デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」

 コメディア・デラルテは16世紀半ばのイタリアで生まれ、17、18世紀ごろまでヨーロッパで隆盛を極めた、即興性のある仮面喜劇です。プルチネッラは、そのコメディア・デラルテの中でも南イタリアの代表的な召使いのキャラクターと … “デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」” の続きを読む

 コメディア・デラルテは16世紀半ばのイタリアで生まれ、17、18世紀ごろまでヨーロッパで隆盛を極めた、即興性のある仮面喜劇です。プルチネッラは、そのコメディア・デラルテの中でも南イタリアの代表的な召使いのキャラクターとして知られ、鷲鼻の黒い仮面を着けた姿は、パスタを手づかみで頬張る絵や人形劇の登場人物としても親しまれているそうです。今回はイタリア最南端のカラブリア出身のアントニオ・ファーヴァが作・演出・主演・音楽を担当。文化庁の在外研修員として彼に師事した光瀬名瑠子が相手役を演じ、ピアノはクラウディオ・マッティオーリでした。

 笑いの引き出しには最も生身の身体に近い、放屁や耳垢鼻くその類をもてあそぶ動作が多用されました。ことばや文化の違いを乗り越えるパワーを備えた道具といえるでしょう。日本語にすると「様式」となって堅苦しい見本のようにみえますが、即興の本性を生かした、ひたすら笑い転げるステージでした。ことばの壁も文化の違いも、生活の底辺で突き抜けるような趣がありました。

 「イタリアの伝統マスク喜劇のスタイルで、とにかく良質の笑いが絶えない、異文化のエンターテイメントを楽しませていただいた。 (中略)イタリアらしい明るさと人懐っこさに加えて、放屁(おなら)だけで何回やったことか分からなくなる下品さ。時代と地域と言葉を違えても、伝わるものは充分である」(のっぱさんの観劇日誌
 「とにかくいっぱい笑わせようとしてくださいます。最初はノリについていけなくて構えてしまったのですが、徐々にアントニオさんの愛嬌にすっかりほだされて(笑)、楽しく嬉しく過ごさせていただきました」「コントだし、漫談だし、レビュー(歌)だし、パントマイムだし、一人芝居だし、対話演劇だし・・・アントニオさんの芸の素晴らしさが徐々にわかってきました。声のバリエーションがすごく豊かです。口をつかった擬音もいっぱい」(しのぶの演劇レビュー

 たしかに今はやりの「品格」はかけらもない潔さ。求愛と拒絶(のふり)から結ばれるまでがドタバタと展開されます。プルチネッラ役のファーヴァは卑俗卑猥に笑いをたっぷりまぶして動き回り、イタリア語でしゃべり散らかしながら肝心な場面は易しい英語に切り替えるなどサービス精神も旺盛で、共演の光瀬が日本語のセリフで通すこともあってことばは壁になりませんでした。

 また故郷の最南端カルデリアの風俗やしゃちほこばった気質を笑いのめします。ついでにイタリアの某地方やヨーロッパの某々国の気質を次々に笑いのやり玉に挙げる技も冴えていました。

 その昔、カルロ・ゴルドーニ作「二人の主人を一度に持つと」をアルレッキーノが演じた舞台をみたことがあります。ロープで作った輪の中がステージ、輪の外に出ると役から解放されるという奔放なやり方の原型を提起したようなステージでした。今度のプルチネッラはもっと土俗的な印象です。日本の能や狂言からゲイジュツ臭を抜き、もっと泥臭くしたような気がします。

 主催したデラルテ舎代表の吉田雅之さんはこどもの城で活躍したディレクターです。在職当時、評判の企画だった「五線譜のなかの動物たち」シリーズの取材でぼくは何度かお世話になりました。独立してからも、楽しさの底辺を耕すような企画を手がけているようです。しばらくぶりの再会でしたが、変わらない志と活躍ぶりを舞台の形で発見できて、うれしい限りでした。

[上演記録]
デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」(シアターX(カイ)提携公演)
シアターX(5月23日-25日)

作・演出・主演:アントニオ・ファーヴァ Antonio Fava
共演 :光瀬名瑠子 Naruko Misse
ピアノ:クラウディオ・マッティオーリ Claudio Mattioli

●主催 デラルテ舎
●製作 TEATRO DEL VICOLO – Dina Buccino
●制作 テアトロ・デル・ヴィコロ  デラルテ舎
●後援 イタリア文化会館/財団法人日伊協会、社団法人国際演劇協会(ITI/UNESCO日本センター)
●協力 アリタリア航空/財団法人セゾン文化財団


投稿者: 北嶋孝

ワンダーランド代表

「デラルテ舎「プルチネッラ~その生と死の復活から」」への1件のフィードバック

  1. 鶴屋南北とイタリア仮面劇

     先月から今月にかけては、ちょいと取込みもあって、なるべく芝居を観ないようにしてきたので、体が楽だ。何年か前までは、映画や演劇を見ないとなんとなく損した気分になったけど、このごろは劇場もない田舎に隠棲…

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