◎君は“空飛ぶチンポコ”を見たか?
佐々木眞(ライター)
連日連夜の熱帯夜の眠れない夜の明け方に、私は眼裏に右から左に飛翔する面妖なものを見たような気がした。寝ぼけ眼で今度は左から右へと飛び去るそいつをよーく見ると、それはかなりの重量感にあふれた陰茎であった。
小劇場レビューマガジン
◎君は“空飛ぶチンポコ”を見たか?
佐々木眞(ライター)
連日連夜の熱帯夜の眠れない夜の明け方に、私は眼裏に右から左に飛翔する面妖なものを見たような気がした。寝ぼけ眼で今度は左から右へと飛び去るそいつをよーく見ると、それはかなりの重量感にあふれた陰茎であった。
◎見切れが生み出した舞台の陰と陽 何を見せられ何を見せられなかったか
鈴木厚人(劇団印象-indian elephant-主宰/脚本家/演出家)
見切れという演劇用語がある。僕の愛読書「きれいなお姉さんのための演劇用語辞典」によると、「俳優の演技や舞台装置が客席から見えない状態になっていること」、と書いてある。不思議である。観客が舞台を見ていても、見えない状態。つまり、演出家に隠されている状態。それが見切れ。まあ、暗転だけで場面転換のないリアル系演劇の、具象的な舞台美術なら、セットがしっかり建て込まれている分、隠せる場所もたくさんあるから、とりたてて見切れに注目することもないのだが、抽象的でシンプルな舞台美術だと、話は変わってくる。例えば、野田秀樹の「THE BEE 日本バージョン」。巨大な紙が一枚、天井から吊るされている、ただそれだけの舞台美術。そこには、どんな見切れがあったのか。演出家によって何が隠されていたのか。観客は何を見せられ、何を見せられなかったのか。一枚の紙が生み出した舞台の陰と陽をレポートしたい。
◎複雑な状況を乗り越えることこそ修行 心満たされる舞台に
扇田拓也(ヒンドゥー五千回代表)
タテヨコ企画「ムラムラギッチョンチョン」を下北沢・駅前劇場にて観た。
作品を通して描かれている人間臭さが実に心地よい、優れた作品だったと思う。私はタテヨコ企画の観劇が初めてだったが、観終わって深く感じたのは「人間とは、許す生き物なのかも知れない」ということだった。
生きてゆく上で人は過ちを犯し、その犯した過ちを自ら許し、成長しながらもまた過ちをくり返す。人間とはそういうものなのかも知れない、そんなことを思ったのだ。
◎ぶっ飛んだ展開で後味スッキリさわやか
鈴木麻奈美(wonderland執筆メンバー)
劇団初見。
タイトルとチラシからどんだけ固い反米の話なんだろうとちょっと思ったけど、全然そんなことはなく、社会派? 難しい話? と、心配するだけ無駄でした。
肩の力を抜いて楽しめる、むしろ肩肘張ってたら楽しめないかもしれない、拍子抜けするほどにポップでキャッチーな作品。
◎劇場の天井が消滅するとき
詩森ろば(「風琴工房」主宰)
ムスタヒールアリスの「バグダットの夢」という作品を見た。ムスタヒールアリスはイラクのカンパニー。不安定で、成田に着くまではほんとうに来ることができるかどうかもあやぶまれた状況下から、日本が初演という作品を携えてやってきた。それは、雨が降ると水に浸されてしまう古い家に耐え忍びながら住む家族の話であった。不幸な状況は人間関係の不全と不安を呼び、苛立ちや悲しみが降り止まぬ雨に浸されていく。そこに狂ったひとりの若者がやってきてすべてを破壊してしまう。跡に残ったのは夥しい死と亡骸。暖かな屋根の下に住みたいというささやかな希望さえも終える。
“Al-Kassab and his group Mustaheel-Alice「Dream in Baghdad」” の続きを読む
◎KUDAN Project 「美藝公」 鈴木麻那美 脚本・演出:天野天街の二人芝居。 「くだんの件」「真夜中の弥次さん喜多さん」に続き、三作目にして最終章とのこと。 原作は筒井康隆。 舞台は映画産業中心の社会。スーパ … “最後まで隙のない映画とエンゲキの演劇” の続きを読む
◎KUDAN Project 「美藝公」
鈴木麻那美
脚本・演出:天野天街の二人芝居。
「くだんの件」「真夜中の弥次さん喜多さん」に続き、三作目にして最終章とのこと。
原作は筒井康隆。
舞台は映画産業中心の社会。スーパースターの美藝公。
…という設定を原作から拝借した、あくまで天野ワールドな舞台。
◎ありえないほどの密度 舞踏家、舞踊家が全力投球
志賀信夫(舞踊評論家)
大野一雄は1906年(明治39年)生れの舞踏家。1960年代に土方巽とともに舞踏を創りあげ、1977年には『ラ・アルヘンチーナ頌』を契機に舞踏を世界に広めた。2000年に舞台で倒れてから次第に立てなくなったが、支えられ、床の上や車椅子で踊ってきた。昨年百歳を迎えて写真展や公演が行われ、本年1月末に国内外の著名な舞踏家、舞踊家が結集する公演が神奈川県立青少年センターで開かれた。こういう舞台は顔見世に終りがちだが、舞踏家、舞踊家の全力投球で密度の高い舞台となり、まさに「百花繚乱」だった。
◎さわやかで、空っぽで、のほほんとした笑いの世界
鈴木麻那美
とくお組は今回初見。
「とくお組」っていう名前から、暑苦しい感じをイメージしていたんだけれど、コメディよりのさっぱり風味で一安心。
◎終わったけれど始まったばかりの旅 全体力と知力を注いだ3年
詩森ろば(TOKYOSCAPEディレクター、風琴工房主宰)
誰にも望まれず生まれ落ちた豊穣な果実。それがわたしにとってのTOKYOSCAPEです。誰にも望まれず、とは参加カンパニーや立ち会っていただいたたくさんのお客様に対して失礼なものいいであることはわかっています。しかし、せっかくこのような場をいただいたのだから、嘘のないレポートを書きたいと思います。
◎「骨肉相食む魂の西部劇」をみて「場外劇場」の主役をさらう
佐々木眞
演劇集団円の「ロンサム・ウェスト」(マーティン・マクドナー作・芦沢みどり訳)を観て、いま帰ってきたところです。
マーティン・マクドナーは1970年生まれというから弱冠36歳の英国の劇作家。ロンドン在住だけど、祖父母や両親の故郷であるアイルランドのリーナン地方やアラン島を舞台にした作品を次々に発表しているらしい。おいらは2004年にこの人の「ビューティクィーン・オブ・リーナン」を観て、いたく感銘を受けちゃった。