◎始まりの場所へ-「ハッシャ・バイ」の海-
金塚さくら
海だ。あと一歩踏み出せば足元は溶けるように崩れ、そこは茫漠の海だ。
赤いワンピースを着て、女は波打ちぎわすれすれに立っている。ほとんど怒っているかのような厳しい無表情で、睨むほどに強く遠い水平線を見つめる。
「私は母のない国に行くのです」
海底の地下トンネルを抜けて。怒りの声にも嘆きの声にも耳を貸すことなく、絶望にだけ未来を託して。海に臨む最後の地平に、彼女は独り立つ。
小劇場レビューマガジン
◎始まりの場所へ-「ハッシャ・バイ」の海-
金塚さくら
海だ。あと一歩踏み出せば足元は溶けるように崩れ、そこは茫漠の海だ。
赤いワンピースを着て、女は波打ちぎわすれすれに立っている。ほとんど怒っているかのような厳しい無表情で、睨むほどに強く遠い水平線を見つめる。
「私は母のない国に行くのです」
海底の地下トンネルを抜けて。怒りの声にも嘆きの声にも耳を貸すことなく、絶望にだけ未来を託して。海に臨む最後の地平に、彼女は独り立つ。
◎「ノーベル精神分裂症」が漱石を砕く
杵渕里果
名古屋が拠点の少年王者舘が今年も下北沢にやってきた。作・演出の天野天街を中心に八十二年に旗揚げした劇団である。
『夢十夜』、といえば漱石と思いきや、『夢+夜』、「+」は足し算の符号だった。
〈ゆめたすよる〉、よくみると振り仮名もある。夏目漱石、との記載はないから、これは私の不注意だ。漱石を期待したのですこし残念に思う。
◎『ヴァギナモノローグス』の御開帳
杵渕里果
もう十年も前のことだけど、TVタックルで田嶋陽子がこんなことを言っていた。
「オトコの性器は〝キンタマ”って“金”がつくのにオンナにはそういうのないじゃん!」
私、そんなことないと思った。
◎「観る」とはどういう行為なのか
金塚さくら
舞台は薄暗く、奥までほとんど剥き出しだ。装置と呼べるものは上手に立てられたパネルと、下手に据えられたダンスレッスン用のバーしかない。もうひとつ、簡素な演台が奥に置かれている。
演台の向こうに男が立つ。ヘッドホンを着けカセットテープらしきものをセットし、手元のノートに目を落として論説文のようなものをゆっくりと朗読し始める。「本当のことを話す者にとっては-」
◎コミュニティの誕生、成熟、崩壊、再生へ 編み直す演出で成長する作品 カトリヒデトシ 現在、演出に専念している多田淳之介の最後のオリジナル作である「LOVE」の再演を見た。 今作は「演劇LOVE2009~愛のハネム … “東京デスロック「演劇LOVE2009~愛のハネムーン~」” の続きを読む
◎コミュニティの誕生、成熟、崩壊、再生へ 編み直す演出で成長する作品
カトリヒデトシ
現在、演出に専念している多田淳之介の最後のオリジナル作である「LOVE」の再演を見た。
今作は「演劇LOVE2009~愛のハネムーン~」というツアー。1月の韓国公演を皮切りに、6月に埼玉県富士見市のキラリ☆ふじみでプレビューの後、桜美林大学(神奈川)、青森、7月に神戸、そして来年2月に鳥取と各地で公演していく。再演に全く関心のなかった多田が初めて取り組む再演ものにして、初の国内巡業作品である。
◎猥雑だけど洗練、「遊び心」も みる人を変える力持つ
小林由利子
6月13日(土)の夜の部に『ユーリンタウン』を見に行くと、劇場の前は何やら怪しい人たちでごったがえしていた。子どもの頃白黒テレビで見た石器時代の毛皮を着ている人がうろうろしたり、コスプレなのかダンサーなのか不明な女性が一心不乱に踊っていたり、仮面をつけた人が一人芝居をしていたり、何だろうと不思議に感じた。入口がわからず、うろうろしていると、「こっち!」と黒いホットパンツ、谷間胸あけへそ出し、黒い制帽、赤いシンボルの入った、昔にナチスの映画のキャバレー場面で出てきたような娼婦風警官と思しき人に声をかけられた。舞台では、大音響で狂ったように阿波踊りをしている人たちがいて、その間を縫って、もう一人女性警官が待ち受け、その先にもう一人いて、「ここよ!」と席を指し示され、やっと上部にある自分の席に辿りつくことができた。
◎舞台こそが化粧
金塚さくら
埃だらけで薄汚れた楽屋の、そこだけが聖域か何かのように白い布で覆われている。ちゃぶ台より少し大きいくらいの、平机。起き上がった女座長は威勢よく座員に檄を飛ばし、かと思うとぶつぶつ何やらひとりごちる。夏の夕暮れ、あと一時間もしないうちに舞台の幕が開く。
◎「地域演劇祭」の原型に 地元劇団の奮起に期待 カトリヒデトシ 長久手町でのセカンドステージは1st選抜5団体と、各地で推薦されたカンパニーである「全国地域推薦」6団体、「主催者推薦」5団体、計16団体が参加した。地 … “演劇博覧会「カラフル3」観戦記(下)” の続きを読む
◎「地域演劇祭」の原型に 地元劇団の奮起に期待
カトリヒデトシ
長久手町でのセカンドステージは1st選抜5団体と、各地で推薦されたカンパニーである「全国地域推薦」6団体、「主催者推薦」5団体、計16団体が参加した。地域の推薦は各地の表現に精通する団体が行った(注1)。
5月2日(土)~4日(月)に「森のホール」(最大客席数819)と「風のホール」(最大客席数300)とで開催された。
◎「これからの演劇界」を考える機会に 全国から25カンパニーが結集 カトリヒデトシ 名古屋で開催された、国内最大規模の小劇場の博覧会に行ってきた。「演劇8耐」と銘打つだけに、1時間の舞台を1日で8ステージ見るという、 … “演劇博覧会「カラフル3」観戦記(上)” の続きを読む
◎「これからの演劇界」を考える機会に 全国から25カンパニーが結集
カトリヒデトシ
名古屋で開催された、国内最大規模の小劇場の博覧会に行ってきた。「演劇8耐」と銘打つだけに、1時間の舞台を1日で8ステージ見るという、修行のような企画である。
またそれを全部見る酔狂を敢行。のべ4日間、30本を鑑賞した。なるべくいろんな劇団を見たいと思っている人間には格好のイベントであった。
しかし、今回の名古屋行きは、「演劇のショーケースとはなにか」、「東京外、地域での演劇の活動」、「地域小劇場の今後」など、きわめて「これからの演劇界」での課題を実感させ、考えさせてくれる機会となった。
◎演劇への果敢な挑戦に熱くなる 女中部屋の密室劇で2・26事件を描く
木俣冬(フリーライター)
なんて隙のない鮮やかな作戦!
冒頭から最後まで、演出家・竹重洋平の指揮に魅入られた。今更ながらorganize が団体を組織することであり、芸術を構成することでもあることを体感させてもらった。