた。
客席前のアクトスペースのつきあたりには、舞台裏を想像させる機材や小道具などの入った棚がいくつか並んでいた。
「こいつあしまった!」と老俳優ワシーリー・ワシーリイチ・スヴェトロヴィードフが上手からよろよろと登場し、チェーホフの短編戯曲「白鳥の歌」がはじまる。
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彩の国さいたま芸術劇場大ホールのロビーに入ると、正面にある客席への扉は閉ざされている。代わりに、向かって右にある客席脇の廊下を通るようにと誘導される。次に階段を降りる。どこに向かっているのかよくわからない(実は楽屋と舞台袖をつなぐ通路)が、案内に従って歩いていくと、やがて、階段状になった仮設の客席にたどり着く。こういう迷路のような仕掛けは、アングラ演劇の野外劇を思わせる。
舞台の壁面に、細いパイプが一面に張っている。場面転換は、この壁面に、
なんて隙のない鮮やかな作戦!
新しそうな白く清潔なホールの中に入ると、アクトスペース上の中心にはマトリョーシカが2体飾ってある。その後ろには、上下に2体のマシーンが向き合って置かれている。ピッチングマシーンのようなもので、それぞれが投げたボールは、見事に相手のマシーンの受け口に入り、受けたボールが循環してまた投げられるという仕掛けになっている。もらったリーフレットによると「きまぐれキャッチボール」という名前の装置らしい。ジーッジーッとゆっくり定期的にボールが投げられるが、時々、軌道が外れてしまうこともある。すると、袖に待機している出演者らしき人物が、ボールを拾って、マシーンの中に戻す。ボールを投げるタイミングも時々ずれる。その、ズレが、見ていて飽きさせない。
背番号零による初の会話劇という挑戦は、コトバとコトバの合間に肉の手触りをふと浮き上がらせた。