劇団チャリT企画「アメリカをやっつける話」

◎ぶっ飛んだ展開で後味スッキリさわやか
鈴木麻奈美(wonderland執筆メンバー)

チャリT企画「アメリカをやっつける話」公演チラシ劇団初見。
タイトルとチラシからどんだけ固い反米の話なんだろうとちょっと思ったけど、全然そんなことはなく、社会派? 難しい話? と、心配するだけ無駄でした。
肩の力を抜いて楽しめる、むしろ肩肘張ってたら楽しめないかもしれない、拍子抜けするほどにポップでキャッチーな作品。

春。大学は新歓の季節。いろんなサークルが新入生を勧誘している中、アメリカ研究会もWiiで遊んだりのびのびだらだらやりつつも、サークル存続のため新入生が欲しいところ。
そんな時期に来日するブッシュ大統領がこの大学に来るっていうものだから、警備なんかも厳しくなって勧誘のための立て看板も撤去しなくちゃいけなくなったりする。

大沢たちのアメ研「文化部」はダラダラゲームをやったり喋ったり、普通にゆるいサークル活動してるだけ。ただ楽しくやりたいだけなのに、何かがそれを邪魔をする。何よりもアメ研「社会部」の利香のおかげでゆっくりゲームも出来ないし、米良は利香の尻に敷かれっぱなしだ。それにまとわりつく新入生の阿久津も気に入らない。
僕らの自由を取り戻すため、アメリカ(=阿久津+米良+利香)をやっつけろ!
という話。

「アメリカをやっつける話」公演
「アメリカをやっつける話」公演から。写真撮影=宮木和佳子。 提供=チャリT企画

演劇研究部が公園に使うために日米友好の桜を切ったあとから、おかしなことが起こり始めて、各々がドタバタと奔走する。
まあ、それでもそれぞれ皆あくまでマイペースな感じなんだけれど。
戦時中の人やスパイが乗り移ったり、Wiiのリモコン探したり、女同士の乱闘もありつつ、最終的に切った桜の木をくっつけたらなんだか丸く収まって、来るはずだったブッシュも戦争を始めたから来ないって。

サークルとアメリカと日常と非日常とWiiと戦争とすこし不思議とあと秘密兵器とか。
かなり混沌とした状況ながら、その状況を把握していないが故に大げさではない、いたって普通の反応をする人物たち。
そういえば登場人物はそれなりに多かったと思うけど、それでもキャラクターは書き分けがはっきりしていたので混乱はしなかったし、にぎやかだったけど個々の印象はきちんと残る。まったりとしたテンポでダラーッとした人とそうじゃない人が、なんだかんだでそれぞれが普通にがんばる。なんだか妙にリアルなトーンの喋り方とか、こういう人いるよなあと度々思うと同時に、これはないわと思う描写とのギャップがあっておもしろい。

日本の大学のサークル棟でほんの少しドタバタしているとき、世界のどこかで戦争が始まったという終わりは皮肉でザワッとする。
でも現実ってそういうもんだね。知らない場所で知らないことが知らない間に起こってる。一体それが平和なことなのか平和じゃないのかわからないけど、とりあえず平和ボケなんだ。
でも自分の手の届く範囲では、本当はどうでもいいことがどうでもよくないことで、どうでもよくないことがどうでもいいことになったりする。

ドタバタコメディっていうのが言うのが一番しっくりくる気がするけど(本当にドタバタしてたし)、ドタバタを超えるぶっ飛んだ展開が新鮮でした。ブッシュが大学に来るって言う設定もびっくりするし、終始どこかバカバカしさを貫いているのは見ていて痛快。
コメディにもいろいろなものがある中で、ちゃんと笑わせてくれる、不思議なくらい後味スッキリさわやかな作品でした。
(初出:週刊マガジン・ワンダーランド第48号 2007年6月27日発行。購読は登録ページから)

【筆者紹介】
鈴木麻那美(すずき・まなみ)
1982年生まれ。日本大学芸術学部映画学科映像コース卒業。wonderland 執筆メンバー。blogは絶賛サボリ中。

【上演記録】
劇団チャリT企画 「アメリカをやっつける話」
王子小劇場(2007年5月17日-21日)
作・演出/楢原 拓

▼出演
松本大卒、伊藤伸太朗、内山奈々、高見靖二
冠仁、下中裕子、秋吉孝倫(乞局)、角田ルミ
竹内洋介、熊野善啓、小杉美香、楢原拓、長岡初奈(新人)

▼料金(全席自由)
前売2300円(日時指定整理番号付き)
当日2500円(開演1時間前より会場受付にて販売)
○学生割引=前売当日共に1800円(劇団扱いのみ・学生証掲示)
○失業者・障害者=無料(要証明書類)

▼スタッフ
音楽/YODA Kenichi
舞台監督/甲賀亮
照明/伊藤孝(ART CORE design)
音響/島貫聡
音響操作/樋口亜弓
宣伝美術/BLOCKBUSTER
協力/にしすがも創造舎(豊島区文化芸術創造支援事業)
協力/ガイプロジェクト、乞局
制作/チャリT企画

企画・製作/チャリT企画


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