鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」

鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」
◎筒井康隆を読むように鈴木忠志を観よ
田口アヤコ(演劇ユニットCOLLOL主宰)

新国立劇場にての鈴木忠志氏演出の3作品連続上演。
16年ぶりの東京公演、ということで、
日本の演劇界をおおきくゆさぶる2006年の一大ニュース、だった
日本人演出家のなかで
これほど世界に認められ、愛された人はほかにはいない、
ケンブリッジ大学刊行の
「20世紀を主導した劇作家、演出家21人」というシリーズに
スタニスラフスキー、ブレヒト、ピーター・ブルックと並んで
アジア人から ただ一人選ばれているらしい。すげえ!!!

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東京デスロック「再生」

◎身体によって発想された身体による物語
高木 登

「再生」公演チラシ(表)多田淳之介は「今回見つめ直すのは『物語』」であると書く(本公演チラシ裏)。「僕としては希望を描いたつもりです」とも書く(当日パンフレット)。だがここには一般的に期待されよう「物語」も「希望」もない。見えない。すくなくとも表層的にはそうで、ならばそれはどこにあり、どこに込められているというのか。

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ベケット「エンドゲーム」

◎「待つ」ことの希望と救済
田中綾乃

ベケット「エンドゲーム」公演チラシ今年は、ベケット生誕100年ということで、ベケットに関するシンポジウムや公演が数多くなされている。その中でも、9月末にシアタートラムで上演された『エンドゲーム』は、連日立ち見がでるほどの盛況であった。

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マレビトの会「アウトダフェ」

◎言葉が溢れ、言葉が失われる歴史を舞台に
高木龍尋

「アウトダフェ」公演チラシ劇作家に限らず、物書きと呼ばれる人には、書きたいこと、書こうとしていることとは別に、書かざるを得ないことや書かなければならないことがあるように思う。「初日までの日数がもうないから書かなければならない!!」とか、「編集者にずっと睨まれているから書かざるを得ない!!」というとても世知辛い外からの要因もあるかも知れないが、物書きの心の内から要請される物事があるはずである。その、書かざるを得ない、は書く内容についてもあるだろうし、どのように書くかということもある。関西人にあてはめれば、ボケとツッコミの会話にせざるをえない、オチのある話でなければならない、というところだろうか。

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指輪ホテル北米公演”CANDIES – girlish hardcore”

YUBIWA Hotel “CANDIES – girlish hardcore”(指輪ホテル北米公演)
◎痛みを痛みとおもわないための儀式。いきのびるために。
田口アヤコ

この文章を書くにあたり、
劇評 というものをだれが必要としているのか についてかんがえたのだが
わたしは作家ですので演出家劇作家女優ですので
演劇の評論は書けませんので、なんらかの記録として、
指輪ホテルという団体が劇団としてのかたちをたもっていた一時期
指輪ホテルに劇団員として所属していた経歴をもつ
演出家劇作家女優田口アヤコが、
ニューヨークで、
YUBIWA Hotel “CANDIES – girlish hardcore” North American Tourについて
なにをみたか。
という文章を書きます。

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別役実作「壊れた風景」(組曲「二十世紀の孤独」第三楽章)

◎責任も無責任もありえないような状況がありうるということについて
竹内孝宏

戦後のリベラリズムを背景にした「無責任」の理論と表象―つまり丸山真男と植木等―を補完するかのように、この国のネオ・リベラリズムは、「自己責任」の言説を風俗的に定着させた。それは、勝ち組に対する負け組のルサンチマンに収斂することもあれば(イラク人質ジャーナリスト批判?)、逆に勝ち組の負け組に対する完膚なきまでのダメ押し(構造改革?)として顕在化することもある。

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ク・ナウカ 「トリスタンとイゾルデ」

◎ク・ナウカの<様式美>にみられる根源的なもの  田中綾乃(東京女子大学非常勤講師)  「わたしは今もなおあの『トリスタン』と同じように危険な魅惑力をもち、同じように戦慄をさそって、しかも甘美な無限性をもつ作品を、見いだ … “ク・ナウカ 「トリスタンとイゾルデ」” の続きを読む

◎ク・ナウカの<様式美>にみられる根源的なもの
 田中綾乃(東京女子大学非常勤講師)

 「わたしは今もなおあの『トリスタン』と同じように危険な魅惑力をもち、同じように戦慄をさそって、しかも甘美な無限性をもつ作品を、見いだすことはできない-あらゆる芸術の中にそれを探したが見いだすことはできない」 ニーチェ『この人をみよ』(手塚富雄訳、岩波文庫 p60)より

 ク・ナウカの魅力とは、一体何なのだろう・・・? 2001年の『トリスタンとイゾルデ』(2001年10月12日-18日、青山円形劇場)を観終わったあと、すぐに浮かび上がった私の疑問はそれであった。と言うのも、長年、ク・ナウカに魅了されてきた私だったが、2001年の『トリスタンとイゾルデ』は、まったくもって魅力を感じることができなかったからである。それから5年経ち、今年の夏、再び『トリスタンとイゾルデ』が上野の杜に蘇った。以下、初演と再演を比較しながら、ク・ナウカの魅力を考えていきたい。

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TAKE IT EASY! 「葬儀屋オペラ」

◎「葬儀」は誰のため?  高木龍尋((大阪芸術大学大学院嘱託助手)  黒白のモノトーンの世界にいる「葬儀屋」と、華やかな世界(もちろん、探せば静かで地味なオペラもあるのだろうが)の「オペラ」……このふたつがどう繋がるのだ … “TAKE IT EASY! 「葬儀屋オペラ」” の続きを読む

◎「葬儀」は誰のため?
 高木龍尋((大阪芸術大学大学院嘱託助手)

 黒白のモノトーンの世界にいる「葬儀屋」と、華やかな世界(もちろん、探せば静かで地味なオペラもあるのだろうが)の「オペラ」……このふたつがどう繋がるのだろうか、と考えると不思議である。TAKE IT EASY! という神戸の劇団は作品を観る機会がこれまでなかったが、その存在は知っていた。タイトルはネットで見かけて知っていたが、チラシは見ていなかった。「葬儀屋オペラ」という不思議さに興味惹かれて観ることを決めた作品である。

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トリプルクラウンプロデュース「彼岸島の不思議な夏」

◎私たちはどんな言葉を話しているのか……?  高木龍尋(大阪芸術大学大学院嘱託助手)  遠景に青い空と見事な入道雲、群青の海に緑の島がぽつんとある。その島には、白地に一輪の彼岸花が染め抜かれた巨大な旗が、島とはアンバラン … “トリプルクラウンプロデュース「彼岸島の不思議な夏」” の続きを読む

◎私たちはどんな言葉を話しているのか……?
 高木龍尋(大阪芸術大学大学院嘱託助手)

 遠景に青い空と見事な入道雲、群青の海に緑の島がぽつんとある。その島には、白地に一輪の彼岸花が染め抜かれた巨大な旗が、島とはアンバランスに掲げられている―というチラシである。「彼岸島の不思議な夏」というタイトルとこのチラシから予想できた世界、「彼岸島」という地名には何かオカルトホラー的なものを感じるし、「不思議な夏」からはメルヘンチックなものも感じる。探せばライトノベルと呼ばれる類の小説に見つかりそうな気もする。だが、完全にそうではないと言い切れないものの、この予想は見事に裏切られた。

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TOKYOSCAPE

◎TOKYOSCAPEで、KYOTOトリップ!- 東京6劇団による同時多発公演 in 京都
高野しのぶ(「しのぶの演劇レビュー」主宰)

東京で個性的かつ精力的な活動を続けている6つの小劇場劇団が、京都の4つの会場で同時多発公演をおこないました。それがTOKYOSCAPE(トーキョー・スケープ)。小劇場観劇フリークの間ではこの夏、「京都、いつ行く?」「何と何を観る?」など、TOKYOSCAPEの話題で持ちきりでした。

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