東野祥子「VACCUME ZONE」

◎廃墟でも踊り続ける 舞台を支配する意志と身体
志賀信夫

「VACCUME ZONE」公演チラシ東野祥子は、東京では、トヨタ・コレオグラフィーアワードで、一気に注目を集めた。奈良に生まれてモダンダンスを学んだが、モダンダンス界とは離れて、関西で独自の活動を活発に行っていた。維新派から派生したグループに参加し、スタジオ、活動拠点やカフェをつくり、多くのミュージシャンやアーティストとコラボレーションを行いながら、2000年、女性2人とBaby-Qを結成。初めて応募したトヨタ・アワードで2004年に大賞「次代を担う振付家賞」を受賞した。

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神村恵カンパニー「385日」

◎スリリングでおもしろい「喋りながら取っ組み合う」ダンス
桜井圭介

世田谷美術館のロビーで行われた神村恵カンパニー『385日』を観た。中盤あたりのハイライトシーンで驚いた。なんか会話しながら取っ組み合いしてるよ! 「しゃべくるcontact Gonzo」(笑)ていうか。そのことをある人に話したら「神村恵、お前もか(嘆)!」という反応が返ってきた。曰く、最近やたらと目に付く「ダンスなんだか演劇なんだか分かんないよ」的な演劇やダンスに対して、常日頃苦々しく思っていたが、まさか神村恵だけはそんなことはしないと思っていたのに! だって。たしかに、神村恵はダンスのフォルマリスト的な位置取りの先端と目される振付家であり、いわゆる「タスク」とか「ルール」で構造する的な(ジャドソンチャーチ的な?)アプローチの作家として評価されているわけで、その彼女が、そんな安直なギミックに頼るとは! というのは、まあ分かる。事実、あとで作家本人にも「しゃべくりゴンゾだったね!」と率直な感想を述べたところ、なんとなーくイヤそうな顔で苦笑いされた(ような気も)。

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3人が語る「2010年4月はコレがお薦め!」

【3人共通のお薦め】
鰰(はたはた)「動け!人間!」(アトリエ春風舎4月16日-5月5日)

「お薦め」鼎談★カトリヒデトシさんのお薦め
世田谷シルク「春の海」(シアター711 4月8日-11日)
箱庭円舞曲「とりあえず寝る女」(駅前劇場4月2日-6日)
柿喰う客「八百長デスマッチ/いきなりベッドシーン」(タイニイアリス 4月15日-18日 <大阪公演>八百長デスマッチ 4月23日-25日 in→dependent theatre 2nd いきなりベッドシーン 4月26日-28日 in→dependent theatre 1st)
★鈴木励滋さんのお薦め
青年団リンク 口語で古典「武蔵小金井四谷怪談」(こまばアゴラ劇場4月17日-29日)
コマツ企画「背伸び王」(下北沢 楽園4月21日-25日)
風琴工房「おるがん選集 春編」(浅草橋ルーサイトギャラリー 4月26日-29日)
※二作品ずつ「桜編」「藤編」があるため、劇団ホームページで上演時間ご確認を。(【桜】「寡婦」原作 ギ・ド・モーパッサン 「濹東綺譚」原作 永井荷風【藤】「親友交歓」原作 太宰治 「流刑地にて」原作 フランツ・カフカ)
★徳永京子さんのお薦め
・「BLUE/ORANGE」(ワーサルシアター4月22日-5月2日)
シス・カンパニー「2人の夫とわたしの事情」(Bunkamuraシアターコクーン 4月17日-5月16日)
文学座「わが町」(全労済ホール/スペース・ゼロ4月9日-18日)

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3人が語る「2010年3月はコレがお薦め!」

「エーブルアート・オンステージ コラボ・シアター・フェスティバル2010」チラシ★カトリヒデトシさんのお薦め
ろりえ「恋2」(王子小劇場、3月3日-7日、一心寺シアター倶楽、3月13日-14日)
qui-co.キコ「はなよめのまち」(王子小劇場、3月25日-29日)
三匹の犬「現実はきびしく私たちは若いけれど要求は唐突で思い切るという手もあるかもしれない」(pit北/区域、3月25日-29日)
★鈴木励滋さんのお薦め
・「エーブルアート・オンステージ コラボ・シアター・フェスティバル2010」Bプロ「≒-にあいこーるのじじょう」(アサヒ・アートスクエア、3月18日・19日)
・「東野祥子solo dance VACUM ZONE」(シアタートラム、3月5日~7日)
時間堂「月並みなはなし」(座・高円寺、3月11日~14日)
★徳永京子さんのお薦め
・「老人ホームREMIX#1 野村誠のポストワークショップ」(BankArt Studio NYK、3月14日)
・「FABIEN PRIOVILLE」(彩の国さいたま芸術劇場3月18日)
726「太宰治 走れメロス」(下北沢OFF・OFFシアター、3月18日~23日)

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3人が語る「2010年2月はコレがお薦め!」

【3人共通のお勧め】

「わたしたちは無傷な別人であるのか?」
チェルフィッチュ公演チラシ

チェルフィッチュ「わたしたちは無傷な別人であるのか?」(横浜STスポット2月14日-26日、横浜美術館3月1日-10日)
★カトリヒデトシさん
monophonic orchestra「センチメンタリ」(2月5日-11日、横浜STスポット)
谷賢一単独企画公演「幸せの歌をうたう犬ども」(2月2日-4日、新宿タイニイアリス)
ニットキャップシアター「踊るワン‐パラグラフ2010」(2月18日-21日、ザ・スズナリ)
★鈴木励滋さん
岡崎藝術座リズム三兄妹」(再演) (2月 27日- 3月 2日、横浜のげシャーレ )
モモンガ・コンプレックス「ウォールフラワーズ。」(2月11日-14日、キラリ☆ふじみ)
We dance (2月13日-14日、横浜市開港記念会館)
★徳永京子さん
モダンスイマーズ「凡骨タウン」(2月5日-21日、東京芸術劇場 小ホール1)
E-Pin企画10周年記念公演+城山羊の会「イーピン光線」(2月9日-14日、下北沢駅前劇場)
・池田扶美代+アラン・プラテル+ベンヤミン・ヴォルドンク「ナイン・フィンガー Nine Finger」(2月6日-7日、彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)

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韓国演劇見学記

◎充実した環境、日本を圧倒 韓国演劇見学記
鈴木アツト

「日本の小劇場より、韓国の小劇場のほうが進んでるよ」
韓国人の友人からこんなことを言われた。これがイギリス人から言われたのならよくわからなくても納得してしまっただろう。そうかイギリスは進んでるんだね。なるほどね。って。悲しいかな、僕の中にも偏見はある。日本がアジアで一番だと思いたいのだ。でも、もし韓国の小劇場が日本のそれより進んでるのだとしたら何が進んでるのだろう? つい気になってしまった。だから実際に見てくることにした。年末に。韓国の演劇を。韓国の小劇場を。というわけで、2009年12月21日から一週間だけ韓国に滞在し、かの地のお芝居や稽古、劇場を自分の目で見てきた。だからこの原稿はその一週間のレポートである。

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3人で語る「2010年1月はコレがお薦め!」

今回からの新企画として、カトリヒデトシさん、鈴木励滋さん、徳永京子さんの3人に、来月のお薦めの3本を語り合っていただきます。それぞれの好きなジャンルや傾向がクロスオーバーすることで、連鎖反応的にさまざまな作品への興味が誘発されればという趣向。まずは2010年の1月の舞台について。

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演劇集団 円「コネマラの骸骨」

◎前代未聞のボーン・ジャムセッションこそ、遅れてやってきた怒れる若者マーティン・マクドナーの真骨頂だ!
佐々木眞

「コネマラの骸骨」公演チラシロンドン生まれの悪童、マーティン・マクドナーが両親の出身地であるアイルランドのリーナン地方を舞台にした悪漢演劇3部作シリーズの2作目がこれです。題名の『コネマラの骸骨』のコネマラは、そのリーナン地方を含めた景勝地の名前だそうですが、景勝地とは似ても似つかぬ「正体不明の謎の男の殺しの疑惑」が今回のテーマなのでしょうか。

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The Vagina Monologues (ヴァギナ モノローグス)

◎「ヴァギナ・モノローグス」にみる社会と身体
志賀信夫

「ヴァギナ モノローグス」公演チラシ▽ヴァギナとフェミニズム

70年代、フェミニズムの主張として、「女性はヴァギナで感じるのではない、クリトリスだ」とするものがあった。それは男性がヴァギナを求めるのに対して、女性にとって自らコントロールできる性器はクリトリスであり、エクスタシーに達するのはクリトリスだという、男性のフロイト的?ヴァギナ幻想を打ち破ろうという主張だったように思う。

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「化粧 二幕」と「楽屋」

◎家族の解体から新しい人間関係へ 女優と楽屋をモチーフに
鈴木厚人(劇団印象-indian elephant-主宰、脚本家、演出家)

「楽屋」公演チラシ 座・高円寺のこけら落とし公演「化粧」と、シアタートラムのシスカンパニー公演「楽屋」が、ほぼ同じ時期に上演されていたのは、僕にとっては嬉しい偶然だった。どちらも“楽屋”が舞台で、“女優”をモチーフにした芝居であり、チラシも“化粧”をしている女優の写真。しかも、名作と呼ばれている戯曲の何度目かの再演(「化粧」の初演は1982年、「楽屋」の初演は1977年)と、共通点の枚挙に暇がない。もちろん、「化粧」は一人芝居であり、「楽屋」は女優四人の芝居だから、そこのところは大きく違う。ストーリーだって全然違う。観劇後の僕の満足度(つまり、僕が感じた芝居の出来)だって、180度違った。しかし、その違いをつぶさに見比べると、太いつながりを感じずにはいられなかった。

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