青年団「眠れない夜なんてない」

◎夢見る力に何かができるか?
大泉尚子

「眠れない夜なんてない」公演チラシ舞台は、南国リゾート地のホテルのロビーのようなしつらえである。バックには椰子系の観葉植物が置かれ、ソファと椅子に男と女がひとりずつ座っている。一人の女が現れて、何気なく言葉をかけ合い、暗転もないまま芝居は始まるともなく始まっている。

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「かもめ・・・プレイ」(エンリケ・ディアス演出)

◎作品と現実との距離を融解 『かもめ』を逸脱、ときに深く読み込む  高橋宏幸(演劇批評)  チェーホフの『かもめ』が、『ハムレット』を下敷きにして作られていることはよく言われている。『ハムレット』の台詞が引用される行など … “「かもめ・・・プレイ」(エンリケ・ディアス演出)” の続きを読む

◎作品と現実との距離を融解 『かもめ』を逸脱、ときに深く読み込む
 高橋宏幸(演劇批評)

 チェーホフの『かもめ』が、『ハムレット』を下敷きにして作られていることはよく言われている。『ハムレット』の台詞が引用される行などは直截的で目につくが、他にも母アルカージナとその息子トレープレフが親子の愛情と苛立ちを爆発させるさまは、ハムレットとガートルードの関係を引き移しているといえるし、母を奪い取って王となったクローディアスは、同じように母の愛人である作家トリゴーリンの位置と重なる。もちろん、人物の対比関係を挙げれば他にもまだまだ共通点はある。また、構造として『かもめ』も『ハムレット』のように、劇中劇として舞台の上演が挿入されて、演劇そのものの形式を問題にする。それはメタシアターとして、作品および演劇という形式性を自己言及する視点を、あらかじめ作品に組み込んだ機能を有しているといえるだろう。

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第2期ワンダーランドを始めるにあたって

 暑い日が続きますが、お元気ですか。  ワンダーランドのメールマガジン版が100号を迎えたのが6月末。それから2ヵ月あまり、早めの夏休みを過ごしていました。この間、2004年のスタート時から一緒に活動してきたメンバーと、 … “第2期ワンダーランドを始めるにあたって” の続きを読む

 暑い日が続きますが、お元気ですか。
 ワンダーランドのメールマガジン版が100号を迎えたのが6月末。それから2ヵ月あまり、早めの夏休みを過ごしていました。この間、2004年のスタート時から一緒に活動してきたメンバーと、これからどうするか話し合いました。寄稿していただいた何人かの筆者とも意見交換しました。その結果、第2期ワンダーランドを次の通り始めることにしました。

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劇団青羽「足跡のなかで」

◎「私たち」を描く申し分ない同時代劇
西村博子

劇団青羽「足跡のなかで」公演チラシ舞台の冒頭、憂いを含んだピアノ曲。そのリズムに乗って町の人々が列をなしてソ、ソ、ソ、そ、そ、そと、やや漫画チックに走りこんで来て舞台後方や両袖、それぞれ所定の位置につく。と、つづいて青格子のシャツ、スラリと背の高い、ちょっと憂いを含んで美しい青年(李憲在)が中央の小さな空き家、米屋という看板のある廃屋にすうっと立つ。これはイクゾ!と思った。そしてその予感はみごとに的中した。

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toi presents 「あゆみ」

◎演劇の「交換可能性」と「単独性」
松井周(サンプル主宰、劇作家・演出家・俳優)

「あゆみ」公演チラシ「私はどこにでもいる他の誰かと変わらないありふれた存在だ」という感覚は、誰でも感じられることのように思える。これを仮に「交換可能性」と呼ぶ。また、「私はただ一人であり、他人もそれぞれ唯一の存在だ」という感覚も誰でも感じるであろう。これを「単独性」と呼ぶ。この二つは相反する概念のようでありながら、演劇においては実はあまり矛盾しないかもしれない。

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三条会「ひかりごけ」

◎歴史と作品の「分からなさ」を引き受ける 7年間の進化から浮かぶ表現  志賀亮史(「百景社」主宰)  5月3、4日栃木県那須町で行われた「なぱふぇす2008」で三条会「ひかりごけ」を観た。三条会が「ひかりごけ」を上演する … “三条会「ひかりごけ」” の続きを読む

◎歴史と作品の「分からなさ」を引き受ける 7年間の進化から浮かぶ表現
 志賀亮史(「百景社」主宰)

 5月3、4日栃木県那須町で行われた「なぱふぇす2008」で三条会「ひかりごけ」を観た。三条会が「ひかりごけ」を上演するのは、この「なぱふぇす2008」で10回目である。そして私が「ひかりごけ」を観るのも10回目。実を言うと、私は運のよいことに10回すべてのバージョンを観ているのである。ただまあ、正確に言うと海外公演(中国、韓国、台湾)はさすがに現地では観ていない。稽古場で観させてもらったのではあるが。

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Monochrome Circus「The Passing01-03 WASH」

◎内と外が激しく渦巻くイメージ 全体を貫くのは意味世界かダンスか  藤原央登 (劇評ブログ「現在形の批評 」主宰)  己が身体を拠り所に世界のある断面を切り取り、そこに全てを凝集し且つ抽象化を施して、舞台上に書き付ける。 … “Monochrome Circus「The Passing01-03 WASH」” の続きを読む

◎内と外が激しく渦巻くイメージ 全体を貫くのは意味世界かダンスか
 藤原央登 (劇評ブログ「現在形の批評 」主宰)

 己が身体を拠り所に世界のある断面を切り取り、そこに全てを凝集し且つ抽象化を施して、舞台上に書き付ける。パフォーマンスやコンテンポラリーダンスの担い手とはいわば身体を一つの焦点に、世界全体のバイアスを進んでまるごと引き受ける者のことを差す。時として文字(台詞)の意味内容から構成されるテクストが紡ぎ出す文脈以上の直截性を持ち得るのは、身一つで茫漠とした荒野にそれでも立ちつくそうとする意志を滲みだす身体の純化された姿があるからだ。その身体が書き記す様々な手つきが批評となるからこそ、「同時代」と冠されたことの価値へと接続されるのだろう。京都を拠点に海外でも活動するモノクロームサーカスの公演を、この点から即してみると、いまひとつ納得し難いように思われた。

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演劇集団円「田中さんの青空」

◎青空よ、広がれ 一人芝居の功罪
因幡屋きよ子(因幡屋通信発行人)

「田中さんの青空」公演チラシ「この人、痴漢です!」
暗闇を引き裂くように女の声が響く。明かりがつくと、なぜかテーブルの上に若い女性(一人目の女/乙倉遥)がからだをねじ曲げて立っている。混雑した通勤電車の中で、誰かに触られたらしい。その犯人を逃がすまいと必死になっているのである。彼女以外は誰も登場しない。一人芝居である。土屋理敬の新作『田中さんの青空』は、冒頭から予想がつかなくなった。

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ハポン劇場「人喰★サーカス」

◎高架下の万華鏡空間 生命の継承、芸の継承
鳩羽風子(新聞記者、演劇評論)

「鶴舞高架下に、サーカス小屋現る!!」。そんなコピーが踊る公演チラシを目にした。寺山修司が好きで演劇にはまった私は、すぐに「観に行ってみよう」と思った。チラシからして、誘い込む不思議な引力があった。

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急な坂スタジオプロデュース「Zoo Zoo Scene(ずうずうしい)」

◎虚実がバランスよく混在 動物園で「動物園物語」
藤田一樹(ウェブログ「The review of Kazuki Fujita」主宰)

「Zoo Zoo Scene」公演チラシ「動物園で動物園物語」-。そんな夢のような企画に多くの人が期待を抱いたのではないだろうか。舞台芸術の創作活動の場として使用される急な坂スタジオと、その目の前に位置する野毛山動物園とのタイアップとして発案された今回の公演。創作者として白羽の矢がたったのは、「誤意訳」というスタイルで翻訳劇の新たな可能性を広げている中野成樹氏。急な坂スタジオのレジデンシャル・アーティストを務めながら、「中野成樹+フランケンズ」という翻訳劇専門のカンパニーを主宰している注目の演出家だ。彼が上演戯曲に選んだのは、エドワード・オールビーの代表的な不条理劇「動物園物語」。今回は企画の話題性だけでなく、この戯曲の新しい方向性を明確に示したという意味で、非常に意義深い上演だった。

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