三野新「Prepared for FILM」

◎Prepared for FILM
 山崎健太

はじめに

チラシ 三野新構成・演出によるパフォーマンス作品『Prepared for FILM』はサミュエル・ベケット唯一の映画作品『フィルム』の翻案であり、同時にタイトルが示す通り、これからベケットの台本に基づいて『フィルム』を撮影する者たちのために「準備されたprepared」ものとして構想されている。ゆえに、『Prepared for FILM』という作品は『フィルム』「以降」と「以前」とに同時に位置することになる。
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AAFリージョナル・シアター2013「羅生門」

◎フレームを揺らす
 山崎健太

公演チラシ
【宣伝美術:清水俊洋】

 村川拓也が芥川龍之介の小説『羅生門』を上演するにあたって採用した方法はまさに「発明」であった。その発明はほとんどあらゆる文学作品や物語を「村川拓也の舞台作品」として上演することを可能にしてしまう。一方、あらゆる物語が上演可能であるということは同時に、あらゆる物語が上演不可能であるということをも含意する。どんな物語でも同じ方法論で上演できるということは、そこに差異を見出さないということだからだ。何を上演しても同じであるならばそれを上演することに価値を見出すことは困難となる。その意味で、村川の発明した方法論は「演出」の極北を指し示していると言ってよい。
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カトリ企画UR「紙風船文様」

◎3人によるクロスレビュー

 今回の企画は、アトリエセンティオで2013年4月4-7日に上演されたカトリ企画UR「紙風船文様」を同時に観劇した3人の方のお申し出により、それぞれの視点から批評していただいたものです。3人は昨年フェスティバル・トーキョー(通称F/T)の関連企画「Blog Camp in F/T」で知り合い、F/T終了後も不定期に集まっては、各々が観た作品を話し、議論してきたとのことです。
 それぞれ違うバックグラウンドを持つ評者が一つの作品に関して書く事で、「紙風船文様」という作品の様々な側面が浮かび上がってきたことと思います。(編集部)
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ままごと「朝がある」

◎love the world
 山崎健太

「朝がある」公演チラシ
「朝がある」公演チラシ

 柴幸男は世界に恋している。『わが星』では地球の一生、『スイングバイ』では人類の歩みを作品の構成の根本に置き、『テトラポット』では生命の進化をモチーフとして取り入れるなど、柴は作品に「科学的な」ガジェットを多く取り入れてきた。『朝がある』でも先例に違わず「科学的な」視点が導入されているのだが、これらは全て、柴の世界への恋心の発露なのだ。そもそも科学とは世界のことをもっと知りたいという人間の欲望の表れであり、その意味では相手のことをもっと知りたいと思う恋と何ら変わるところがない。ときに散文的な言葉でつづられる柴の作品が圧倒的なリリシズムを湛えるのはこの恋心がゆえであり、だからこそそこには世界への肯定がある。柴は作品を通して世界への愛を歌い上げる。
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ミクニヤナイハラプロジェクト「幸福オンザ道路」

◎前へ!前へ!前へ!
 山崎健太

「幸福オンザ道路」公演チラシ
「幸福オンザ道路」公演チラシ

 矢内原美邦は繰り返し時間を描いてきた。ミクニヤナイハラプロジェクトの1作目として上演された『3年2組』は学生時代に埋めたタイムカプセルを巡る物語であるし、第56回岸田國士戯曲賞を受賞した『前向き!タイモン』はその全体が「1秒の戯曲」「1秒の物語」であるとされている。そして『幸福オンザ道路』もまた、失われた時間を巡る物語であるとひとまずは言うことが出来るだろう。本稿では時間を切り口に『3年2組』以降のいくつかの矢内原作品に触れ、『幸福オンザ道路』に至る矢内原作品に流れる通奏低音とでも呼ぶべきモチーフを明らかにしていく。
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サンプル「女王の器」

◎洗剤、アニメ、錬金術。
 山崎健太

 「界面、活性!」

 このセリフに『女王の器』における企みの全てが込められていると言ってもよい。耳慣れない言葉かも知れぬが、界面とはつまり境界面であり、身近なところでは洗剤に界面活性剤という薬剤が使われている。界面活性剤は水と油の両方に親和性があるため、本来は混ざり合わない水と油にこの界面活性剤を混ぜ込むと「乳化」という現象が起き、両者が均一に混ざり合う。界面活性剤の働きに象徴される、相異なる二つのものの混合というのが『女王の器』の中で繰り返し取り上げられるモチーフのひとつだ。
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劇団うりんこ「お伽草紙/戯曲」

◎虚実は糾える縄の如し
 山崎健太

「お伽草子/戯曲」公演チラシ
デザイン=京(kyo.designworks)

 「嘘から出た真」という言葉があるが、嘘(=虚構)は真(=現実)の中で作られるものでもあり、嘘と真の関係は卵と鶏の関係に似ている。卵が先か鶏が先かという議論は措いておくにせよ、卵が鶏から生まれる以上、卵が鶏よりも小さいことは自明である。では、現実の中に孕まれる虚構もまた、現実より小さなもの、現実を縮小再生産したものでしかないのだろうか。答えは否である。産み落とされた卵がやがて親鳥へと成長するように、虚構もまた、新たな現実を生み出す可能性をその裡に秘めているのだ。
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ジェローム・ベル 「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第5回 課題劇評 その2

 「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」公演チラシ
公演チラシ(表)

劇評を書くセミナーF/T編 第5回(最終回)は11月19日(土)午後、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は2本。F/T主催公演の掉尾を飾ったジェローム・ベル 「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」と、ほぼ1ヵ月間、東京近隣だけでなく福島県内を会場にしたPort B 「Referendum – 国民投票プロジェクト」でした。早稲田大演劇博物館研究助手の堀切克洋さんを講師に迎えた当日のセミナーは、名前を隠して事前配布された劇評を読んで意見交換し、最後に筆者から感想を聴くというスタイルで進みました。属人的な要素をとりあえず外し、書かれた原稿だけを基に合評するのはちょっとスリリングでもありました。ここでは「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」を対象にした5本を掲載します。

【課題劇評】(到着順に掲載)
1.イヴはなぜ楽園を追放されたのか(山崎健太)
2.ポピュラー音楽の/による親しみやすさ(中山大輔)
3.なぜ舞台は続けられなければならないのか(クリハラユミエ)
4.ポップスターの悲劇(堀切克洋)
5.イエス、ヒズ・ショー・ゴーズ・オン(都留由子)
>> Port B 「Referendum – 国民投票プロジェクト」課題劇評ページ
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遊園地再生事業団「トータル・リビング 1986-2011」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第4回 課題劇評 その1

「トータル・リビング」公演チラシ
「トータル・リビング」公演チラシ

 ワンダーランドの「劇評を書くセミナーF/T編」第4回は11月12日(土)、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は、遊園地再生事業団「トータル・リビング 1986-2011」(2011年10月14日-24日)と岡崎藝術座「レッドと黒の膨張する半球体」(10月28日-11月6日)です。講師の木村覚さん(日本女子大講師)も劇評を執筆。参加者の原稿と併せて公演内容や時代背景、劇作家の特質などにも話が及びました。
 最初に「トータル・リビング 1986-2011」評4本を掲載します。
 この作品は若い女性が舞台奥に飛び降りるシーンを早々に配置。バブル前夜の1986年(チェルノブイリ原発事故が起こった年)と2011年を往還しながら「忘却」と「欠落」をさまよい、「世界の歪みとそれでもなお続く私たちの生活が浮かび上がる」(FTサイト)舞台を、それぞれどのようにとらえたのか-。じっくりご覧ください。掲載は到着順です。

1.「忘却」を忘れられない者たちは、この作品で「忘却」を忘却できるだろうか? (髙橋英之)
2.幽霊と記号あるいは没入と忘却 (木村覚)
3.白くつるんとしたもの (都留由子)
4.忘却に抗い穴を穿て (山崎健太)

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維新派「風景画-東京・池袋」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第3回 課題劇評

「風景画-東京・池袋」公演チラシ
「風景画-東京・池袋」公演チラシ

 ワンダーランドの「劇評を書くセミナーF/T編」第3回は10月22日(土)、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は、維新派「風景画-東京・池袋」(2011年10月7日-16日)です。9月末の瀬戸内・犬島公演をへて、東京のデパート屋上(西武百貨店池袋本店4階まつりの広場)に登場したパフォーマンスはどのように変貌し、都会のど真ん中にどのように出現したのか-。提出された課題作を基に、講師の岡野宏文さん(元「新劇」編集長)のコメントを挟みながら、駅に隣接したデパート屋上という立地の特質、維新派の活動形態や俳優の特徴など活発な話し合いが続きました。
 以下の8本の劇評は、セミナーでの話し合いを基に加筆、修正されました。掲載は到着順です。
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