◎そして、飯島君にさようなら ~こんにちは、土屋さん~
宮本起代子(因幡屋通信発行人)

【九十九ジャンクション】
この風変わりな名の演劇ユニットは、プロデューサーHこと原田大輔、ツクモ芸能編集長こと大竹周作によって結成された。ふたりはいずれも演劇集団円所属の俳優である。公式サイトには「演劇づくりの各セクションに一切の制限を持たず、演劇界だけでなくあらゆる分野からの参加により、新たな風、新たな流れ、新たなワールドを生み出すことを掲げ、発足」とある。プロデュース形式をとり、書き下ろし作品を中心に今後5年間活動するとのことだ。
おもしろい企画やリクエストを「大募集!!」と呼びかけつつ、原田大輔がうんと言わなければ採用されないというから、ゆるいのかきついのかわからない。しかし新人劇作家デヴューのチャンス、新作の本邦初演の場にもなりうるということであり、大いなる可能性を秘めているわけである。
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どこかの家のダイニングキッチンで、男女が向き合って他愛もない会話をしている。男性はタクシー運転手で(酒巻誉洋)、女性はこの家の主婦らしい(真下かおる)。奥の部屋から微かに呻き声が聞こえ、やがてビニール袋をからだにかぶり、手にもビニールのグローブをした女性(松葉祥子)が現れる。ひと仕事終えた印象だ。ビニール袋もグローブも何かで汚れており、それを慣れた手つきで脱がして受け取る主婦。そのあとから夫らしき男性(永山智啓)が出てきて、「殴るいくら、蹴るいくら、あと剃刀の損傷とタバコの火傷」と会計のようなことを始め、女性は合計金額を支払い、夫はそれをいったん状差しの封筒にしまったあとで、またその金を女性に返す。 その行為が何なのか、奥の部屋には誰がいて何が行われているのかが少しずつ明らかにされていく。いや、もしかしたら自分はもっと早くにわかっていたのかもしれないのだが、考えついたことがあまりに病的で暴力的なために、薄々気づく一方で「まさかそんなことが」と否定しながら舞台に前のめりになっていた。
劇団掘出者の舞台をみるのは、昨年春の『チカクニイテトオク』に始まって秋の『ハート』と続き、今回の『誰』で3本めになった。およそ半年ごとに次々と新作を発表しており、作・演出の田川啓介が劇作家として伸び盛りであること、劇団としてのフットワークの強さを感じる。しかし初日に観劇した直後は「困ったな」というのが正直な気持ちであった。それは「これはフィクションなのか、それとも同じようなことが現実の大学生にも起こっているのか」という極めて初歩的な困惑だった。舞台をみるとき、その世界が現実に則したものとして受け止めるのか虚構を楽しむものか、自然に感じ取れれば楽なのだが、『誰』は判断できなかった。千秋楽近くに足を運んだ知人も似たような感想を漏らしており、舞台に描かれている世界を受け止めるのがむずかしかったことがわかる。だんだん心配になってきた。こういう舞台を作る田川啓介さん、あなたの心は大丈夫なのでしょうかと。