岸井大輔(劇作家)

否定の扱い方を考える中、倫理と観客を見つけた(前編)―これは演劇じゃないな、掃除だな、と思ったんですよ

 6年前の2007年にロングインタビュー(>>)に登場していただいた劇作家・岸井大輔さん。今回聞き手を務めた廣澤は、昨年より『東京の条件』「シェア大学(仮)実験室」(現『無知な大学』)の講座「定義し創る」で岸井さんのもと、観劇の定義について考えています。1年弱の間、岸井さんの作る演劇に触れる中で、そこではいつもパフォーマーにさせられ、観客でいることは難しいと感じていました。そこで、普段ご自身の劇作についてあまりお話されることない岸井さんに、この6年間の活動を振り返りながら、主に作品における「観客」という観点からお話を伺いました。今回は全2回のうち、前半部分をお届けします。(聞き手・構成 廣澤梓@ワンダーランド編集部)
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のこされ劇場≡「枝光本町商店街」

◎油断を積みあげること、その開きかた
  斉島明

 スターフライヤーの飛行機は鯨を模してペイントされているのだと教えてくれたのは、のこされ劇場≡の女優である沖田みやこだった。スターフライヤー社は福岡空港・北九州空港を主な起点とする航空会社である。全体が黒く、腹のあたりだけが白く塗られた、まさにその飛行機で北九州空港に着いたのが、その日の朝9時頃だった。
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【レクチャー三昧】2013年5月

 今年は没後30年ということで、寺山修司関連の催しが沢山ございます。私事ですが若い頃は「アングラ演劇」がいっとう好きで、なかんずく寺山修司に惹かれておりました。寺山修司は「アングラ」に入れないという考えかたは最近になってから知りました。とまれ青春期(?)に魅入られてしまったものからは終生離れ難い、のかも、しれません。
(高橋楓)
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範宙遊泳「範宙遊泳展 幼女Xの人生で一番楽しい数時間」

◎文字と役者では、どちらが物語か
  さやわか

範宙遊泳展チラシ

 2月に新宿眼科画廊地下で行われた範宙遊泳の公演は「範宙遊泳展」と名付けられていた。この公演に意欲的な試みはいくつかあったが、ともかく観客にいわゆる演目として提示されていたのは作・演出の山本卓卓による一人芝居「楽しい時間」と、休憩を挟んで上演された二人芝居「幼女X」の二本であった。
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田野邦彦(青年団リンク・RoMT主宰)、太田宏(青年団)

◎一人芝居とワークショップによって作り出される《共有体験》:RoMT第4回公演「ここからは山がみえる」再演を前に

 上演時間、3時間30分。出演者、1人。
 しかも日本ではほとんど知られていない英国人作家の翻訳劇である。青年団リンク・RoMTを主宰する田野邦彦は、青年団所属の俳優、太田宏とタッグを組み、2010年にこの壮大な一人芝居を上演し、大きな成果を獲得した。そして初演から3年後の春、マシュー・ダンスター作「ここからは山がみえる」が、ふたたび東京と福岡のほか、全国各地で上演される。インタビューではこの大胆な公演についてのほか、田野邦彦さんには彼のもう一つの演劇活動の軸であるワークショップについて、フランスの舞台でも活躍する太田宏さんには日仏の演劇事情の違いなどを聞いた。
(聞き手・構成 片山幹生@ワンダーランド編集部)
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カトリ企画UR「紙風船文様」

◎3人によるクロスレビュー

 今回の企画は、アトリエセンティオで2013年4月4-7日に上演されたカトリ企画UR「紙風船文様」を同時に観劇した3人の方のお申し出により、それぞれの視点から批評していただいたものです。3人は昨年フェスティバル・トーキョー(通称F/T)の関連企画「Blog Camp in F/T」で知り合い、F/T終了後も不定期に集まっては、各々が観た作品を話し、議論してきたとのことです。
 それぞれ違うバックグラウンドを持つ評者が一つの作品に関して書く事で、「紙風船文様」という作品の様々な側面が浮かび上がってきたことと思います。(編集部)
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東京芸術劇場「マシーン日記」

◎劇評を書くセミナー第9回 報告と課題劇評

「マシーン日記」公演チラシ
「マシーン日記」公演チラシ

 劇評を書くセミナー東京芸術劇場コース最終回(第9回)は2013年4月2日、東京芸術劇場セミナールームで開かれました。取り上げたのは、「マシーン日記」(作・演出:松尾スズキ)(2013年3月14日-31日)です。講師は佐々木敦さん(批評家)でした。
 セミナーはいつものように、執筆者の言葉に始まり、出席者の感想や意見を募り、最後に佐々木さんの質問や解読で締めくくられました。タイトルの「マシーン日記」とはだれが書いたのか、登場人物4人のうち一番かわいそうな人、一番ヘンな人はだれか-。こういう質問もでましたが、見解は文字通りバラバラ。見る人を映す鏡のような舞台だったのかもしれません。
 セミナーの掉尾を飾る劇評がそろいました。了解を得られた6本を掲載します。(編集部)
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流山児★事務所公演「義賊☆鼠小僧次郎吉」

◎だれが日本を盗むのか ― 鼠小僧が消えた闇の今
  新野守広

「義賊☆鼠小僧次郎吉」公演チラシ
「義賊☆鼠小僧次郎吉」公演チラシ

 流山児★事務所が『義賊☆鼠小僧次郎吉』を上演した。安政の大地震からわずか1年2ヵ月ほど後の1857年、江戸市村座の正月興行で上演された河竹黙阿弥の『鼠小紋東君新形(ねずみこもんはるのしんがた)』が原作である。東日本大震災から2年が経ったこの時期に江戸末期の泥棒芝居が選ばれた背景には、崩壊する幕藩体制と現在の日本社会の混迷を重ねる意図があったと思う。
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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第23回

◎『うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81』(佐々木マキ 太田出版)
  鳥山フキ

 イラストレーター・絵本作家としても知られるマンガ家・佐々木マキさんのマンガ集です。
 実験的なマンガで、読むのは少しむずかしいです。
 本を開いた時、あまりにもわからなそうなので絶望的な気持ちになりましたが、比較的簡単そうな話から読んでいったら、読めました。
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ハイブリットハイジ座「ジャパニーズ・ジャンキーズ・テンプル」

◎ひねくれものの祝祭に乾杯!
  梅田 径

 一月頃に酒を酌み交わした某出版社勤務の友人がデタラメに酔っ払いながら「ハイジ座、面白いっすよ!」と強くオススメしていたものだから、劇団名は強く印象に残っていた。なんでもシアターグリーン学生演劇祭の最優秀賞を受賞しているとか、今回劇評の対象とする「ジャパニーズ・ジャンキーズ・テンプル」でおうさか学生演劇祭にも乗り込み(こちらは最優秀劇団賞を逃した)、二都市公演を行うとかで、その名前がほんのり小劇場界にも轟きはじめたころ、本作の一作前、早稲田大学学生会館で公演された短編オムニバス「天然1」を観劇した。
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