演劇博覧会「カラフル3」観戦記(下)

◎「地域演劇祭」の原型に 地元劇団の奮起に期待
 カトリヒデトシ

 長久手町でのセカンドステージは1st選抜5団体と、各地で推薦されたカンパニーである「全国地域推薦」6団体、「主催者推薦」5団体、計16団体が参加した。地域の推薦は各地の表現に精通する団体が行った(注1)。
 5月2日(土)~4日(月)に「森のホール」(最大客席数819)と「風のホール」(最大客席数300)とで開催された。

▽16団体でセカンドステージ

 初日出場順に紹介する。まず、「森のホール」から。
・劇団スマイルバケーション「さすらいダンボール」
 1stと同じ出来栄えだが、それでも見入ってしまうのは、正副代表の体の張り方にある。へんに成熟せずに、体を酷使する芝居を続けてほしい。
・帰ってきたゑびす「ワーニおじさん」(東京・主催者)
 題名に引かれたが、わりと普通な井伏「山椒魚」的世界の変形。美術的な衣装が魅力的で、舞台一面に広がる裾の処理に黒子を何人も投入できる所に団体の力が現れる。象徴劇だが、わかりやすい範囲にとどまっているところにバランスの良さがある。
・劇団C-Factory「シャインズマン」
 期待する団体だけにあえて言うが、1stと寸分違わない芝居を二度見るのはつらかった。演出が都度ごとに変わる冒険を、とはいわないが、一度完成したからといって、+αを加えず提出してくるのはいかがなものか、と思う。
・座”K2T3(福岡推薦)「ルールブック」
 20年選手らしい。女性だけの登場人物で、練り上げられたコントをきちんと演じる姿勢に好感がもてる。最後の「ドレミの歌」は圧巻で、それぞれの音に感情とふりをつけて「歌を演じる」という、「くだらない思いつき」を、抱腹絶倒で完成度の高い笑いに作りあげる、真摯な態度には打たれた。そこまで徹底する努力に尊敬を禁じえない。
・劇団コーヒー牛乳「男の60分 -名古屋場所 -」
 1stから更に演出を工夫し、ダンスの体術を工夫し、更に見やすい、分かりやすい芝居になっていた。ベタになるとも手順を省かず、一度完成した作品を再度、磨き上げる姿勢に頭がさがる。何度みても「モジャンテス」(ガキ大将が扮する怪獣)のバカバカしさは大笑いできる。
・試験管ベビー(名古屋・主催者)「はかない恋の話でも」
 観客参加型演出。前説で周知された観客の合い言葉により、筋運びが変わるというベテランならではの手練。ベタな恋愛コメディかと思いきや、ラストに梯子をはずしてしまう、意外性が秀逸。
・TAKE IT EASY!(神戸推薦)「TAKE IT EASY!×末満健一「千年女優」」
 戦前の映画界から話を説き起こす歴史ロマン。印象が散漫になる場面もあるが、物語構造がしっかりしているので、大河ロマンの香りを損なうことはない。大劇場でも通用する壮大さである。できる役者陣なので、格調を損なわないためにいいわけじみた説明やベタなギャグはいらない。
・柿喰う客「恋人としては無理」
 観劇は三度目になるが、売れっ子劇団だけに、その都度キャストが変わる。それに伴い脚本も手直しされ、演出も変更される。ために都度ごとに新鮮で、手にする感動が変わることに素直に感心する。今回はキレイな話になった。

 「風のホール」
・オイスターズ(名古屋主催者)「トラックメロウ」
 観光バスが無責任な運転手によりはぐれていく。乗客が一対一の会話しかできない、人の話を聞かない人たちで笑わせる。輪唱や相対性理論など唐突なモチーフが差し込まれ、ラストは奇妙な味で終わる。もう少し演出の効いた仕掛けのある別作品がみたい。
・ユニット美人(京都推薦)「山内一豊が言う前に!」
 不格好なコントと、下手なミュージカル。実はきちんと踊れる女性二人が笑いのために何でもやるところに感動する。いざとなると「ブルマ姿」になって「ブルマあげてこ!」と苦境を乗り切る(笑)。なんだかな、ではあるが、計り知れないものを感じる。自分の世界をとことん追求してほしい。
・Theatre劇団子(東京・主催者)「愛知のオンナ」
 紀伊国屋公演した実績をもつ団体だけに、うまさが並ではない。
 結婚式のビデオ撮影のための帰郷が、避け続けていた旧友との過去を見つめ直す契機になる話。構成がしっかりしている上に、「御当地もの」をつくる戦略に感心する。「アイちゃん」役の田中千佳子がよいコメディエンヌとして印象に残った。
・弦巻楽団(札幌推薦)「神の子供達はみな遊ぶ」
 設定の妙で見せる。一世を風靡した超能力少年少女アイドルグループのその後日談。構成もうまく、役者の演技力をカバーしている。流れの緩急はいま一つだが、テンションのかけ方に優れ、楽しめた。
・負味(東京推薦)負味コント選集「負味と申します。」
 映像を多用したコント。10本の出来に大きなばらつきがあるので、全体としてはインパクトにかけたが、まだまだできる実力を感じる団体だと思う。
・坂口修一(大阪推薦)「煙突」
 座付きの老優の芸談を一人芝居でじっくりと。少年時代から長い人生をていねいに立体化させて描く。もっと見ていたい気にさせる俳優の演技である。のびしろに期待が大きいので、たくさんの人物を演じ分けるものが見たい。
・特攻舞台Baku-団「ピッツァ・ヒーロー・ミックス・Lサイズ」
 1stでも見たが、暑苦しい芝居が爽快感に満ちた仕上げになるところに好感。二度見ると、オチの弱さに気づくが、そこまでに十分に楽しませてくれているので好印象は減じない。この路線を追求してほしい。ブレイクする予感を持つ。
・ニットキャップシアター(京都。主催者)「サルマタンX vs ドクターベン ~こだわりすぎた男達~」
 ビロウな話を最後までやりきる体力に感心した。役者のキャラがきちんとたち、笑わせるためなら、どんなベタでも恐れない精神力の強さに脱帽する。ただ、役者の力量にはっきりとした差が見えるので、もう少し演出でカバーする必要があるだろう。

▽「お祭り」の枠を脱するために

 各ホール各日1回の上演だが、期間中上演順を変え、各々計3回の上演機会が与えられる。立派なプロセミアム劇場での上演は、若手には魅力ある経験である。
 のべ48ステージで観客数は2000名(のべ9000名)あったと聞く。
 ゴールデンウィーク期間開催がどう作用したかはわからないが、「カラフル」が二日開催9団体で1500名、「カラフル2」が二日開催、のべ32ステージで2000名の動員だったので、一気に拡大路線とはいかない厳しさはある。

 「演劇博覧会」という企画が東京以外で開催されるのは、地域演劇の振興のために重要だ。また、4月29日には、同会場で地元「試験管ベビー」のかこまさつぐと、「劇団コーヒー牛乳」の柿ノ木タケヲのワークショップも開かれた。「観劇機会の創出」とともに「演劇体験の創造」も行うのは、振興戦略として適切で、この考え方が今後の「地域演劇祭」の原型となってもらいたい。

 しかし「博覧会」というためには、地元団体以外の出場が増えなければならないが、それに呼応して愛知以外からの観客動員が増加するというわけではない。「興行」的には厳しいだろう。2ホール同時開催をやめ、普通に4団体ごとのブロックを8日間で開催すれば、興行的に健闘できる可能性も高くなろう。しかし、名古屋市内で長期使用できる劇場がないことや(名古屋の劇場は音楽系に押されていると聞く)、凝縮された環境だからこそ、お互いの団体を鑑賞しあい、交流しあう機会が生まれるメリットなどを考えあわせると、一概に結論はでない。

 武豊町は大企業の工場があり、42,000余りの人口に比して立派な劇場を持つ豊かさがある。市民自身が立ち上げたNPOが運営し自主企画も多い劇場である。長久手も大学を幾つも抱え、緑多く、名古屋圏の人々に住みたいと言われる町。ここも人口48,000人ほどながら、武豊と同じく市民劇団を持つ演劇に理解のある町である。東京周辺の市町よりも「演劇の民度」は高いともいえる。

 2ndでは高校生の多さが印象的だった。顧問に引率された演劇部員と覚しき一団もいた。地元の高校に優待を行ったそうで100名弱が観劇した。更に「2」から始められた「ハイスクールミーティング賞」という、高校演劇連盟の賞の審査員20名も参加していた。短い休憩時間(15分)にロビーやホワイエで見たばかりの芝居の感想を声高に言い合っている畏れ知らずの姿に、ほほえましいものを感じた次第。彼らが「友達に見せたい」という基準で選んだ2劇団は、愛知全県の1000人以上の高校生が見る鑑賞会に招かれる。まさに団体にとっての「栄誉」である。選ばれたのは「劇団コーヒー牛乳」、「帰ってきたゑびす」。6月6、7日に名古屋市栄の「アートピアホール」で公演された。その他の受賞結果は注2にまとめた。

 さて、結果を見て、何と言うべきだろうか…。受賞した実質8つのうち、5つが東京団体。外が神戸と、京都の2団体である。地元名古屋の団体は4団体あったが、選ばれなかった。
 これは残念だった、となぐさめるだけでいいのであろうか? 東京の団体はやはり「一日の長」がある、という話でいいのか?

 大会プロデューサーの東海シアタープロジェクト(TTP)の大橋さん(注3)の話を伺うと、名古屋の小劇場はここ5年で40パーセント市場規模を縮小し、老舗「少年王者舘」や「B級遊撃隊」につづく新興団体が、現れづらい状況になっているという。まだ28歳だが、名古屋の演劇界の中で実績を残してきた大橋プロデューサー。彼の忸怩たる思いは想像に難くない。

 ところが、その期待される若手の芝居を見て感じるのは、「お笑い」全盛だった状況のその後ともいうべき、たとえお笑いでなくとも、内輪感がただよう作品作りの姿勢。名古屋という文化圏・商業圏が独立性があるためにかえって、団体に「外」に出ていこうという気迫が薄いところに問題を感じる。

 名古屋の中堅若手たちは今回受賞できなかった現実を重くうけとめてほしい。リージョナル・シアターが地元で根付き、支持されることは最低条件ではあるが、もうひとつ上の「文化性」を見据えた活動に結実していくのでなければ、「カラフル」が単なるお祭りの枠を脱することはできないだろうと思う。(了)

(注1)推薦団体は、東京「王子小劇場」、京都「フリンジシアタープロジェクト」、大阪「in→dependent theatre Group」、神戸「アートビレッジセンター(KAVC)」、福岡「FPAP(福岡パフォーミングアーツプロジェクト)」、北海道は「NPO法人生活支援型文化施設コンカリーニョ」である。
(注2)各受賞団体は次の通り。
・パブリックアワード(観客賞)。観客投票が同数のため2団体
 「劇団コーヒー牛乳」「Theatre劇団子」
・インターネットクチコミ賞(演劇ライフ賞) 「Theatre劇団子」
・各賞は、ハイスクールミーティング賞(「劇団コーヒー牛乳」「帰ってきたゑびす」)以外に、三重県文化会館賞「柿喰う客」、シバイエンジン賞「負味」、福岡のぽんプラザホール賞「帰ってきたゑびす」「TAKE IT EASY!」、コンカリーニョ賞「ニットキャップシアター」「ユニット美人」、Asect賞(名古屋の映像制作会社)「ユニット美人」。
(注3)TTPは2006年、愛知県が地域社会で活躍する優良事業者を認定・応援する「コミュニティビジネス優良モデル事業者」に選出された。「演劇ラボ」を企画運営し、各種のワークショップを運営していた。昨年度講師には地元演劇人のほか。デスロック多田、shelf矢野、青年団柴幸男などがいる豪華メンバー。名古屋と東京の若手人による演劇コミュニティ「366.0 project」の創立に携わった。
(初出:マガジン・ワンダーランド第144号、2009年6月17日発行。購読は登録ページから)

【筆者略歴】
 香取英敏(かとり・ひでとし)
 1960年、神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、公立高校勤務の後、家業を継ぐため独立。現在は、企画制作(株)エムマッティーナを設立し、代表取締役。ウェブログ「地下鉄道に乗って-エムマッティーナ雑録」を主宰。「カトリ式小劇場の歩き方」をワンダーランドに連載中。

【上演記録】
演劇博覧会「カラフル3

▽1st 武豊
3月14日(土)
11:00 旧劇団スカイフィッシュ
12:15 演劇組織KIMYO
13:45 BQMAP
15:00 Marmoset
16:15 劇団渡辺
17:45 劇団C-Factory
19:00 柿喰う客
3月15日(日)
10:30 劇団820製作所
11:45 劇団コーヒー牛乳
13:15 劇団蒼月
14:30 特攻舞台Baku-団
15:45 fuzzy m. Arts
17:00 劇団スマイルバケーション
18:15 西田シャトナー演劇研究所

▽2nd 長久手
2nd.stageタイムテーブル
5月2日(土)       【森のホール】———–【風のホール】
Aブロック    11:00  劇団スマイルバケーション—オイスターズ
Aブロック    12:15  帰ってきたゑびす———–ユニット美人
Aブロック    13:30  劇団C-Factory ————-Theatre劇団子
Aブロック    14:45  座”K2T3 ——————-弦巻楽団
=客席入れ替え
Bブロック    16:15  劇団コーヒー牛乳————負味
Bブロック    17:30  試験管ベビー—————-坂口修一
Bブロック    18:45  TAKE IT EASY! ————特攻舞台Baku-団
Bブロック    20:00  柿喰う客———————ニットキャップシアター

5月3日(日)       【森のホール】———–【風のホール】
Cブロック    11:00  劇団コーヒー牛乳————特攻舞台Baku-団
Cブロック    12:15  柿喰う客——————–坂口修一
Cブロック    13:30  試験管ベビー—————-ニットキャップシアター
Cブロック    14:45  TAKE IT EASY! ————負味
=客席入れ替え
Dブロック    16:15  劇団C-Factory ————-弦巻楽団
Dブロック    17:30  劇団スマイルバケーション—Theatre劇団子
Dブロック    18:45  帰ってきたゑびす———–オイスターズ
Dブロック    20:00  座”K2T3——————-ユニット美人

5月4日(月)      【森のホール】————-【風のホール】
Eブロック    10:00  帰ってきたゑびす————弦巻楽団
Eブロック    11:15  座”K2T3 ——————–Theatre劇団子
Eブロック    12:30  劇団スマイルバケーション—-ユニット美人
Eブロック    13:45  劇団C-Factory ————オイスターズ
=客席入れ替え
Fブロック    15:15  TAKE IT EASY!————-ニットキャップシアター
Fブロック    16:30  試験管ベビー—————-特攻舞台Baku-団
Fブロック    17:45  柿喰う客———————-負味
Fブロック    19:00  劇団コーヒー牛乳————坂口修一

主催:風林火山実行委員会、NPOたけとよ、武豊町教育委員会、長久手町教育委員会、東海テレビ放送、東海シアタープロジェクト
助成:(財)セゾン文化財団
舞台運営・統括:(株)若尾綜合舞台
映像:(株)Asect
劇団選出協力:FPAP、in→dependent theatre、神戸アートビレッジセンター、王子小劇場、フリンジシアタープロジェクト、NPO法人コンカリーニョ
特別協力:演劇ライフ、(財)三重県文化振興事業団、シバイエンジン、(株)Asect ほか
協力:名古屋演劇鑑賞会
企画・製作:カラフル3製作委員会


「演劇博覧会「カラフル3」観戦記(下)」への3件のフィードバック

  1. ピンバック: 大橋敦史
  2. ピンバック: おけこ
  3. ピンバック: 文化の家

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください