青年団「革命日記」

◎立花の背中が幻視させる非「革命」的な時間
プルサーマル・フジコ

「革命日記」公演チラシ『革命日記』はまず何を差し置いても立花という女性の役を演じた鄭亜美が真面目さと切なさと色っぽさを抑制しつつも振りまいていて、革命闘士も支援者も町内会のおばさんたちもひっくるめた全ての登場人物の中でいちばんマトモな人間であるその彼女が、革命組織の異常さを客席に背を向けたまま糾弾するシーンが素晴らしい。

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キラリと世界で創る芝居vol.1☆韓国「LOVE The World 2010」

◎《演劇LOVE》の照らし出す未来
プルサーマル・フジコ

「LOVE The World 2010」公演チラシ
デザイン:京(kyo.designworks) +宇野モンド

前回、ワンダーランドに寄稿した文章(*1)は未来の誰かに宛てて書いたのだけどそれは或る制作者Nさんが「僕は、20年後の未来に向けて作ってますね」と力強く小田急線の下北沢駅の改札入ってすぐのとこで語ってくれたのがズシンと胸に刺さったからで、それ以来「未来」とゆー言葉が凄く具体的なイメージを持ってしまって浮かんで消えない。

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ままごと「スイングバイ」

◎ロマンティストとしての柴幸男
藤原央登

「スイングバイ」公演チラシ『わが星』『スイングバイ』と、柴幸男が紡ぎ出した2つの劇世界に触れた私が抱いたのは、この人は壮大なロマンティストなのではないかということである。
27歳という若さで岸田國士戯曲賞を受賞したことにより、過大な評価を背負って今後の演劇活動を続けねばならないだろうということは容易に想像がつく。表象された劇世界を一見すれば分かるように、ラップ音楽の取り入れと、そこから派生するループやサンプリングを発語や場転にも利用し、リズムを湧出させる演劇手法は発明だといえる。今回の受賞は、こういった方式が演劇の基本構造を転換させ、新たな段階へと舞台芸術を進めるのではないか、という願望が込められたものでもあろう。もちろん、単なる目新しさで終わる可能性もある。その目新しさに、一時的に目が眩んだだけだったという様に。

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鳥公園「おばあちゃん家のニワオハカ」

◎〈不在〉の遠心力が生み出すアッサンブラージュ
プルサーマル・フジコ

前略 未来の誰か様へ

「おばあちゃん家のニワオハカ」公演チラシ演劇ユニット・鳥公園の『おばあちゃん家のニワオハカ』(以下『ニワオハカ』)を観たのは2010年3月18日のマチネで、外は晴れて気持ちの良い一日でした。会場となった市田邸は文化財に指定された建物で、それらしい雰囲気のある庭もある。雨の日はどうなのか? 夜はまた全然雰囲気違うだろうなーとか思いながら観ていると、まず冒頭で、おばあちゃん(鈴木克昌)と会話しながら入ってきた孫娘(井上知子)が突如立ちくらみをし、自意識過剰な独白をまくし立てる。終わると、彼女は、客席を睨み付ける。何か、面白いことが始まりそうだとわたしはそれで直感する。

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日本劇作家協会東海支部「劇王VII 決勝巴戦」

◎劇王から“劇王”誕生  鳩羽風子  売り出し中の劇作家が実力を競い合うバトルイベントの「劇王」。日本劇作家協会東海支部が送る恒例イベントは今年7回目を迎えた。結論からいうと、第5代、第6代劇王の鹿目由紀が大会初の3連覇 … “日本劇作家協会東海支部「劇王VII 決勝巴戦」” の続きを読む

◎劇王から“劇王”誕生
 鳩羽風子

 売り出し中の劇作家が実力を競い合うバトルイベントの「劇王」。日本劇作家協会東海支部が送る恒例イベントは今年7回目を迎えた。結論からいうと、第5代、第6代劇王の鹿目由紀が大会初の3連覇を達成した。しかし、今回は劇王から“劇王”が誕生した年として記憶されるだろう。というのも、第4代劇王(2007年)の柴幸男が「わが星」という作品で、演劇界の芥川賞と目される岸田國士戯曲賞を受賞したからである。柴は連覇を狙った「劇王V」で鹿目に僅差で敗れて王座を奪われた。前年大会で敗れた劇王が、小牧・長久手の戦いが行われた開催地の由来にちなみ、甲冑をまとった落ち武者姿をした「合戦くん」として司会進行を務めるという掟があるため、柴は2009年と今回の2年連続で「合戦くん」となった。今年の開催日は2月7日で、岸田賞の発表は2月8日。結果としては、岸田賞受賞者が司会だけを務める贅沢なイベントとなった。ちなみに鹿目の3連覇によって、柴は来年も「合戦くん」になることが決定した。

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東京デスロック「演劇LOVE 2009~愛のハネムーン~」(LOVE 2009 Kobe ver.)

◎自足的世界から現在に投企する 前後半を結ぶ「LOVE」  藤原央登  舞台作品を創るために、その担い手達の関係性がいかに濃密で、意思疎通の取れたものであるかどうかは非常に重要である。その成果は、制作面での効率の良さや、 … “東京デスロック「演劇LOVE 2009~愛のハネムーン~」(LOVE 2009 Kobe ver.)” の続きを読む

◎自足的世界から現在に投企する 前後半を結ぶ「LOVE」
 藤原央登

 舞台作品を創るために、その担い手達の関係性がいかに濃密で、意思疎通の取れたものであるかどうかは非常に重要である。その成果は、制作面での効率の良さや、舞台での均整のとれたアンサンブルとして表れる。だが濃密な関係は、外部性が欠如し自足した小宇宙を形成する悪しき方向へ進むことがままある。そして、それを優しく承認する受け手が馴れ合いという意味での他者不在の単一自己を完成させてしまう。プロかアマか。演劇に限らず芸術に胎胚し、分かちがたく関連するこの背反要素からは逃れることができない。だからこそ創り手には、自己満足的に完結しがちな劇集団という制作工房を常に今現在と切り結ばんと進んで投企する意思が必要となる。加えて受け手側、少なくとも劇評をものする者は創り手の意思を丹念に掬い上げ、時に方向を修正し自覚させるくらいの気概がなければならない。

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日本劇作家協会東海支部プロデュース 「劇王Ⅵ」

◎「劇王」イベントにM-1 化の兆し 実況中継「劇王Ⅵ」  鳩羽風子(記者)  若手戯曲家の天下一を決する「演劇界のM-1グランプリ」、「Jr.ライト級チャンピオンタイトルマッチ 劇王Ⅵ」が2月7、8日の両日、秀吉と家康 … “日本劇作家協会東海支部プロデュース 「劇王Ⅵ」” の続きを読む

◎「劇王」イベントにM-1 化の兆し 実況中継「劇王Ⅵ」
 鳩羽風子(記者)

 若手戯曲家の天下一を決する「演劇界のM-1グランプリ」、「Jr.ライト級チャンピオンタイトルマッチ 劇王Ⅵ」が2月7、8日の両日、秀吉と家康が覇を競った愛知・長久手の地で開かれ、鹿目由紀第5代劇王が防衛に成功した。

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タテヨコ企画「アメフラシザンザカ~宇宙ノ正体シリーズその5」

◎清濁の境目に身を置いた定点観測 「宇宙ノ正体」の地図を描く
長谷基弘(劇作家、演出家、劇団桃唄309代表)

「アメフラシザンザカ~宇宙ノ正体シリーズその5」公演チラシタテヨコ企画の第17回公演『アメフラシザンザカ』(2009.1.14-1.20)を観劇しました。
禅宗をモデルにした架空の宗派。その修行僧たちが、俗世の出来事に居合わせ、事件解決の役に立ったり立たなかったり。煩悩多き修行僧たち自身も揺らいだり。そんな、「坊主もの」と作・演出の横田修さんが呼んでらっしゃるシリーズの第5作目です。シリーズ第3作『ムラムラギッチョンチョン』(2007.6)も観劇しています。

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七味まゆ味一人芝居「いきなりベッドシーン」(柿喰う客企画公演)

◎「あえて」演劇を引き受ける背反的意思
藤原央登(劇評ブログ「現在形の批評」主宰)

チラシ写真撮影:内堀義之幕開け、素舞台で「清水の舞台から飛び降りた」とテンション高くアクション付きでカットイン。以後およそ50分に渡って鷲津神ヒカルというケバケバしいメイクを施した女子高生の、入学時から2年生の修学旅行までの高校生活の顛末を、速射砲のようにギャグを交えながら話し続ける。終始、冒頭のテンションを崩すことなく、言葉に憑かれたように小気味よいテンポと節回しで駆け抜けた女子高生を演じたのは、柿喰う客という集団の女優、七味まゆ味。大阪は一日だけ公演されたこの一人芝居は、久しぶりに役者体の魅力を余すところなく体感できた舞台であった。

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イヨネスコ「瀕死の王」

◎揺さぶられた芝居観 公演の終わりは、混沌
浜崎未緒

「瀕死の王」公演チラシ劇場に行って、まず公演予定時間の掲示を探してしまう。ほとんど儀式のように近づいて、公演にかかる時間を確認する。2時間を超えているとがっかりだ。途中休憩があれば尚更。いつからか私の身体には、「休憩なしで2時間以内に終わる芝居はいい芝居(短編集やオムニバス公演を除く)」との持論が、染み付いている。2時間という時間の枠にギュウギュウに詰めこまれる方が、主題の際立つ「濃い」お芝居になる。そう、2時間以上かけて「薄い」お芝居をみることが、いちばん嫌いだ。なぜこんな苦痛を味わわなければいけないのか、と悔しい想いをしたことが何回もあった。『瀕死の王』は、休憩なしの2時間15分の予定だが…。

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