MU「5分だけあげる」

◎素カレーは偉大
 小畑明日香

「5分だけあげる」公演公演チラシ
「5分だけあげる」公演チラシ

 『5分だけあげる』・上演時間55分、平台で舞台、一回り小さい平台を上に重ねて上演スペース、主に教室と、そこへ向かう廊下で起こる、学級崩壊した小学校(パンフレットに寄れば「ぶっ壊れた6年2組」)での物語。
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劇団サーカス劇場「カラス」

◎「友達」を探し求める物語 ガード下に漂う甘いにおい
小畑明日香(学生)

「カラス」公演チラシバイクが上手でうなる音から幕開き、ガードレールの隙間を自転車とバイクが走り抜けて歌。♪時は三十世紀トーキョー♪とのことだが歌ってる大女は長いざんばら髪にポシェット下げて要するに舞台は荒廃した未来、である。が、アングライメージの意匠をちりばめつつも「カラス」はにおいがはっきりちがった、字義通りの意味でそのことを書きたい。

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カプセル兵団 「臥龍頂上伝」「幽幻夢想」(同時期上演)

 映像に似せるのは逆効果 面白いんだからちゃんと売れ
 
 縁あって見に行ったら面白かった、ということにとてもイラついている。面白いものを作っているのに、どうしてちゃんと売らないのか、と思う。
 中国活劇三部作で、一部・二部を同時上演した後に日を空けて完結編を上演するのだそうだ。全編カンフーもりもりの「ワイヤレスワイヤーアクション」がウリなんだそうだ。アクションスターなんかも起用したそうだ。でもね、ぜんぜん説得力無いんだよ、公演チラシがCGばりばりだったら。二つ折りチラシの中の宣伝文句なんて読まないんだよ、表に役者の写真と物語の筋しかなかったら。だいたいいくら同じ小屋だからって乞局の当日パンフに折り込むなよ、血と暴力と田舎の因習が舞台なんですよ乞局は、それを見に来る人に「これが面白い演劇だ!」ってぶちぬいたカンフーチラシ渡すなよ、小屋主も考えろちょっとは。
 自分たちが作ってるものの何が面白いのかわかってないんだべ?

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多田淳之介+フランケンズ「トランス」

◎隣り合っても断絶、の光景が切なく 何重にも読み替えられる戯曲
小畑明日香(慶応大学)

「トランス」公演チラシ単行本として上梓されたこの戯曲のまえがきによれば、鴻上尚史の書いたこの三人芝居「トランス」は、役者が三人いればどこででもできるという強みも手伝ってか、今まで1000回以上上演されてきたのだという。初演から今日までの約15年間で1000回。その1000回の中で、今回ほど、戯曲と真っ向から向き合った上演はなかったのではと思う。

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Uフィールド「水の花」

◎変奏される台詞・生き残ってしまった人の物語

一つの劇団とある程度深く関わってしまったことで劇評が書けなくなるときもある。自分がどういう立ち位置でものを見ているのか話してしまうことともつながってくる。そんなわけで1カ月も経ってしまった公演の話ですが、やっぱりこの舞台は今年のベストに選んでしまうと思います。

先月、渋谷ギャラリー・ルデコの、ふつうはあまり演劇用スペースに使われない、四周に鉄骨の組まれた小さなスペースで、男二人女一人の三人芝居+出演者の一人は作・演出も兼ねている、超小規模な公演があった。
取り外しのできない鉄骨はそのまま二階建ての客席として流用し、舞台空間の鉄骨には黒幕を張って、下手から劇場の天井裏まで伸びている階段も舞台装置の一部に使って、床と鉄骨がぶつかる所には花が植わっている。
大道具移動による場面転換なし。
舞台中央の大きな柱の手前には木の、背もたれなしのベンチを置いて、それが長距離列車の座席になるところから舞台が始まる。

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劇団印象『枕闇』

◎ことば遊びのしすぎでキャラクターが窒息

本当は、「夢」を軸にした話だったようなのだ。

「人は、自分の願望を眠りとともに”夢”に見る、
(中略)枕闇はそうした”夢”の、ちょっと不思議なお話である。」(パンフレットより演出の言葉)

”夢”の芝居だと思って見始めて、最後まで首をかしげながら見ていた。
ただ、目に色鮮やかで美しい舞台だと思ったことも今のうちに併記しておこう。
劇団印象の「枕闇」は、はたして何を核にした芝居なのか。 (以下文中敬称略)

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龍昇企画「夫婦善哉」

◎アゴラにて 旨味すくなき 作之助 なんのかの言っても 生きたもん勝ち

三ヶ月経ってしまった。
五月の舞台である。五月に一回見て、書いて、不評で、「ちょっと練り直します」で三ヶ月。
かくもおそろしや平田オリザ。私は、彼が龍昇企画のために書き下ろしたという触れ込みの前に委縮していた、なんつて。日本の演劇史を「オリザ以前」「オリザ以後」にわけた張本人の脚本+前回公演「モグラ町」でスピーディーにオヤジっぷりを描いた龍昇企画、ひどかった、わけではもちろん、ないのであるが。

平田オリザ本人がチラシの裏に書いた宣伝文が何日たっても劇の印象と合致しなかった。

織田作之助の原作『夫婦善哉(めおとぜんざい)』に登場する、大阪「自由軒」のカレーライスのことを書いていた。自分もそのカレーライスが大好きだということ、そしてそのカレーライスのおいしさを小説中で語った織田さんに捧げる戯曲として、男女が「ひたすら食べ続ける。それだけの話である」と言っていたのである。今回の公演のことを。

え、そんなにうまそうなもん食ってたっけ。

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岡崎芸術座「三月の5日間」

◎見る人と見られる人と、大衆よりもっと大きなもの

お江戸上野広小路邸の、全席桟敷の寄席舞台に、開場と同時に入ったのに、かぶりつき一列にすでに先客がいる。目の前の舞台をテーブル代わりにして、お茶菓子やつけものを並べている。
すぐ後ろに座ると「食べる?」と声がかかった。かぶき揚げと栗のお菓子を食べながら、最前列の「観客」たちの動向を眺める。
「社長! 社長!」と声を上げながらビールを呑むおばちゃんたちと、その隣のフィリピンパブのおねえちゃんとは有り体に言うといかにも下町、という感じで、電車の中でもケータイでしゃべりそうな雰囲気で、現代っ子世代から言うとかなりうっとうしい。目障りだけどしらけた視線を送る以外に対抗しようがないタイプの人達。
が、私を含む二列目の客はにやにやしながらその様を見ている。
すでに芝居が始まっていることを皆分かっているのだ。だって「社長」「部長」と呼ばれている上手客席の二人は、顔まで白黒に塗り分けたパンダの仮装をしてる。いくら寄席を知らなくても、でかいパンダの頭かぶって見に来る客はいないだろう。

で、非日常的な仮装で観客として客席に座っている「社長」と「部長」は、「見る側」なのか「見られる側」なのか。

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ゴキブリコンビナート「いつかギトギトする日」

@新小岩劇場
作・演出 Dr.エクアドル
5月30日~6月2日

言わずと知れたキツイ・キタナイ・キケンの3Kミュージカル、だが意外にも舞台装置はなんか、ポップ。
会場に入ると数年前に一度見た「君のオリモノはレモンの匂い」を髣髴とさせる、天上にびっしり張られた丸太。上手側の入り口から舞台算法をぐるりと鉄骨の足場が囲み、中央はベニヤむきだしの「桟敷」。床は一面水。桟敷の正面に二段組で丸太の足場があり、奥の足場にも観客がじか座りできる。
なんかビッグサンダーマウンテンを思い出すんだよねー。場内整理もむずかしいので観客は劇場外に一旦並んでからぞろぞろ入るのだが、ディズニーランドのアトラクションにとてもよく似ている。一枚百円でレインコート販売してるところもねずみ王国の商魂。買わずに入ってみました。

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ジェットラグプロデュース「誰ソ彼」(たそがれ)

5月29~6月1日
@新宿シアターモリエール
作・深虎芥(空間ゼリー) 演出・又吉直樹(ピース)

レゴブロックのような色彩のポップな舞台装置がそのまま「何かになりたい私」を示しているように見える。役者の衣装も派手だが、色同士がぶつかり合わない点はスタッフ陣の力だろう。この辺はプロデュース団体の強みかもしれない。
なぜだか夢を追う人達ばかりが集まるアパート「夕凪荘」には、小説家、映画監督、バンドマン、ダンサーをそれぞれ志す人達がいる。新しい入居者が入ってきた歓迎会で「鴎外は」とのたまう小説家志望やカメラを回し続ける映画監督志望はベタなキャラクターだが印象には残る。ちなみに俳優志望の登場人物はいない。
新劇風の明快なキャラクター設定と、台詞が二ヶ所で同時進行する平田オリザ方式が融合している点も特筆すべきだと思う。
面白い企画でした。ではお話のほうはどうだったでしょうか。

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