百景社「A+」

◎他者に開かれた表現へ 未完であることの幸福
矢野靖人 (shelf主宰)

SENTIVAL!プログラム久しぶりに人に教えたくないほどのパフォーマンス / パフォーマーに出会った。
5月17日(土)、豊島区は北池袋にあるアトリエ atelier SENTIO で開催中の演劇フェスティバル、 SENTIVAL! のオープニングを飾る百景社の「授業」と「A+」という二本立て公演を観劇した。百景社の「授業」も良かったのだが、この、鈴木史朗(A.C.O.A.)演出・出演の「A+」が、実に圧巻だった。 圧倒的な快楽がその場にあった。

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OKT/ビリニュス・シティ・シアター「夏の夜の夢」(W.シェイクスピア作)

◎長い髪が物語る傲慢、滑稽、いじらしさ 客席の空気が艶めくときも
吉岡ゆき(翻訳家)

「Shizuoka 春の芸術祭2007」パンフレット静岡県舞台芸術公園は静岡駅から路線バスで20分余り、日本平の中腹に総面積21ヘクタールの緑深い敷地を誇っている。野外劇場「有度」は公演場所として使われている三つの建物のうちの一つ。舞台後方にはお茶の木を植えた花道、そして高さ20メートルはあろうかというブナを始めとした高い木々。座席の勾配がかなり急に感じられることとも相まって、舞台に近い席に座ると枝と緑が覆いかぶさってくるような、高いところの席に座ると体が宙に浮くような感覚に襲われる、それだけでかなり非日常の空間だ。

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studio salt 「7」

◎「類型」表現と、作家の「悪意」
矢野靖人 (shelf主宰)

studio salt 「7」公演チラシ横浜の劇団studio saltの新作『7』が素晴らしかった。等身大の日常を描いた作家は多くあれど、社会の底辺というか、それもプロレタリアートという意味でのそれでなく、知性も教養もない、頭が悪くて、これといったとりえもなくて人が好いわけでもない(むしろ無意識的な悪意に満ち満ちている。)そんな、とても小さな人間の存在を描かせたら、今、彼女に比肩出来る書き手はなかなかいないのではないだろうか。

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NEVER LOSE 「タバコトーク」

◎追憶を促すツールとしてのカフカ風変身か
山田ちよ(演劇ライター)

「タバコトーク」公演チラシ高校3年生の男子4人が登場、恋愛や性体験、就職や遊びなどの話から、この年ごろらしい、大人と子どもの混じり合う心が浮き彫りになる。内面の繊細さを感じさせるが、壊れやすいのでなく、前向きに考えるたくましさや明るさがある。話題があちこちに飛ぶ会話をスムーズに回した4人の演技には、仲間同士のきずなを大切にしようとする内面も表れていた。

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日中共同プロジェクト公演 『下周村』

もうひとつのグローバル化への幕開け   山関英人(演劇ジャーナリスト)  日中共同プロジェクト公演の『下周村』(新国立劇場制作)は、舞台の受容の仕方に一石、を投じた。それは、国境を越える作品のあり方-普遍性の獲得-の理想 … “日中共同プロジェクト公演 『下周村』” の続きを読む

もうひとつのグローバル化への幕開け
  山関英人(演劇ジャーナリスト)

 日中共同プロジェクト公演の『下周村』(新国立劇場制作)は、舞台の受容の仕方に一石、を投じた。それは、国境を越える作品のあり方-普遍性の獲得-の理想像を示した、とも云えるだろう。そして、『下周村』はそれを自己言及的に(作品でもって)語ってみせた。

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#5.ポタライブの『界』/そして『museum』を抜け出て

 今春、散歩しながら見る演劇「ポタライブ」の新作2本がアゴラ劇場の「冬のサミット」参加作として上演された。作演出は岸井大輔。舞台となったのはアゴラ劇場がある駒場周辺と、アトリエ春風舎がある小竹向原駅周辺。2つの町からドラ … “#5.ポタライブの『界』/そして『museum』を抜け出て” の続きを読む

 今春、散歩しながら見る演劇「ポタライブ」の新作2本がアゴラ劇場の「冬のサミット」参加作として上演された。作演出は岸井大輔。舞台となったのはアゴラ劇場がある駒場周辺と、アトリエ春風舎がある小竹向原駅周辺。2つの町からドラマをすくいあげてみせたこの連続公演は見事な対照をなして、ポタライブの到達点を示し、その更なる可能性をも開いて見せた。(本稿はCutInに寄稿した原稿に加筆訂正したものです。投稿の際、伊東沙保さんの名前を伊藤と間違えていました。お詫びして訂正します。)

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手塚夏子・振付「関わりを解剖する二つの作品」

◎立体的な広がりの到達点と更なる可能性
柳沢望

「関わりを解剖する二つの作品」公演チラシ3月末、『関わりを解剖する二つの作品』と題して、手塚夏子の振付作品が2本上演された。手塚夏子は近年『私的解剖実験』と題したシリーズによってダンスの方法論を模索する試みを続けてきたが、今回の二作品では、今まで探求されてきた方法論が組み合わされ、立体的な広がりを見せ始め、手塚の方法論のひとつの到達点を示すと共に、更なる可能性を予感させるものになった。

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NEVER LOSE 「四人の為の独白 ver.7.0」

◎辺縁を目指す孤独な精神
矢野靖人 (shelf主宰)

NEVER LOSEのメンバーNEVER LOSEは1998年、谷本進を中心に結成。旗揚げ後はこまばアゴラ劇場を中心に年二~三回のペースで公演を行ってきた劇団である。2002年には、旗揚げ四周年記念として青山円形劇場に進出。東京、岡山、名古屋での活動を軸に、劇場のみならず、ライブハウスやクラブでも公演を行っている。

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庭劇団ペニノ『笑顔の砦』

◎マメ山田からの脱却  吉田俊明(観劇の一涙・劇人) 2月24日、駅前劇場にて庭劇団ペニノの公演を見てまいりました。この劇団を鑑賞するのは今回で3回目でしたが、これまでと比べてマメ山田という看板役者が引いて物語の構成が前 … “庭劇団ペニノ『笑顔の砦』” の続きを読む

◎マメ山田からの脱却
 吉田俊明(観劇の一涙・劇人)

2月24日、駅前劇場にて庭劇団ペニノの公演を見てまいりました。この劇団を鑑賞するのは今回で3回目でしたが、これまでと比べてマメ山田という看板役者が引いて物語の構成が前面に出た良作と言えるだろう。

http://www.gekinchu.com/critic/2007/02/post_59.html

五反田団「さようなら僕の小さな名声」

◎布団の奥に広がる宇宙 普遍性への通路としての自己パロディ
柳澤望

「さよなら僕の小さな名声」公演のチラシ0.

五反田団の新作『さようなら僕の小さな名声』では、台本と演出を手がける前田司郎本人が自分役で舞台に登場する。岸田戯曲賞の候補になりながら受賞を逃した(二回も)という経験を踏まえた物語が始まる。

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