3人が語る「2010年2月はコレがお薦め!」

【3人共通のお勧め】

「わたしたちは無傷な別人であるのか?」
チェルフィッチュ公演チラシ

チェルフィッチュ「わたしたちは無傷な別人であるのか?」(横浜STスポット2月14日-26日、横浜美術館3月1日-10日)
★カトリヒデトシさん
monophonic orchestra「センチメンタリ」(2月5日-11日、横浜STスポット)
谷賢一単独企画公演「幸せの歌をうたう犬ども」(2月2日-4日、新宿タイニイアリス)
ニットキャップシアター「踊るワン‐パラグラフ2010」(2月18日-21日、ザ・スズナリ)
★鈴木励滋さん
岡崎藝術座リズム三兄妹」(再演) (2月 27日- 3月 2日、横浜のげシャーレ )
モモンガ・コンプレックス「ウォールフラワーズ。」(2月11日-14日、キラリ☆ふじみ)
We dance (2月13日-14日、横浜市開港記念会館)
★徳永京子さん
モダンスイマーズ「凡骨タウン」(2月5日-21日、東京芸術劇場 小ホール1)
E-Pin企画10周年記念公演+城山羊の会「イーピン光線」(2月9日-14日、下北沢駅前劇場)
・池田扶美代+アラン・プラテル+ベンヤミン・ヴォルドンク「ナイン・フィンガー Nine Finger」(2月6日-7日、彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)


徳永京子さん徳永京子 「わたしたちは無傷な別人であるのか?」は、岡田利規さんの新作ということで、当然注目ですね。早い段階でお客さんにプレビューを、しかも複数回されるそうで、お客さんの反応を作品にフィードバックするという本来の意味でのプレビューになっています。よりいい作品にするためのシステムを開拓しようとしている姿勢を感じて楽しみです。
鈴木励滋 プレビューのポストトークの顔ぶれも佐々木敦さん、桜井圭介さんなど、力が入っています。「作品は岡田利規個人のものではない」という姿勢のようです。公演期間の間にも「生成」していく作品になりそうです。岡田さんは作品論でもいろいろ試みている上に、演技のこともずーっと考えている。「チェルフィッチュ様式」のような定型を目指しているのではなく、「演じる」ということ自体を疑っている、それでいてぎりぎり成り立つようなものを追及する極端な試みから、「演技とは何か」ということを問うているのではないかと思います。
カトリヒデトシ 先日東京演劇ライブで岡田さんたちが新作紹介をしたんですが、15分で「ここまでしかできていません」っていう。立ってリーディングしているだけみたいで、その段階では身体の動きがなくて。これまでと全然違ったものだった。すごいかっこよかったんですよ。終わったらすぐ、ロビーや客席で「絶対本公演いくよね」と話題沸騰という感じでした。出演者では、チェルフィッチュの海外公演にも参加し、飴屋法水さんの作品にここ3回連続で出ている武田力さんに注目しています。
徳永 岡田さんや飴屋さんは、役者さんのルックスや演技力だけじゃなくて、声の力も考えに入れてキャスティングしていますね。チェルフィッチュは二か所の会場で上演するし、どっちも見たいという気持ちが。
鈴木 作品が日々生成していくのではという期待から、私もどちらも行きます。
カトリ 私も。新作は1年以上ぶりですからね。前売りは完売ですが、当日券やキャンセルもありますから、ぜひ見ていただきたいですね。

徳永 モダンスイマーズの「凡骨タウン」。2008年の「夜光ホテル」の続編です。
カトリ あれはいくらでも広がりそうな話でした。かつての下町の不良たちが再結集するんです。かっこいい話でしたね。
徳永 男のロマンの結集という感じで。
カトリ あの時の古山憲太郎の鼻水ね。かつては一番荒っぽかったんだけど、ジャンキーになってしまって。最後の一番いいところで鼻水がツーっと。それが毎日必ずそのタイミングで出るっていう(笑)。
徳永 前回は出演者も全員男性で、ひたすら男臭い話でしたが、今回は美人女優が二人、緒川たまきさんと文学座の佐古真弓さんが出て、しかも前回の萩原聖人さんに加え、千葉哲也さん、辰巳智秋さんも。男優陣に関して言えば全方位型。
カトリ 二枚目から不良から廃人から(笑)
徳永 「夜光ホテル」の続編を書くと聞いたときにはこういう顔ぶれになるとは思わなかった。あの話がどう発展するか、楽しみです。
2つ目は「イーピン光線」。「城山羊の会」は作・演出の山内ケンジさんとプロデューサーの城島和加乃さんのユニットです。城島さんはE-Pin企画というプロダクションをやっているんですが、その十周年企画ということで、所属の俳優さんが全員出る本を山内さんが作・演出されます。山内さんがふだん城山羊の会で書いているものは、ひと組の男女のひずみが周囲にひび割れを広げていき、洪水が起きるような話ですが、それよりもお祭りっぽい感じになるんじゃないかな。出演が、E-Pin企画所属の九十九一さん、KONTAさんなど。
鈴木 岡部たかしさんは、昨年10月の五反田団の「生きてるものはいないのか」の再演でのマスターの役も記憶に残っていますね。
カトリ 牧田明宏さん(プロデュースユニット「明日図鑑」の作・演出)も所属俳優なんですね。
徳永 もともとE-Pin企画は「夏のミステリーナイト」といった、演劇仕立ての謎解きをホテルで行う企画を手掛けているんですね。とても人気があるんですが、牧田さんはその作家として参加したのがきっかけで所属することになりました。
あと1本は「ナイン・フィンガー Nine Finger」。池田扶美代さんはベルギーのダンス・カンパニー「ローザス」のメンバーです。内容もですが、これはチラシの写真が圧倒的に格好よくて惹かれます。泥まみれ、汗まみれで。
鈴木 チラシを初めて見た時は、これ血かと思いました。迫力ありますね。
徳永 ダンスと音楽と演劇の融合のようですが、内容は、アフリカの少年兵の話から派生したものということです。

鈴木励滋さん鈴木 私の1本目は、「リズム三兄妹」。岡崎藝術座主宰の神里雄大さんは毎回「何かあるだろう」と期待させてくれます。私が最初見に行ったときは俳優を神田川で泳がせてました(笑)。今回は再演ですが、初演を体調不良で見逃している上に、気になって仕方のない三条会の橋口久男さんも出ますし、楽しみにしています。
2本目はモモンガ・コンプレックス「ウォールフラワーズ。」です。去年(キラリ☆ふじみを拠点とする)キラリンク☆カンパニーとして1作目の「初めまして、おひさしぶり。」がとてもよかった。構成もよくて、ダンス作品としても面白かったので、今回も期待しています。
徳永 主宰の白神ももこさんはこの先がとても楽しみな人ですね。
鈴木 私が最初にモモンガを見たのは、2006年の「横浜ダンス界隈」。街の中で踊って。街の住人のような衣装の人もいて、どこまでがメンバーなのかわからない。確か20人ぐらいだったかな。かっこうよかった。それ以来ずっと見ています。白神さんはどんどん吸収していく人ですね。まだまだいろいろ隠し持っていそうで、この先どこまで行っちゃうかわからない。
徳永 「不思議ちゃん」なのかと思うと、それだけでは終わらない。賢さ、たくましさ、大人っぽさも感じます。
カトリ キレ味がありますね。
鈴木 もう1本は「We dance」という企画ですね。これは特定の作品ではなく、すでにいろいろなワークショップをやっていて、その報告やら、派生してできたものを発表などするようです。5分とか10分の短い企画が横浜市開港記念会館のあちこちの部屋で盛りだくさんです。観客はパスを買って自由に部屋を回って見ていきます。ダンスや演劇の「おー、こんな人が」という人たちがさりげなくたくさん出ています。個人的には、遠田誠さんや山賀ざくろさん、高須賀千江子さんなど見なくちゃなと思っています。「子連れダンサー井戸端会議」なんて企画もあって、これは子供のいる女性ダンサーが出ます。面白そうですね。
カトリ どれを見にいこうか、迷うよね。たった2日間だから。

カトリヒデトシさんカトリ 私は役者を中心に見ていきたいと先月宣言したので、まずはこれ。monophonic orchestra、立ち上げです。monophonic orchestraは箱庭円舞曲の須貝英くんのユニット。柿喰う客の玉置玲央と親友で、以前玉置が作ったユニット「カスガイ」で須貝くんが主演して、今度は須貝のユニットで玉置が主演するっていう。本当に親友なんですね。今回はほかにもゲキバカの西川康太郎、ホチキスの村上直子と、好きな役者ばかり出る。全然違うカンパニーの役者どうしが仲が良くて、交流を持っているというのはすごく面白い。絶対行かないと。今月はこれ1本でもいいぐらい。
と言いつつ2本目もあります(笑)。DULL-COLORED POP主宰の谷賢一の単独企画公演。これまで一緒に仕事をしたことがない役者にオファーをして、役者が「自分がどういう役をやりたいか」設定を指定してくるっていう。わけわかんない(笑)。だから「当て書き」の逆で「当てられ書き」。しかも「僕が一番うまくタイニイアリスを使えるんだ!」と企画発表のサイトにあって…、どれだけ自信家なんだよって思いますね(笑)。役者陣も面白い。北京蝶々の鈴木麻美、犬と串の鈴木アメリ、藤尾姦太郎、堀雄貴、アロッタファジャイナの安川結花…。
徳永 DULL-COLORED POPを休止したと思ったらこんなことを(笑)。
カトリ DULL-COLORED POPをやらないというだけで、本人は全然休止していないですね。「仕事ください」なんてチラシまいてたんだけど、脚本提供や小説やら、ぱんぱんに仕事入っているみたいですよ。
それから3本目は、京都の劇団ニットキャップシアター。90年代初頭までの夢の遊眠社の系譜って言えばいいのかな。東京で言えばカムカムミニキーナの雰囲気。面白くって、いろいろ豪華で、人情味にあふれていて。最後の落とし方もきれい。去年、観客の拍手によって話の流れが変わるというのをやっていました。出演している澤村喜一郎さんは去年、KUNIO06の「エンジェルス・イン・アメリカ-第1部 至福千年紀が近づく」で、自分がゲイであることを認められないためにボロボロになっていくという難しい役を見事に演じていたんですが、本拠のニットキャップではラクダの上下、股間にティッシュペーパーの箱を挟んで「二代目サルマタンX」ですから…(笑)。
徳永 私は一度、ニットキャップの東京公演を見ているんですが、その時はそんなにいい役者さんだと感じませんでした。
カトリ 客演ではカッコよく、本体ではくだらなく(笑)。
(初出:マガジン・ワンダーランド第175号、2010年1月27日発行[まぐまぐ!, melma!]。購読は登録ページから)

【出席者略歴】
カトリヒデトシ(香取英敏)
1960年、神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、公立高校勤務の後、家業を継ぐため独立。現在は、企画制作(株)エムマッティーナを設立し、代表取締役。ウェブログ「地下鉄道に乗って-エムマッティーナ雑録」を主宰。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ka/katori-hidetoshi/
鈴木励滋(すずき・れいじ)
1973年、群馬県高崎市生まれ。栗原彬に政治社会学を師事。障害福祉の現場で喫茶店の雇われマスターをしつつ、テルテルポーズやダンスシードなどで、演劇やダンスの批評を書いている。ウェブログ「記憶されない思い出」を主宰。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/sa/suzuki-reiji/
徳永京子(とくなが・きょうこ)
1962年、東京都生まれ。演劇ジャーナリスト。小劇場から大劇場まで幅広く足を運び、朝日新聞劇評のほか、『シアターガイド』『FIGARO』『花椿』などの雑誌、公演パンフレットを中心に原稿を執筆。東京芸術劇場運営委員および企画選考委員。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ta/tokunaga-kyoko/


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