◎「確かな芝居」の世界へ切り替わる 内閉した心情をぶつけるシーンで
藤原央登
上品芸術演劇団といういささか大時代がかったネーミングのユニットは、チラシには兵庫県のAI・HALLで長年開かれていた演劇塾の9期生(女優4人)にチーフディレクターであった劇団八時半主宰の鈴江俊郎が加わって成立したものであると書かれている。私は2月の劇団八時半公演『完璧な冬の日』で描かれた空港建設に反対運動を続ける登場人物に鈴江の演劇することの意味と倫理を感じ取り、また愚直なまでに演劇が成立する作業仮設としての劇団の堅持とその必要性を希求する姿勢に好感を持った。それは本当に今どき珍しいくらい演劇への直截な情熱を感じさせるものであるが、まさか自劇団の他に集団を持つとは予想外だった。