青年団若手自主企画「会議」

◎滑らかな手法でツボを押さえる でも電信柱はどこへ…

 演出の狙いが明確で、焦点が絞られた芝居をみるのは快適な気分です。枝葉を切り払い、ドラマツルギーにしっかりした見通しを与えるならなおさらでしょう。しかし枝葉と思ったのが隠し味だったり極めつけの伏線だったりするかもしれません。別役実作「会議」に取り組んだ青年団若手自主企画公演は、翻案・演出にまつわる悩ましい問題を浮き彫りにする例だったような気がします。

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三条会の「レミング~世界の涯てへ連れてって~」

◎舞台に生きた「夢そのものの劇」
後藤隆基(立教大学大学院)

ここに一枚の地図がある。右上に大きく「道のり」と印刷された地図には「千葉公園内特設三条会劇場」までのモデルコースが三種ほど記されていて、たとえばJR千葉駅西口からの最短距離を急ぐのもよし、東口から緑の歩道をたどってみたり、あるいは快速の止らぬ西千葉駅で下りて一寸のんびり歩いたっていい。むろん以外のルートをさがしてみても一向かまわないのである。特設三条会劇場にいたる「観客の散歩道」はそのまま千葉という都市の描写であり、地図を手に歩くわたしたちは仕掛けられた前提をたどりながら劇場へと向かうだろう。それはもう、観客が「三条会の『レミング~世界の涯てへ連れてって~』」と出会うための〈第一場〉なのだった。

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モモンガ・コンプレックス「他力ジェンヌ。」

 会場となった桜美林大学はずいぶん遠い。東京の西郊外から電車を乗り継いで2時間近く。JR横浜線淵野辺駅からバスでキャンパスに着いたけれど、集合場所に関係者らしき人影が見あたらない。広いキャンパスをうろうろしてやっと会場に … “モモンガ・コンプレックス「他力ジェンヌ。」” の続きを読む

 会場となった桜美林大学はずいぶん遠い。東京の西郊外から電車を乗り継いで2時間近く。JR横浜線淵野辺駅からバスでキャンパスに着いたけれど、集合場所に関係者らしき人影が見あたらない。広いキャンパスをうろうろしてやっと会場にたどり着いたら、バス停前に戻ってほしいと言われてとぼとぼ逆戻り。しかし困惑と苦労の甲斐がありました。モモンガ・コンプレックスのパフォーマンスを目の当たりにして気持ちが軽ろやかになりました。

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青年団+文学座「職さがし」

作品は1971年にフランスで発表されています。当時はポンピドーがドゴールの跡を継いで大統領になったばかり。「5月革命」の熱気が尾を引いているものの劇中でその余波はあまり感じられません。中高年の失業は社会問題になっていなかったようです(労働政策研究・研修機構「フランスにおける中高年の雇用」)。
再就職活動中の夫は40代半ば。勤め始める妻と、左翼活動に入れあげる16歳の娘との3人家族。それに企業の面接官(人事担当者)と併せて4人が、白で統一した服装で登場します。

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三条会 『砂の女』 (作:安部公房、構成・演出:関美能留)

◎男と女と、そして〈砂〉 今回、四演目という三条会の『砂の女』。北千住の、普段は稽古場という劇場に入ると、向かい合う客席に挟まれた2mばかり下、船底のような長方形の舞台空間は三方を壁に囲まれ、七人の俳優がそれぞれ男四人と … “三条会 『砂の女』 (作:安部公房、構成・演出:関美能留)” の続きを読む

◎男と女と、そして〈砂〉

今回、四演目という三条会の『砂の女』。北千住の、普段は稽古場という劇場に入ると、向かい合う客席に挟まれた2mばかり下、船底のような長方形の舞台空間は三方を壁に囲まれ、七人の俳優がそれぞれ男四人と女三人に分かれて準備運動めいていた。中央には長い縄梯子。観客はちょうど、舞台を下にのぞきみるような格好になる。その日に坐った席からみると、舞台の右手が出入りの袖代り、左手が天井までのびる劇場の黒壁である。その左手――壁がすなわち穴の底(下方)であり、右手は外界(上方)、というわけ。舞台をへだてて向う側の人には当然、逆に映っているハズだ。〈底〉を背に、女たちがいる。反対側に男らがいる。「のぞきこむように、ご覧ください」という俳優の挨拶に誘われ、エレキギターも狂おしいアメリカ国歌の「Introduction」が鳴れば、いよいよ開演である。 

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危婦人「 大部屋女優 浜子 ~至福のランデブー~ 」

 「危婦人」は1998年旗揚げの女性劇団。風変わりな劇団名に引かれ、そのうえ「一見普通そうに見え、でもどこかおかしな女たち」がコンセプトと聞いて足を運びました(新宿・サンモールスタジオ、5月19日-28日)。女優とその隠 … “危婦人「 大部屋女優 浜子 ~至福のランデブー~ 」” の続きを読む

 「危婦人」は1998年旗揚げの女性劇団。風変わりな劇団名に引かれ、そのうえ「一見普通そうに見え、でもどこかおかしな女たち」がコンセプトと聞いて足を運びました(新宿・サンモールスタジオ、5月19日-28日)。女優とその隠し子、それに育ての母の、意地や嫉妬が絡むメロドラマ風の展開。歌と踊りを盛り込み、しっかり、こってり作られたエンタメ芝居という印象です。

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デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」

 コメディア・デラルテは16世紀半ばのイタリアで生まれ、17、18世紀ごろまでヨーロッパで隆盛を極めた、即興性のある仮面喜劇です。プルチネッラは、そのコメディア・デラルテの中でも南イタリアの代表的な召使いのキャラクターと … “デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」” の続きを読む

 コメディア・デラルテは16世紀半ばのイタリアで生まれ、17、18世紀ごろまでヨーロッパで隆盛を極めた、即興性のある仮面喜劇です。プルチネッラは、そのコメディア・デラルテの中でも南イタリアの代表的な召使いのキャラクターとして知られ、鷲鼻の黒い仮面を着けた姿は、パスタを手づかみで頬張る絵や人形劇の登場人物としても親しまれているそうです。今回はイタリア最南端のカラブリア出身のアントニオ・ファーヴァが作・演出・主演・音楽を担当。文化庁の在外研修員として彼に師事した光瀬名瑠子が相手役を演じ、ピアノはクラウディオ・マッティオーリでした。

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無機王「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」

「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」とは、ヘンなタイトルです。でも見終わって、瞬間的に「分かった」という気持ちになりました。ぶきっちょで優しい男の子と、ひりひりするような尖った女の子の、愛と追憶と再生の物語です。愛は現在から過去 … “無機王「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」” の続きを読む

「僕の腕枕、君の蟹ばさみ。」とは、ヘンなタイトルです。でも見終わって、瞬間的に「分かった」という気持ちになりました。ぶきっちょで優しい男の子と、ひりひりするような尖った女の子の、愛と追憶と再生の物語です。愛は現在から過去を発見する旅として設定されます。旅は追憶という名の探検であり、再生は過去の自分との切ない出会いによって成就します。台本は主人公の女子高生を陰影深く造形し、演出は場面と時間を複合的に配置し、主演の女優は余韻の残る印象的なシーンを刻みました。

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パラドックス定数「怪人21面相」

 パラドックス定数は「『個人と社会の相克』をテーマに」(同webサイト)骨太の作品を矢継ぎ早に発表してきました。「主宰・野木萌葱の作品を上演活動する組織」と規定しているだけあって、野木作品の構成力が最大の魅力であり、基本 … “パラドックス定数「怪人21面相」” の続きを読む

 パラドックス定数は「『個人と社会の相克』をテーマに」(同webサイト)骨太の作品を矢継ぎ早に発表してきました。「主宰・野木萌葱の作品を上演活動する組織」と規定しているだけあって、野木作品の構成力が最大の魅力であり、基本的にはセリフだけの潔い会話劇が特徴です。今回の第10回公演「怪人21面相」(渋谷space EDGE、5月12日-14日)は、三億円事件」「731」に続く、戦後未解決事件シリーズの集大成と銘打って、劇場型犯罪のはしりとなったグリコ・森永事件を取り上げました。無理筋ともみえるきわどい構成だったのではないかと思いますが、それだけにドラマチックな起伏を折り込んだ迫力は手応え十分でした。

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tpt「皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと」(ルネ・ポレシュ作・演出)

 海外から演出家がやってきて、日本人俳優を起用して斬新なスタイルの舞台をみせてくれることが多くなりました。入れ替わり異なった演技・演劇観にさらされる俳優は、なかなか大変ではないでしょうか。ドイツの劇作家・演出家ルネ・ポレ … “tpt「皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと」(ルネ・ポレシュ作・演出)” の続きを読む

 海外から演出家がやってきて、日本人俳優を起用して斬新なスタイルの舞台をみせてくれることが多くなりました。入れ替わり異なった演技・演劇観にさらされる俳優は、なかなか大変ではないでしょうか。ドイツの劇作家・演出家ルネ・ポレシュが自作を演出したtpt公演「皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと」をみて、そんなことをあらためて考えさせられました(ベニサン・ピット、3月29日-4月16日)。

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