パスカル・ランベール作・演出「世界は踊る~ちいさな経済のものがたり~」(SPAC版)

◎踊る世界の足元を示す
 柳沢望

「世界は踊る~ちいさな経済のものがたり~」公演チラシ パスカル・ランベール作・演出の「世界は踊る~ちいさな経済のものがたり~」は、2010年1月にフランスで初演された時にも一般市民多数が参加して上演されたということだが、富士見市、静岡市、宮崎市の三ヶ所で行なわれた日本での上演は、それぞれの地域から多数の一般市民が舞台に参加、さらに、多田淳之介(富士見)、大岡淳(静岡)、吉田小夏(宮崎)の三人が、それぞれの地で共同演出者として参加し、別々のバージョンを上演するという意欲的な企画だった。
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連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第4回

加藤弓奈さん(急な坂スタジオ・ディレクター)
◎人を育てる場所の力

 急な坂スタジオは京浜急行線日ノ出町駅から徒歩5分。文字通り急な坂を上り、横浜市中央図書館を過ぎた先にあります。道路を挟んだ向かいが野毛山動物園です。演劇活動に欠かせない拠点として2006年からめざましい活動を展開してきました。最大2ヵ月もの長期利用が可能な稽古場であり、レジデント制度でアーチストを育てる磁場であり、人と情報のネットワークを形成するプラットホームでもあるという秘密はどこにあるのか。ワンダーランドに鋭い劇評を寄稿している高橋宏幸さんと一緒に急な坂を上って、スタジオのキーパーソンを訪ねました。(編集部)

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渡辺源四郎商店/中学生演劇体験ワークショップ発表公演「ココロとカラダで考えるいじめと正義~7日でつくる『ともことサマーキャンプ』~」

◎地域の演劇 可能性を開く
 カトリヒデトシ

中学生演劇体験ワークショップ発表公演チラシ みちのくに畑澤聖悟という巨人がいる。
 高校教員にして渡辺源四郎商店の店主(=主宰)。高校では年により演劇部も指導し、全国高校演劇発表会では99年「生徒会」で優秀賞・文化庁長官賞、05年「修学旅行」で最優秀賞・文部科学大臣奨励賞・創作脚本賞、08年「河童」では最優秀賞、今年は昨年度指導した弘前中央高校「あゆみ」で優秀賞を受賞。NHKで9月に放映された「青春舞台2010」をご覧になった方もいるだろう。06年には「修学旅行」で韓国青少年演劇祭に招待され、ソウル公演も行っている。劇作家としての彼はギャラクシー大賞ラジオ部門最優秀賞受賞をはじめ、日本民間放送連盟賞ではラジオエンターテイメント部門・ラジオ教養番組部門で最優秀・優秀賞を数年にわたり受賞し、平成11年度(99年)文化庁芸術祭ではRAB青森放送 制作の「シュウさんと修ちゃんと風の列車」で ラジオドラマ部門大賞を受賞している。
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FUKAIPRODUCE羽衣「愛死に」

◎衝撃の「真面目キス」 愛と死のはざまに
 鈴木励滋

「愛死に」公演チラシ 昨年の野田秀樹の芸術監督就任で、東京芸術劇場が発信型へと大きく転換したことを強く印象付けた “芸劇eyes”。「芸劇が注目する才能たちを紹介する」企画として、ハイバイ・五反田団・グリング・冨士山アネット・モダンスイマーズという、「若手」でも「小劇場を中心に」でもなくなりつつある、いわば必勝体制での第一弾を手堅く成功させた。そして、今年は快快や劇団、江本純子に混じってFUKAIPRODUCE羽衣が参戦という攻めの姿勢である。

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連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第3回

上田美佐子さん(シアターXプロデューサー・芸術監督)

 東京・両国の劇場シアターΧは1992年のオープンから意欲的な企画・プログラムを進めてきたことで知られています。ポーランドのヴィトカッツィやチェーホフ、ブレヒト、つかこうへい、花田清輝、郡司正勝らの作品を精力的に上演してきました。その成り立ち、芸術創造の理念、そして経営基盤などはあまり知られているとは言えません。そこでシアターXを尋ね、プロデューサー・芸術監督の上田美佐子さんに質問をぶつけました。返ってきた言葉は、真摯かつ率直でした。(編集部)

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ONEOR8「絶滅のトリ」

◎安住の地の終わり 共振する孤独
 金塚さくら

「絶滅のトリ」公演チラシ 波の音が聞こえる。それから鳥の声。正面の大きな窓の向こうには、高い空と深い山。雄大な自然に囲まれ外界と切り離された、ここは絶海の孤島。そこには青い羽の珍鳥、オオカンチョウが棲むという。
 絶滅の危機に瀕したそのトリを、看視し保護するのが彼らの仕事である。その個体数を少しでも殖やし、滅びの恐れから遠ざけることがその施設の目的なのだという。
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【レクチャー三昧】豊島区三昧 (2010年11月)

 ついにフェスティバル/トーキョー10が開幕しました。猛暑から秋をすっとばしていきなり冬みたようだし、果たして乗り切れるのか不安です。このひと月は池袋に住みたいですね。(高橋楓)
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「初日レビュー2010」第5回 イキウメ「図書館的人生Vol.3 食べもの連鎖」

「図書館的人生Vol.3 食べもの連鎖」公演チラシ 「身近な生活と隣り合わせに現れる異界」を、意表を突く着眼と巧みなストーリーで舞台化するイキウメ。今回は短編を積み重ねる図書館シリーズの第3弾。テーマは「食べもの連鎖」です。その舞台の舌触りと味わいはどうだったのか。立ち会った6人が五つ星と400字でレビューします。掲載は到着順。(編集部)
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3人で語る「2010年11月はコレがお薦め!」

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「月と牛の耳」公演チラシ
「月と牛の耳」公演チラシ

カトリヒデトシさんのお薦め
劇団競泳水着「りんごりらっぱんつ」(サンモールスタジオ11月12日‐23日)
イキウメ「図書館的人生Vol.3」(シアタートラム10月29日‐11月7日、HEP HALL11月16日~20日、アステールプラザ11月12日、西鉄ホール11月23日)
渡辺源四郎商店×東京デスロックカンパニー「月と牛の耳」(11月19日‐23日アトリエ・グリーンパーク、12月3日‐5日富士見市民文化会館 キラリ☆ふじみ

鈴木励滋さんのお薦め
dracom「事件母」(シアターグリーンBOX in BOX THEATER11月18日‐21日)F/T10
岡崎藝術座「古いクーラー」(シアターグリーンBIG TREE THEATER11月19日‐28日)F/T10
FUKAI PURODUCE羽衣「も字たち」(新宿ゴールデン街劇場11月9日‐25日)

徳永京子さんのお薦め
・生活舞踏工作室「メモリー」(にしすがも創造舎11月26日‐28日)F/T10
・「DRAMATHOLOGY/ドラマソロジー」(東京芸術劇場11月26日-28日)F/T10
マームとジプシー「ハロースクール、バイバイ」(シアターグリーンBASE THEATER 11月24日-28日)F/T10

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青年団「砂と兵隊」

◎女優・村井まどかの微妙に歪む唇に、平成のロマンチック・アイロニーを見た
 高橋 英之

「砂と兵隊」公演チラシ兵士・西川 「いや、そりゃ、まあ、砂漠ですから」(閉じられた唇)
新婚・妻  「同じ砂漠じゃん」(開かれた唇)
家族・次女 「全部、砂漠じゃん」(微妙にゆがんだ唇)

 うっかりしてた。日本がイラクに派兵をしたことなどすっかり忘れてしまっていた。いや、もちろん、うっかりなどという表現は不適切だろう。正確にいえば、「忘れていた」わけでもない。その単語を聞けば、「思い出す」ことなどさりげなくやってみせることはできたはずだった。2003年12月、専守防衛を憲法に刻み、世界10傑に入る軍事予算を持つ組織をあえて「自衛」隊と呼んでいたにもかかわらず、小泉劇場と呼ばれた当時の政治が一大決断をしたはずのイラク派兵。首相が「自衛隊の活動している地域は非戦闘地域」という冗談のような答弁をした翌年に発表された『砂と兵隊』が、そうした日本の時代的状況を背景にしていることは疑いもない。ところが、かくも重大とされたことが、記憶としては存在していても、問題意識としては淡くも消え去ろうとしていた。劇場の席に座って、当日パンフレットに目を通しながら、そのことに気づいてやや愕然とした。しかし、それは仕方のないことだ。なぜならば、自分は、派兵が決定された当時も、そしていま現在も、歴史の傍観者にすぎないからだ。いや、少なくともこれは自分だけではない。何よりも、舞台の上の登場人物たちがそうであった。
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