◎内なる対話としての四人芝居 いささかの疑念を込めて
金塚さくら

劇場には生きた鼠がいた。比喩ではなく文字どおり。Theatre Company Ort-d.d『わが友ヒットラー』の舞台では、場内を二分する形で作られた細長いスロープ状のステージの突端で、アクリルの透明なケージの中に入れられて、鼠が一匹、意味深に、生きて飼われていたのだった。
三島由紀夫の書いたこの戯曲には、登場人物に語られる形で、たしかに一匹の鼠が登場する。アドルフ・ヒットラーとその盟友、エルンスト・レームの名を半分ずつ引き受けてアドルストと呼ばれたその鼠は、二人に共有される懐かしい思い出のアイコンだ。それは輝かしい青春の日々と直結している。
少なくとも、エルンスト・レームにとっては。アドルスト鼠の記憶を持っている事実が、ことヒットラーに関して他の誰よりも自分は優越的な立場にあるという自信を、彼に与えている。
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