3人で語る「2010年1月はコレがお薦め!」

今回からの新企画として、カトリヒデトシさん、鈴木励滋さん、徳永京子さんの3人に、来月のお薦めの3本を語り合っていただきます。それぞれの好きなジャンルや傾向がクロスオーバーすることで、連鎖反応的にさまざまな作品への興味が誘発されればという趣向。まずは2010年の1月の舞台について。

【3人のお薦め】
★カトリヒデトシさん
・「ロング・ミニッツ-The loop of 7minutes-」(FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー・プロデュースより) エビス駅前バー(2010年1月22日-28日) http://blog.livedoor.jp/ff_e/
・快快(faifai)の「インコは黒猫を探す」(「ネクスト・ジェネレーションvol.2」より)(2010年1月20日-1月22日) http://www.faifai.tv/
・ブルドッグキングヘッドロックvol.18 女々しくてシリーズ「黒いインクの輝き」 (2010年1月7日-18日) http://mobile.bull-japan.com/index.cgi
★鈴木励滋さん
・三条会「S高原から」下北沢ザ・スズナリ(2010年1月15日-18日) http://homepage2.nifty.com/sanjokai/
・FUKAIPRODUCE羽衣「あのひとたちのリサイタル」(「ネクスト・ジェネレーションvol.2」より)シアタートラム(2010年1月30日-31日) http://www.geocities.jp/hagoromo_hukai/
・黒田育世×飴屋法水「ソコバケツノソコ」 シアタートラム(2010年1月15日-17日) http://batik.jp/
★徳永京子さん
・冨士山アネットproduce「EKKKYO‐!」東京芸術劇場小ホール1(2010年1月14日-17日) http://fannette.net/next/
・黒田育世×飴屋法水「ソコバケツノソコ」 シアタートラム(2010年1月15日-17日)http://batik.jp/
・TPT「キレイじゃなきゃいけないワケ」 ザムザ阿佐谷(2009年12月29日-2010年1月17日) http://www.tpt.co.jp/whatson/index.html

徳永京子さん徳永京子 私は1本目に、冨士山アネットproduce「EKKKYO‐!」。
鈴木励滋 これは、ダンスや身体系パフォーマンスをあまり見たことのない人にもお薦めできますね。
徳永 主宰の長谷川寧さんがさまざまな集団を集めるというスタイルのこの企画は、これが2回目の公演で、会場は東京芸術劇場小ホール2。2008年9月にザ・スズナリでやったものを野田秀樹さんがご覧になり、芸術監督になって若手劇団を呼ぶ時に名前が挙がったという経緯があります。今回は、冨士山アネットのほか、ままごと、ライン京急、CASTAYA Project、岡崎藝術座、モモンガ・コンプレックスとラインナップも強力です。
鈴木 ままごと、岡崎藝術座、モモンガと、「キレなかった14才 りたーんず」に出た6組のうち3組も出てるわけですね。
徳永 〝越境〟というコンセプトで、面白い人たちを集めたらこうなったということなんでしょうか。
鈴木 ジャンル的には、吾妻橋ダンスクロッシングよりは演劇寄りですね。
カトリヒデトシ 最近の傾向で、演劇と身体パフォーマンスが、緩やかにいい関係になっていってる表われかな。かつては、演劇は演劇、ダンスがダンスに分かれていたけど、ここ数年、お互いに意識し合って、歩み寄ったり参考にし合ったり、非常にいい感じになってきているから。
徳永 冨士山アネットはダンスカンパニーですけど、長谷川さんがまず戯曲を書いて、それを動きに変換しているので、観ていると会話が浮かんでくるダンスなんです。コンテンポラリーダンスを見ていて、時々、置いてかれる気持ちになったりするんですけど、そんな作り方をしているからか、ここはそういうことが少ない。あと、格闘技のウォーミングアップをとりいれたストレッチをするらしいんですが、動きが格闘技っぽいんですよね。
カトリ ある種下品な動きや、ケンカしてるようなとこがあって、そこがまた面白い。
徳永 体の接着面積がとても大きいんです。話が飛びますが、アニマル浜口と浜口京子の親子って仲がいいですよね。普通、30歳過ぎの女性はあんなに父親と親密にしないのに、100%信頼している感じでしょう? あれって、小さい時から親子でレスリングをやってるからじゃないでしょうか。思春期でも反抗期でも、お父さんとしょっちゅう体をくっつけて練習していて、どっちがどっちの汗かわからないような時間を共有してる。そうすると、ああいう風になれるのでは(笑)と思えて、これはレスリング効果だと。冨士山アネットの接着面積の大きさもレスリングの効能なのかなと感じます。
2本目は黒田育世×飴屋法水「ソコバケツノソコ」です。黒田さんは、この前の「花は流れて時は固まる」ではじめて拝見しました。女っぽいんですけど、ゴツゴツ音がしそうな感じが印象的。飴屋さんは、東京グランギニョルの最後の方とM.M.M.、そして今年に入って復活されてからを見ています。どう考えても、今、ノリにノッてる2人なので、どんなことが起きるんだろうという興味ですね。あと、飴屋さんは吾妻橋ダンスクロッシングでもたいへん面白かった。普通のダンサーの文脈ではないところで構成されるので、純肉体派の黒田さんがどう反応されるのか楽しみです。
3本目は、TPT「キレイじゃなきゃいけないワケ」。TPT to THE OTHER PLACE-2009というシリーズで、私はまだ見ていないのですが、いい評判が聞こえてきます。演出の千葉哲也さんは、もともといい役者さんですが、演出経験のあとにさらによくなったような気が。互いの仕事がフィードバックし合っているとしたら、期待が持てると思います。作者のニール・ラビュートは、アメリカで一番多作と言われる若い劇作家で、等身大な感じの戯曲を書くそうなんです。この作品はカップルが主人公の、顔の美醜を巡る話で「ブラックコメディ、でもラブストーリー」とうたっています。いつも登場人物が多いTPTにしては、今回は4人しかいません。一部ダブルキャストですけど。
カトリ TPTも、ホームだったベニサン・ピットがなくなったけど、がんばってほしいね。

鈴木励滋さん鈴木 私はまず、三条会「S高原から」。ここは、千葉大出身者で作った、千葉を中心に活動している劇団。演出の関美能留さんは、演出のみで劇作はしません。原作に近代のものだけを取り上げてきた関さんが、はじめて扱った現代ものが、平田オリザのこの作品。2005年に五反田団の前田司郎がプロデュースした、「ニセS高原から」というアゴラ劇場での企画で、前田とポツドールの三浦大輔、蜻蛉玉の島林愛、そして関と4人で集まって、それぞれの「S高原」を演出したんです。アゴラでは、青年団のセットのままだったんですが、原作をもっともいじってたのが関さんだったと思います。テキストを一番ぶち壊したのに、平田さんが書いて伝えようとした雰囲気が一番伝わってきた。深刻なシーンを、戯曲ではその場にいない登場人物がそこにいて見てるという形をとったりして、やりすぎとも言えるのだけれど、死んでいくという不条理なことが、患者以外の登場人物、さらに見ている皆にも必ずあるということが伝わって、とてもよかったんです。これは関さんの作品の中でも、私がもっとも好きなもの。でも彼のことだから、もちろん同じ手では来ないでしょうね。
徳永 これはスズナリでやるんですね。見に行きやすい。
鈴木 ええ。ただ三条会は、確実に狭いとこでやる方が面白くて、千葉のアトリエ公演でこそ本領を発揮すると思うんですが、今回は期待しています。
次は、シアタートラムの「ネクスト・ジェネレーションvol.2」の中から、FUKAIPRODUCE羽衣「あのひとたちのリサイタル」。これも再演です。プロデュースは深井順子さん。演出の糸井幸之介さんは、音楽から美術から振付までこなす。妙なミュージカル、〈妙ージカル〉というのをやっています。歌はうまい人も下手な人もいるんですが、この前なんかライブハウスでライブまでやっちゃった。それも、くだらなくて下品な歌ばっかりなんですよ(笑)。
カトリ その割に美術がきれい(笑)。
鈴木 でも安っぽい(笑)。全体的にチープなんだけれど、ただそこに身をゆだねていると、突き抜ける瞬間、「性」というものが「生」にまでつながる瞬間があるんですよ。きっと、そういうところまで突き抜けようとしてやっているでしょうね。そんなふうに響く時がある。響かないまま、何だかなあ…という公演もあるんですけど。とにかく、アホみたいに動いて熱唱して、最前列などは汗が飛んでくる。そういうのが駄目な人は駄目かもしれないけど、僕はそういう無駄にアツいのがいいんですよね。
もう1本は、徳永さんとカブりますが、黒田育世×飴屋法水「ソコバケツノソコ」。黒田さんは、ここ1年くらい、羊屋白玉さんや作家の古川日出夫さんなどと組み、テキストを意識的に取り入れたりして、急速に言葉というものを獲得しています。そのことでこれから先、作り手としてもっとすごい作品を作っていくと思います。同時に、ダンサーとしての黒田さんもとても好きで、「モニカモニカ」は、岡山まで見に行きました。ギターの伴奏のみで踊るのですが、憑依系と言っていいほどすばらしい。もとは商店街の従業員用宿舎だった上之町會舘という所でやって、最後は、お稲荷さんの社の前で踊る。年齢の問題で、ダンサーとして前ほどは…というイジワルな人もいるのですが、そういうことはあまり意味がなくて、要は突き抜け方じゃないかな。あれで感動しなかったという人は頭で見てるんじゃないでしょうか。でも、黒田さん自身も身体的な限界はわかってると思いますよ。この前の「花は流れて時は固まる」は、楽日も見に行きましたが、最後は足がガタガタになるまでやりましたから。今回は、飴屋さんと存分にやってほしいですね。

カトリヒデトシさんカトリ 私は、これまでの「カトリ式小劇場の歩き方-来月何をみるか」で、舞台を中心に書いたので、この新企画では、役者をほめながら作品を挙げていきたいと思ってます。
まずは、酒巻誉洋(elePHANTMoon)の出るFOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー・プロデュースのSide-B「ロング・ミニッツ-The loop of 7minutes-」。酒巻は客演なんだけど、彼の客演で出てる時のパワーが大好き。
鈴木 いろんなところにひっぱられますよね。世界名作小劇場「初恋」にも出てました。オカマであることを公言して、ゲイバーを上手く経営しているオカマの役。
カトリ 彼の場合、キャラクターを演じてるんじゃなくて、その向こうに酒巻の人格を感じられるところが好きですね。バナナ学園純情乙女組の「おはぎライブ」のビデオを見ると、藤本美貴の「ロマンティック 浮かれモード」なんかを、コスプレして汗を振り絞り、とり憑かれたように踊る。でも酒巻がやってるんだというのがよくわかって、すごく力を感じます。
鈴木 最初は、いわゆるうまい役者なのかと思ってたんだけど、戯曲を解釈して理解する力がかなりある人なんでしょうね。
カトリ Side-A「ゆらぎり」も、脚本・成島秀和(こゆび侍)、演出・古川貴義(箱庭円舞曲)で、キャストに和知龍範、岩本えり(乞局)などがいて期待が持てます。エビス駅前バーは、30人入るかどうかのバーですから、ライブ感満載だと思います。
次に、鈴木さんも挙げた「ネクスト・ジェネレーションvol.2」のうち快快(faifai)の「インコは黒猫を探す」。山崎皓司(快快(faifai))が大好き! 快快(faifai)というとどうしても、篠田千明の作品と野上絹代の演出がすごいと言われるけど、そのアイデアを実現しているのはキャスト陣。特に山崎や天野史朗といった男たちがいなかったら、演技面、身体面を支えられない。これに出る板橋駿谷も面白い。まだ日大芸術学部を卒業したばかりくらいで、筋肉を見せるだけといったタイプなんだけど(笑)、カッコいい。
鈴木 菅原直樹、師岡広明といった人たちも出ますね。僕は菅原さんが出れば何でも見に行きますよ。
カトリ 墨井鯨子(乞局)も出てる。ひと癖ある人ばっかり。菅原直樹は捕まえどころがない感じがいい。最近、役者としての強度が感じられる人が好きなんで、そういう人たちが出ているこの作品を選びました。山崎に話を戻すと、彼は、舞台のどこかでブチ切れるんですが、その瞬間がすごい。何も考えてなくて、猿になって暴れちゃうようなところがあって、そこの肉体の強さ、物怖じしない開き直りが好きですねえ。
最後に、津留崎夏子の出る、ブルドッグキングヘッドロックvol.18「黒いインクの輝き」。今年、一番びっくりさせられた女優が彼女。去年、世界名作小劇場で見た時には、まったく印象が薄かったのに、今年、世界名作小劇場「初恋」、箱庭円舞曲「極めて美しいお世辞」などに出て、どうしたのかというくらいきれいになった。目が吸引力を持ち始めて、輝いてて、かわいい。古川の台本で「このへんをコチャコチャッとして」というセリフがあるんだけど、その目と雰囲気で完全にもっていかれました(笑)。3本とも、ふわふわとしてとらえどころのないキャラで、それが生きたのかもしれない。今度大きめのカンパニーに移ったので、また面白くなるかもという興味がありますね。

3人で語る「2010年1月はコレがお薦め!」
【写真は右からカトリヒデトシさん、鈴木励滋さん、徳永京子さん、司会の大泉尚子(編集部) 禁無断転載】

-最後になりますが、皆さんは来年の小劇場演劇に何を期待しますか?
カトリ 今年と同じく、東京外演劇にこだわって、地方に見に行きます。東京の外でどんどん活動してほしいし、そういうやつらを応援したい。
鈴木 これまで、北村明子、東野祥子、黒田育世という、ビックリさせてくれる人たちに出会ってダンスを見続けてきているので、ダンスに限らず新たにすごい人に出会えたらと思います。
徳永 今は、話題の若手というとアゴラ系に一極集中的な状態なので、非アゴラ系の演出家にも、もっと出てきてほしいと思います。アゴラに優秀な方が揃っているのはわかるんですけど、このままの状態が続くと、活動する場所やスケジュールの循環が画一化されてしまいそうな気がして。それと少し関連しますが、助成金対策や、演劇を教育や地域と絡めるという方向性になると、長期的な計画で活動できる集団が残っていきますよね。でも演劇は元来、初期衝動から発表までが短くて済むことが大きな強み。めちゃくちゃなことをやってくれる人がもっと出てきてほしいし、そういう人にがんばってもらいたいですね。
-どうもありがとうございました。
(初出:マガジン・ワンダーランド第172号、2009年12月30日発行[まぐまぐ!, melma!]。購読は登録ページから)

【略歴】
カトリヒデトシ(香取英敏)
1960年、神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、公立高校勤務の後、家業を継ぐため独立。現在は、企画制作(株)エムマッティーナを設立し、代表取締役。ウェブログ「地下鉄道に乗って-エムマッティーナ雑録」を主宰。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ka/katori-hidetoshi/
鈴木励滋(すずき・れいじ)
1973年、群馬県高崎市生まれ。栗原彬に政治社会学を師事。障害福祉の現場で喫茶店の雇われマスターをしつつ、テルテルポーズやダンスシードなどで、演劇やダンスの批評を書いている。ウェブログ「記憶されない思い出」を主宰。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/sa/suzuki-reiji/
徳永京子(とくなが・きょうこ)
1962年、東京都生まれ。演劇ライター。小劇場から大劇場まで幅広く足を運び、『せりふの時代』『シアターガイド』『weeklyぴあ』などの雑誌、公演パンフレットを中心に原稿を執筆。
・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ta/tokunaga-kyoko/


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください