荒川チョモランマ「偽善者日記」

◎熱が伝わるとき-偽装とベタの間で
 梅田径

「偽善者日記」公演チラシ 劇場MOMOに足を踏み入れれば、舞台中央に鎮座まします螺旋階段のデカさに度肝を抜かれ、同時に不安も覚える午後四時前。荒川チョモランマ『偽善者日記』の観客席は千秋楽を控えてほぼ満席である。
 まず諸注意と主宰の挨拶があった。続いて、元気いっぱいに「エアロビを披露いたします!」の号令がかかるやいなや、俳優たちが満面の笑顔で、舞台いっぱいにあらわれた。モーニング娘。「恋愛レボリューション21」のリズムにあわせて軽快かつ爽やかなエアロビが始まるも、センターに陣取った男の子は階段に足を取られてうまく踊れないようだ。センターのタコ踊りに主宰がぶちギレ、舞台にあがって説教をはじめたかと思いきや、あかりが落ちて暗転した。
 再び照明がつくと、エアロビの時とまったく同じ姿勢で、スーツ姿の男性が上司の女性に怒られている……。

 劇の始まりだ。
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NODA・MAP「南へ」

◎分からないことにチクッとする自虐的嗜好への思慕
 岡野宏文

「南へ」公演チラシ 野田秀樹の演劇は面白い。
 野田秀樹の演劇は分からない。
 このふたつのフレーズを上手に貼り合わせると、こういう命題が出現する。

 世の中には、さっぱり分からないくせに飛びっ切り面白いものがある。

 なかなか頼もしい言葉ではある。とくに演劇を愛し、志すものにとって。
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高嶺格「Melody Cup」

◎民主主義的演出へのアンビバレンス
 竹重伸一(舞踊批評)

 最前列の客席より一段窪んだ所一面に、四面を板で囲まれてブルーシートが敷かれている。奥の壁には白いスクリーン。スクリーンと舞台後方の板の間の通路もパフォーマンス空間である。この1時間45分の作品のラスト、舞台前面の板の前に一列に並んだ12人のパフォーマー全員でビージーズの「メロディ・フェア」を歌うのを聴いている内に舞台作品としては久し振りに幸福な感情に襲われたが、一方で作品全体からは拭い難い違和感を感じる部分も私の中にあることは否定できない。その辺りの感情の曲って来る所を考えてみようと思う。
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ジエン社「スーサイドエルフ/インフレ世界」(クロスレビュー挑戦編第3回)

「スーサイドエルフ/インフレ世界」公演チラシ クロスレビュー挑戦編第3回は、The end of company ジエン社公演「スーサイドエルフ/インフレ世界」(2011年3月31日-4月3日、日暮里・d-倉庫)を取り上げます。ジエン社は2002年に旗揚げされた総合表現ユニットを、演劇活動により特化する形で2007年10月に改称しました。公式webサイトによると「すでに敷かれている現代口語演劇の轍を(いやいやながら仕方なく)踏みながら、いつかそこから逸脱して『やる気なく存在し続ける現在』を、失敗した写真をじっと見続けるようなやり方で出現させてみようと目論んでいる」のだそうです。東京芸術劇場が6月に開く芸劇eyes 番外公演「20年安泰。」に参加する予定の話題ユニットです。レビューは五つ星による評価と400字コメント。掲載は到着順です。(編集部)

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F/T11公募プログラム国内参加7団体決まる

 フェスティバル/トーキョー2011(F/T11)の公募プログラムに参加する国内7団体が4月4日、F/T11事務局から発表された。参加団体はF/T公募プログラム期間中(2011年10月17日-11月8日を予定)、アジア地域から参加する5組程度の団体とともに都内会場で作品を上演する。
 参加が決まった7団体(日本国内)は次の通り(50音順)。
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演劇セミナー2011追加募集を締め切りました。

 ワンダーランド主催の演劇セミナー2011 クロストーク150分「最前線の演劇知」の追加募集を4月4日(月)に締め切りました。応募者多数のため抽選します。その結果は6日までにお知らせしします。
(演劇セミナー係)

 

【レクチャー三昧】何のために学ぶのか

 学び続けるのは、直面した事態に対するリテラシーを養い、相対化する態度を身につけるためです。2011年3月11日、この日に起きたこととそれから起きていることの当事者のひとりとして、わたしにはそれが初めて分かりました。
 大学で開催される無料講座は、新学期に入ってから告示されるものが多そうです。【レクチャー三昧】カレンダー版を更新していきますので、適宜ご覧下さい。
(高橋楓)
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青年団若手自主企画「不機嫌な子猫ちゃん」

◎見えるものは「男の性」 「母と娘」の世界の中に
 金塚さくら

「不機嫌な子猫ちゃん」公演チラシ 状況はひどくありふれているのだった。
 愛情という名の呪縛で娘を支配する母親と、それに反発しながらも結局のところ依存している娘。母と娘という、この永遠の確執。
 いい年をして働きにも出ず、実家で母・愛子と暮らしている市子。彼女と母親との関係は、いわゆる「友達母娘」だ。名前で呼び合い、一緒に買い物に行き、同じ服を共有する。過剰なくらいべたべたと仲良く遊ぶその一方で、しかし彼女たちは互いに互いを恨みあってもいる。娘は母親の誤った「愛情」が自分を束縛し、人生における選択の自由を奪ってきたのだと責める。母は娘が自分の愛情を理解してくれないと嘆き、同等の思いやりを返してくれないことをなじる。
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カンパニーデラシネラ「あらかじめ」(TOKYO DANCE TODAY #6)

◎イメージの連鎖で紡ぐ、俯瞰と詳細で描いた夢のおはなし
 田中伸子

「あらかじめ」公演チラシ 週の終わりに東京を襲った突然の大震災から数日を経て、東京でも少しずつ平常を取り戻しつつあったとは言え、電力供給不足による節電奨励でおしゃれな都会スポットとして見慣れたはずの青山界隈からは軒並み明かりが消え、いつもは華やかな青山通りも静寂と宵の闇に包まれていた。
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KUNIO08「椅子」

◎舞台の中心で「婦人」は怒る
 鴨下易子

「椅子」公演チラシ ある20代の演出家が韓国の劇団を紹介して「僕を含めて、日本で芝居にかかわっている人は楽しいからやっているけれど、韓国では伝えたいことがあって芝居をしている。」と書いていた。(それは書き手の周囲の人たちだけだと思いたいけれど)もしそうなら小劇場の担い手の多くは仲間内で楽しく芝居をしているだけで、大学のサークルと変わらない。そんな彼らと、今も社会との関係で芝居をつくり続けている上の世代の演劇人とは、芝居に対する意識が本当に離れてしまっているのだろう。実際、若い芝居関係の知人からは「おもしろいから見に来てください」というのは少なくて、「頑張っているから来て」と誘われることの方が多い。頑張っているのを喜ぶのは身内だけでしょう。私は身内ではなく観客、客のことを考えない公演には行く気にならない。
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