shelf「untitled」

◎いま、言葉と身体を問う意味
 志賀信夫

「untitled」公演チラシ
「untitled」公演チラシ

演劇と身体性

 shelfは2008年8月、利賀演劇人コンクールに出品した『Little Eyolf ―ちいさなエイヨルフ―』で主演の川渕優子が最優秀演劇人賞を受賞した。そのshelfの主宰・演出家が矢野靖人である。矢野は北海道大学在学中から舞台づくりを始め、青年団の演出を経て、2002年にshelfを立ち上げた。「shelf」という劇団名は「book shelf」つまり本棚の意味で、矢野はその本棚にある多くのテキスト(言葉)と身体の関係を追求している。
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時間堂「廃墟」

◎多層的な「行き場のなさ」から生まれる時代の俯瞰
 齋藤理一郎

 2011年3月30日ソワレにて時間堂「廃墟」を観ました。
 戯曲に描かれたキャラクターたちの個々を実直に演じつつ、終戦直後を生きる人々それぞれの「行き場を失った」感覚をしなやかに作り上げた、奥行きとボリューム感を持った舞台に浸潤されました。
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韓国演劇見学記2011

◎国境を越えられる演劇って何だろう? 韓国演劇見学記2011
 鈴木アツト

 2011年2月10日から一週間、再び韓国の演劇状況を見に行ってきた。前回は、韓国の蜷川幸雄と呼ばれるイ・ユンテク(李潤澤)氏の劇団・演戯団コリペにお世話になり、イ・ユンテク氏の周辺から韓国演劇を覗いた。しかし、あれから韓国語と韓国の演劇について本格的に学び始め、コリペは韓国内でも特別な劇団だということが、おぼろげながらわかってきた。私自身も、2010年には韓国から女優を招いて、日韓国際交流公演なるものを2公演実施し、コリペ以外の韓国の演劇人とのつながりもでき、もう少し詳しくソウルの演劇事情を知りたくなっていった。というわけで、今回の訪韓の目的は、一般的なソウルの劇団の公演や活動を見に行くことであった。同時に、日本の小劇場の劇団が韓国で公演をするためには、何が必要になるのか、具体的に知りたいと思った。このレポートがそういった海外公演のための参考資料になれば幸いである。
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たまごプリン「さいあい~シェイクスピア・レシピ」

◎野菜が問う「愛とは?」 踏み潰したい才能を発見
 鈴木アツト

 踏みつけたくなる才能がある。自分が信じる真っ直ぐなメッセージを、剛速球で投げてくる若い才能。その才能が創る舞台は、エネルギーに満ち溢れ、なによりそこに表現されたイメージが年長者にとってはあまりに斬新だった。こういう時は、まだ若いうちに、その才能がまだ芽のうちに、踏み潰しておくに限るのだが、今回、私が見つけてしまったその才能が創り出した作品は、コンクリートの道路を突き破って生えてくるど根性野菜をモチーフにしたパフォーマンスで、その舞台と同じく、踏み潰しても、私の足を突き破って生えてきそうなのである。
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鴎座「クレンズド」(リーディング・パフォーマンス)

◎狭間を浮遊する作品
 關智子

鴎座「クレンズド」 公演チラシ 俳優が舞台上で台本を手にしているという事は何を表すのか。彼らは完全に役に埋没する事はなく、かと言って彼らそのものとしてその場に存在している事もない、観客と交換可能でありながら違う世界を生きている狭間の存在になる。そんな居心地の悪い所在無さを感じながらも、時折突如としてその場に出現する劇的世界に観客を引き込もうとする舞台。2010年12月25日に行なわれた鴎座『クレンズド』はそんな作品だったように思う。

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ロドリゴ・ガルシア「ヴァーサス」

◎ポエティックという魔法
 柴田隆子

「ヴァーサス」公演チラシ 面白かった。劇評の書き出しとしてこれほど拙い書き出しはないと思うが、初めてロドリゴ・ガルシアの舞台に触れて湧き上がってきたのは、「面白い」という感覚だった。暴力的で非情な「現実」を描きながらも、「ポエティック」に一種コミカルにまとめられた「ガルシア・ワールド」の放つ独特の美しさは、描かれているものの猥雑さを隠蔽するだけでなく、その「美」を受け入れることを観客に課す。私は諾々とそれに従った。しかしわずかに残った微妙な違和感は、反芻するうちに膨らんでいき、しばらくたってから大きな衝撃に変わる、私はなんてものを「面白い」と感じてしまったのだろう。こうした一連の反応を観客から引き出すのが、「ガルシア・ワールド」と呼ばれる由縁なのだと思う。
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3人で語る「来月はコレがお薦め!」を振り返って(最終回)

 カトリヒデトシ+鈴木励滋+徳永京子

―このコーナーでは、みなさんに、三人三様の見方で、翌月の舞台を各3本ずつ薦めていただきました。残念ではありますが、これをもって最終回とさせていただきたいと思います。1年間、どうも有難うございました。今回は、この1年を振り返り、お薦め作品が実際に上演されてどんな感想をもたれたかなどを中心にお聞かせください。

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3人で語る「2010年12月はコレがお薦め!」

「イメチェン」公演チラシカトリヒデトシさんのお薦め
国道五十八号戦線「国道五十八号戦線異常ナシ」「国道五十八号戦線異常アリ」(サンモールスタジオ12月8日~13日)
北京蝶々×黒澤世莉(時間堂)「あなたの部品リライト」(ギャラリー・ルデコ12月14日~19日)
はえぎわ「ガラパコス」(こまばアゴラ劇場12月17日~29日)
鈴木励滋さんのお薦め
・「忠臣蔵フェア」(川崎市アートセンター12月9日~12日)
・「横浜ダンス界隈」(横浜 日本大通り周辺12月5日)
・「阿部一徳のちょっといい話してあげる『異形の愛 GEEK LOVE』」(MAREBITO12月17日~19日)
徳永京子さんのお薦め
劇26.25団「可愛い怪物」(下北沢駅前劇場12月24日~29日)
・ネクストシアター「美しきものの伝説」(彩の国さいたま芸術劇場12月16日~26日)
・猫のホテル「イメチェン」(ザ・スズナリ12月16日~29日)

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FUKAIPRODUCE羽衣「愛死に」

◎衝撃の「真面目キス」 愛と死のはざまに
 鈴木励滋

「愛死に」公演チラシ 昨年の野田秀樹の芸術監督就任で、東京芸術劇場が発信型へと大きく転換したことを強く印象付けた “芸劇eyes”。「芸劇が注目する才能たちを紹介する」企画として、ハイバイ・五反田団・グリング・冨士山アネット・モダンスイマーズという、「若手」でも「小劇場を中心に」でもなくなりつつある、いわば必勝体制での第一弾を手堅く成功させた。そして、今年は快快や劇団、江本純子に混じってFUKAIPRODUCE羽衣が参戦という攻めの姿勢である。

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3人で語る「2010年11月はコレがお薦め!」

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「月と牛の耳」公演チラシ
「月と牛の耳」公演チラシ

カトリヒデトシさんのお薦め
劇団競泳水着「りんごりらっぱんつ」(サンモールスタジオ11月12日‐23日)
イキウメ「図書館的人生Vol.3」(シアタートラム10月29日‐11月7日、HEP HALL11月16日~20日、アステールプラザ11月12日、西鉄ホール11月23日)
渡辺源四郎商店×東京デスロックカンパニー「月と牛の耳」(11月19日‐23日アトリエ・グリーンパーク、12月3日‐5日富士見市民文化会館 キラリ☆ふじみ

鈴木励滋さんのお薦め
dracom「事件母」(シアターグリーンBOX in BOX THEATER11月18日‐21日)F/T10
岡崎藝術座「古いクーラー」(シアターグリーンBIG TREE THEATER11月19日‐28日)F/T10
FUKAI PURODUCE羽衣「も字たち」(新宿ゴールデン街劇場11月9日‐25日)

徳永京子さんのお薦め
・生活舞踏工作室「メモリー」(にしすがも創造舎11月26日‐28日)F/T10
・「DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー」(東京芸術劇場11月26日-28日)F/T10
マームとジプシー「ハロースクール、バイバイ」(シアターグリーンBASE THEATER 11月24日-28日)F/T10

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