第1回 ロンドンで演劇チケット代を考える
今井克佳(東洋学園大教授)
四月からロンドンで暮らしています。勤務先の大学から一年間の「在外研究期間」をいただき、ロンドン大学に客員研究員として所属、中心部から地下鉄で30分ほどの郊外のフラットを借り、一人暮らしをしています。研究の課題として「現代演劇における日英文化交流」という題目をたてているので、本来は、過去の記録データなどを掘り起こしながら考察をまとめていくことが仕事なのですが、やはりシアターゴアーとしての血が騒ぎ、こちらの演劇環境を肌で知ることも大切、と東京にいるときに負けず劣らず、いや時間が自由なことをいいことにそれ以上に芝居通いを続けている毎日です。
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▽ジュリエット芝居-どんな上演だったか
地上32階のレストラン…行ったことはないし、行こうともあまり思わない。高級なのだろうけれども、3階以上のところに住んだことがなく、10階以上の建物にもなかなかお目にかかる機会がないところで育った私には何となく縁遠い気がする。おそらくは、作・演出の鈴江俊郎さんもそのような気分の持ち主ではないだろうか。
パラダイス一座の『オールド・バンチ』が終わった。
劇団掘出者の舞台をみるのは、昨年春の『チカクニイテトオク』に始まって秋の『ハート』と続き、今回の『誰』で3本めになった。およそ半年ごとに次々と新作を発表しており、作・演出の田川啓介が劇作家として伸び盛りであること、劇団としてのフットワークの強さを感じる。しかし初日に観劇した直後は「困ったな」というのが正直な気持ちであった。それは「これはフィクションなのか、それとも同じようなことが現実の大学生にも起こっているのか」という極めて初歩的な困惑だった。舞台をみるとき、その世界が現実に則したものとして受け止めるのか虚構を楽しむものか、自然に感じ取れれば楽なのだが、『誰』は判断できなかった。千秋楽近くに足を運んだ知人も似たような感想を漏らしており、舞台に描かれている世界を受け止めるのがむずかしかったことがわかる。だんだん心配になってきた。こういう舞台を作る田川啓介さん、あなたの心は大丈夫なのでしょうかと。
高井浩子が描く東京タンバリンの作品を観るといつも、「なんて容赦がないんだろう」と感じる。日常にごくありふれて存在する無邪気な(ゆえにタチの悪い)悪意をむき出しにし、そこに何のフォローも与えないのが、私の考える高井作品の特徴だからだ。言ってみればマキロンも絆創膏もなしで、グジュグジュの傷口をほったらかし、みたいな。おおよその場合は自然にかさぶたとなって治癒に至るのだろうし、高井作品に登場するドライな(ときに記号的ですらある)キャラクターを見ていると、人間はそうしてやり過ごして生きていかざるを得ないのだなとも思う。
1人の作家を取り上げ、3~4人の演出家がその作品の中から選んで、リーディング形式で1時間程度の舞台作品をつくる。これが横濱・リーディング・コレクションの基本的なスタイルだ。5回目となる今回は、三島由紀夫が選ばれ、4人の演出家が挑んだ。
キャストがすごっ!松たか子、宮沢りえ、橋爪功、大倉孝二、北村有起哉…と聞いただけで卒倒しそう。そこへもってきてダンス集団コンドルズまで加えてしまって、殿、な、なにをなさるおつもりか???と、クエスチョンマーク3ケ付き好奇心で出かけて行きました。もちろん劇場へ。