世田谷パブリックシアター「友達」(作:安部公房、演出:岡田利規)

◎鼎談 不条理劇、岡田演出、個性派俳優のブレンドの味
芦沢みどり、香取英敏、水牛健太郎

「友達」公演チラシ世田谷・シアタートラムで開かれた「友達」公演(2008年11月11日-24日)は、芝居好きの間で事前にかなり話題になりました。安部公房の代表的な戯曲を、チェルフィッチュ主宰の岡田利規が演出するうえ、小林十市、麿赤兒、若松武史、木野花、今井朋彦ら人気、実力、個性の際だった俳優が登場するからです。不条理劇と岡田演出と個性派俳優陣との組み合わせが注目されたのでしょう。その結果はどうだったのか、ワンダーランドの寄稿者3人が舞台をさまざまな角度から検証しました。(編集部)

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多田淳之介+フランケンズ「トランス」

◎隣り合っても断絶、の光景が切なく 何重にも読み替えられる戯曲
小畑明日香(慶応大学)

「トランス」公演チラシ単行本として上梓されたこの戯曲のまえがきによれば、鴻上尚史の書いたこの三人芝居「トランス」は、役者が三人いればどこででもできるという強みも手伝ってか、今まで1000回以上上演されてきたのだという。初演から今日までの約15年間で1000回。その1000回の中で、今回ほど、戯曲と真っ向から向き合った上演はなかったのではと思う。

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イヨネスコ「瀕死の王」

◎王の死はフレイザー『金枝篇』を思わせ、そして…
大泉尚子

「瀕死の王」公演チラシ「瀕死の王」は、文字通り死を眼の前にした王ベランジェ一世が、生に強く執着をもちながら、ついには死を受け入れるというお話。あくまでも威厳をもって王らしく死ぬことを突き付ける、第一王妃マルグリットと医者。より多く寵愛を受けているせいか、嘆くばかりの第二王妃マリー。それに、お世話係の侍従にして看護婦のジュリエットと衛兵。この6人が登場人物となる。

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イキウメ「図書館的人生 vol.2」

◎手に負えない、もっと大きなものと格闘を
岡野宏文(ライター&エディター)

「図書館的人生 vol.2」公演チラシ超科学と呼ばれる一連のものごとが好きなんである。
心霊、オーパーツ、超能力、UFO、古代文明は宇宙人が作った説、火星の人面岩、スカイフィッシュ、ミステリーサークル、などなどしこたま。信じているのではない。信じているならむしろ、つぎはぎだらけであるにしろ科学の冷静さの方に軍配があがる。

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急な坂スタジオ「ラ・マレア横浜」(上)

横浜・吉田町のを舞台に10月3日-5日の3日間、「ラ・マレア横浜」と呼ばれる街頭パフォーマンスが繰り広げられました。アルゼンチンの劇作家・演出家の作品を、日本人の俳優をオーディションで選んで上演する国際企画です。母国のほか、ブリュッセル、ベルリン、リガ、ダブリンなどで、その都市のコンテクストに合わせたバージョンを発表してきたそうです。では横浜版はどういう相貌をみせたのか。本誌「ワンダーランド」の執筆者に読み解いてもらいたいと主催の急な坂スタジオの協力を得て、本公演はもちろん、「プレトーク」への参加、稽古見学などをお願いしました。以下、レビューを2回に分けて掲載します。(編集部)

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Uフィールド「水の花」

◎変奏される台詞・生き残ってしまった人の物語 一つの劇団とある程度深く関わってしまったことで劇評が書けなくなるときもある。自分がどういう立ち位置でものを見ているのか話してしまうことともつながってくる。そんなわけで1カ月も … “Uフィールド「水の花」” の続きを読む

◎変奏される台詞・生き残ってしまった人の物語

一つの劇団とある程度深く関わってしまったことで劇評が書けなくなるときもある。自分がどういう立ち位置でものを見ているのか話してしまうことともつながってくる。そんなわけで1カ月も経ってしまった公演の話ですが、やっぱりこの舞台は今年のベストに選んでしまうと思います。

先月、渋谷ギャラリー・ルデコの、ふつうはあまり演劇用スペースに使われない、四周に鉄骨の組まれた小さなスペースで、男二人女一人の三人芝居+出演者の一人は作・演出も兼ねている、超小規模な公演があった。
取り外しのできない鉄骨はそのまま二階建ての客席として流用し、舞台空間の鉄骨には黒幕を張って、下手から劇場の天井裏まで伸びている階段も舞台装置の一部に使って、床と鉄骨がぶつかる所には花が植わっている。
大道具移動による場面転換なし。
舞台中央の大きな柱の手前には木の、背もたれなしのベンチを置いて、それが長距離列車の座席になるところから舞台が始まる。

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劇団印象『枕闇』

◎ことば遊びのしすぎでキャラクターが窒息 本当は、「夢」を軸にした話だったようなのだ。 「人は、自分の願望を眠りとともに”夢”に見る、 (中略)枕闇はそうした”夢”の、ちょっと不思議なお話である。」(パンフレットより演出 … “劇団印象『枕闇』” の続きを読む

◎ことば遊びのしすぎでキャラクターが窒息

本当は、「夢」を軸にした話だったようなのだ。

「人は、自分の願望を眠りとともに”夢”に見る、
(中略)枕闇はそうした”夢”の、ちょっと不思議なお話である。」(パンフレットより演出の言葉)

”夢”の芝居だと思って見始めて、最後まで首をかしげながら見ていた。
ただ、目に色鮮やかで美しい舞台だと思ったことも今のうちに併記しておこう。
劇団印象の「枕闇」は、はたして何を核にした芝居なのか。 (以下文中敬称略)

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A.C.O.A「人間椅子」

◎観客の半分は女なのだぁーっ!
芦沢みどり(戯曲翻訳家)

アトリエセンティオは東武東上線・北池袋駅から歩いて五分、路地の突き当たりの線路際にある。これが比ゆでなくマジで線路のすぐ横なのね。かつて舞踏グループが稽古場にしていた小屋だと聞けばナルホドと思うけど。開場までの数十分、ひっきりなしに通過する夕方のラッシュの車両を、暮れなずむ路地裏で眺めているうちに不安になった・・・こんな場所でまともに芝居が観られるのかなぁ。

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龍昇企画「夫婦善哉」

◎アゴラにて 旨味すくなき 作之助 なんのかの言っても 生きたもん勝ち 三ヶ月経ってしまった。 五月の舞台である。五月に一回見て、書いて、不評で、「ちょっと練り直します」で三ヶ月。 かくもおそろしや平田オリザ。私は、彼が … “龍昇企画「夫婦善哉」” の続きを読む

◎アゴラにて 旨味すくなき 作之助 なんのかの言っても 生きたもん勝ち

三ヶ月経ってしまった。
五月の舞台である。五月に一回見て、書いて、不評で、「ちょっと練り直します」で三ヶ月。
かくもおそろしや平田オリザ。私は、彼が龍昇企画のために書き下ろしたという触れ込みの前に委縮していた、なんつて。日本の演劇史を「オリザ以前」「オリザ以後」にわけた張本人の脚本+前回公演「モグラ町」でスピーディーにオヤジっぷりを描いた龍昇企画、ひどかった、わけではもちろん、ないのであるが。

平田オリザ本人がチラシの裏に書いた宣伝文が何日たっても劇の印象と合致しなかった。

織田作之助の原作『夫婦善哉(めおとぜんざい)』に登場する、大阪「自由軒」のカレーライスのことを書いていた。自分もそのカレーライスが大好きだということ、そしてそのカレーライスのおいしさを小説中で語った織田さんに捧げる戯曲として、男女が「ひたすら食べ続ける。それだけの話である」と言っていたのである。今回の公演のことを。

え、そんなにうまそうなもん食ってたっけ。

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岡崎芸術座「三月の5日間」

◎見る人と見られる人と、大衆よりもっと大きなもの お江戸上野広小路邸の、全席桟敷の寄席舞台に、開場と同時に入ったのに、かぶりつき一列にすでに先客がいる。目の前の舞台をテーブル代わりにして、お茶菓子やつけものを並べている。 … “岡崎芸術座「三月の5日間」” の続きを読む

◎見る人と見られる人と、大衆よりもっと大きなもの

お江戸上野広小路邸の、全席桟敷の寄席舞台に、開場と同時に入ったのに、かぶりつき一列にすでに先客がいる。目の前の舞台をテーブル代わりにして、お茶菓子やつけものを並べている。
すぐ後ろに座ると「食べる?」と声がかかった。かぶき揚げと栗のお菓子を食べながら、最前列の「観客」たちの動向を眺める。
「社長! 社長!」と声を上げながらビールを呑むおばちゃんたちと、その隣のフィリピンパブのおねえちゃんとは有り体に言うといかにも下町、という感じで、電車の中でもケータイでしゃべりそうな雰囲気で、現代っ子世代から言うとかなりうっとうしい。目障りだけどしらけた視線を送る以外に対抗しようがないタイプの人達。
が、私を含む二列目の客はにやにやしながらその様を見ている。
すでに芝居が始まっていることを皆分かっているのだ。だって「社長」「部長」と呼ばれている上手客席の二人は、顔まで白黒に塗り分けたパンダの仮装をしてる。いくら寄席を知らなくても、でかいパンダの頭かぶって見に来る客はいないだろう。

で、非日常的な仮装で観客として客席に座っている「社長」と「部長」は、「見る側」なのか「見られる側」なのか。

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