◎他者に開かれた表現へ 未完であることの幸福
矢野靖人 (shelf主宰)
久しぶりに人に教えたくないほどのパフォーマンス / パフォーマーに出会った。
5月17日(土)、豊島区は北池袋にあるアトリエ atelier SENTIO で開催中の演劇フェスティバル、 SENTIVAL! のオープニングを飾る百景社の「授業」と「A+」という二本立て公演を観劇した。百景社の「授業」も良かったのだが、この、鈴木史朗(A.C.O.A.)演出・出演の「A+」が、実に圧巻だった。 圧倒的な快楽がその場にあった。
静岡県舞台芸術公園は静岡駅から路線バスで20分余り、日本平の中腹に総面積21ヘクタールの緑深い敷地を誇っている。野外劇場「有度」は公演場所として使われている三つの建物のうちの一つ。舞台後方にはお茶の木を植えた花道、そして高さ20メートルはあろうかというブナを始めとした高い木々。座席の勾配がかなり急に感じられることとも相まって、舞台に近い席に座ると枝と緑が覆いかぶさってくるような、高いところの席に座ると体が宙に浮くような感覚に襲われる、それだけでかなり非日常の空間だ。
横浜の劇団studio saltの新作『7』が素晴らしかった。等身大の日常を描いた作家は多くあれど、社会の底辺というか、それもプロレタリアートという意味でのそれでなく、知性も教養もない、頭が悪くて、これといったとりえもなくて人が好いわけでもない(むしろ無意識的な悪意に満ち満ちている。)そんな、とても小さな人間の存在を描かせたら、今、彼女に比肩出来る書き手はなかなかいないのではないだろうか。
高校3年生の男子4人が登場、恋愛や性体験、就職や遊びなどの話から、この年ごろらしい、大人と子どもの混じり合う心が浮き彫りになる。内面の繊細さを感じさせるが、壊れやすいのでなく、前向きに考えるたくましさや明るさがある。話題があちこちに飛ぶ会話をスムーズに回した4人の演技には、仲間同士のきずなを大切にしようとする内面も表れていた。
3月末、『関わりを解剖する二つの作品』と題して、手塚夏子の振付作品が2本上演された。手塚夏子は近年『私的解剖実験』と題したシリーズによってダンスの方法論を模索する試みを続けてきたが、今回の二作品では、今まで探求されてきた方法論が組み合わされ、立体的な広がりを見せ始め、手塚の方法論のひとつの到達点を示すと共に、更なる可能性を予感させるものになった。
NEVER LOSEは1998年、谷本進を中心に結成。旗揚げ後はこまばアゴラ劇場を中心に年二~三回のペースで公演を行ってきた劇団である。2002年には、旗揚げ四周年記念として青山円形劇場に進出。東京、岡山、名古屋での活動を軸に、劇場のみならず、ライブハウスやクラブでも公演を行っている。
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