シンクロ少女「未亡人の一年」

◎夜道の誘惑~シンクロ少女の示すもの~
 宮本起代子

「未亡人の一年」公演チラシ 演劇ユニット・シンクロ少女は2004年、当時日本映画学校映像学科在学中だった名嘉友美を主宰に結成された。現在のメンバーは脚本・演出・出演の名嘉をはじめとして、俳優の泉政宏、横手慎太郎、中田麦平で、作品ごとに出演者を募る形式をとる。公式サイトには「『愛』と『性』、『嫉妬』や『慾』など、目に見えない感情や欲求をテーマに見た人の血となり肉となる作品を目指して公演を打つ、エロ馬鹿痛快劇団」と記されている。『私はあなたのオモチャなの』で旗揚げし、以後も『ドキドキしちゃう』、『めくるめくセックス』等々、タイトルからして挑発的だ。
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岡崎藝術座「レッドと黒の膨張する半球体」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第4回 課題劇評 その2

公演チラシ
公演チラシ

 ワンダーランドの「劇評を書くセミナーF/T編」第4回は11月12日(土)、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は、遊園地再生事業団「トータル・リビング 1986-2011」(2011年10月14日-24日)と岡崎藝術座「レッドと黒の膨張する半球体」(10月28日-11月6日)です。講師の木村覚さん(日本女子大講師)も劇評を執筆。課題原稿をたたき台にして、公演内容や時代背景、劇作家の特質などが話し合われました。
 岡崎藝術座「レッドと黒の膨張する半球体」はセミナーで取り上げた公演のうち、最もインパクトがあったという意見でほぼ一致しました。不快と不可解の合わせ技がかかり、なおかつ不思議なほど記憶に引っかかるのはなぜか-。以下の6本はそんな謎にも触れながら舞台をさまざまに読み解いています。当日は、岡崎藝術座の神里雄大さんも参加。活発な討論になりました。掲載は到着順です。

1.「移民」というニセのテーマ (髙橋英之)
2. 「レッドと黒の膨張する半球体」評(水牛健太郎)
3.このとりつくしまのない居心地の悪さ(大泉尚子)
4.明快な物語を切実に訴える過剰な表現(小林重幸)
5.孤独で恐ろしい肖像画(木村覚)(初出:artscape 2011年11月1日号
6.汚れることを恐れているのは誰か? 汚れたのは誰か?(クリハラユミエ)
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ミナモザ「ホットパーティクル」

◎あなたが立つ場所
 宮本起代子

「ホットパーティクル」公演チラシ
「ホットパーティクル」公演チラシ
撮影=服部貴康

【311と瀬戸山美咲】
 ミナモザにしては珍しい、写真による新作公演のチラシ。
 道路のまんなかに少しからだを斜めにして立ち、強い視線を向けているのは作・演出の瀬戸山美咲その人である。空はひろく、木々の緑が美しい。ノースリーブのワンピースにヒールの高いサンダル姿はリゾート気分いっぱいだが、両脇には「立入禁止 福島県」の立て看板が、絶対的な権威のごとく行く手を阻む。彼女がすっくと立つその地は、東京電力福島第一原子力発電所から何キロの場所なのか。
 裏面には3月11日の東日本大震災で劇場の中より外がはるかに劇的になり、新作の台本が書けなくなってしまった劇作家の告白がぎっしりと記されている。
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維新派「風景画-東京・池袋」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第3回 課題劇評

「風景画-東京・池袋」公演チラシ
「風景画-東京・池袋」公演チラシ

 ワンダーランドの「劇評を書くセミナーF/T編」第3回は10月22日(土)、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は、維新派「風景画-東京・池袋」(2011年10月7日-16日)です。9月末の瀬戸内・犬島公演をへて、東京のデパート屋上(西武百貨店池袋本店4階まつりの広場)に登場したパフォーマンスはどのように変貌し、都会のど真ん中にどのように出現したのか-。提出された課題作を基に、講師の岡野宏文さん(元「新劇」編集長)のコメントを挟みながら、駅に隣接したデパート屋上という立地の特質、維新派の活動形態や俳優の特徴など活発な話し合いが続きました。
 以下の8本の劇評は、セミナーでの話し合いを基に加筆、修正されました。掲載は到着順です。
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いわき総合高校演劇部「Final Fantasy for XI. III. MMXI」

◎正当な「権利」と、失われたものの復活
 水牛健太郎

 日曜日の神戸はちょっと戸惑うぐらいの秋晴れだった。新長田駅を降りるとすぐ、きれいな広場があり、そこでは巨大な鉄人28号のモニュメントがこぶしを空に突き上げている。鉄人の前で屈託なく記念写真を撮る家族連れや恋人たち。備え付けのパンフレットによれば鉄人は16年前の阪神淡路大震災からの「復興のシンボル」だ。神戸出身の作者・横山光輝は長田の町づくりに全面協力しており,もう一つの代表作「三国志」にちなんだイベントも行われていた。
 震災で見渡す限りの焼け野原と化した新長田駅前は、いま商店街と中高層マンションで構成される町となっている。大型商業施設と地元商店街が違和感なく同居し、ほどよい「庶民の町」の風情と買い回りの便利さを両立させている。「ジェントリフィケーション(gentrification)」といった言葉も頭をよぎるものの、当時の被害の深刻さを思い起こしながら、楽しげな人々で賑わう今の様子を見れば、復興はまずは成功と言えるだろう。
 鉄人広場に面したマンションのパステルカラーのエントランス。その階段にお年寄りが数人、腰をかけて鉄人を見上げていた。彼らが青春を刻み、家庭を営んだ町は灰となった。その後に、明るく楽しいこの町ができ、そして鉄人がやってきた。幅の広い階段に座った彼らは、ちょっとシュールな展開に戸惑っているようにも見える。
 あなたの目は何を見たのですか。あなたは今、幸せですか。穏やかなその姿に無言の問いを投げかけても、答えは、鉄人の頭の上に浮かぶ白い雲のかなたに吸い込まれていく気がした。
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Pカンパニー「曼珠沙華」

◎チェダーチーズと涅槃像-阿藤智恵の新作『曼珠沙華』を観る-
 間瀬幸江

Pカンパニー公演チラシ
Pカンパニー番外公演チラシ

 劇作家の阿藤智恵が、会心の作を世に送り出した。Pカンパニー番外公演その弍「岸田國士的なるものをめぐって~三人の作家による新作短篇集」(2011年9月30日~10月5日)の三番目の演目となった『曼珠沙華』である。二人の男の対話で構成されるシンプルな30分の小品であるが、心地よい驚きに、観劇後はしばし席を立てなかった。
 この9月は、ポツドールが『おしまいのとき』で、チェルフィッチュが『家電のように解り合えない』で、人と人とが「分かり合う」可能性をめぐる希望と絶望のテーマが扱われて話題になった。しかし、『曼珠沙華』は、この二本の話題作では解決されていなかったかあるいは解決できないことじたいがメッセージとして提示された問題を、あっさりと飛び越えてしまった。阿藤は、人と人との「分かり合い」に期待しないどころか、その可能性を想定さえしない。けして諦観でもニヒリズムでもペシミズムでもない、何かもっと別の思想体系に根ざしたそのことが、ひとつの「救い」として差し出されている。
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三浦基/地点「かもめ」、Baobab「Relax★」、ヤニス・マンダリス/ファブリス・マズリア「P.A.D」

◎そして祭は終わる-KYOTO EXPERIMENT 報告 最終回
 水牛健太郎

 秋分の日(9月23日(金))から始まった京都国際舞台芸術祭(KYOTO EXPERIMENT)は10月16日(日)、全日程を終了した。したがってこのリポートも4回目の今回が最終回となる。13日(木)以降に見た作品について報告したい。

 三浦基/地点の『かもめ』を13日に三条通のART COMPLEX1928で見た。もとは新聞社の建物だったといい、上演が行われたのはそのうち、奥に小さな演壇のある講堂である。演壇には丸い額縁のようなものがついている。この部分を含め、壁から天井にかけての左官屋さんの仕事が丁寧で美しい。1928とは昭和3年の意味であろう。昭和初期の京都の職人の技術の素晴らしさ、それを支えた京都の豊かさがしのばれる。
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「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)
「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)

◎劇評を書くセミナー2011 F/T編 第2回 課題劇評

F/T2011 ワンダーランドが毎年開いてきた「劇評を書くセミナー」は今年、フェスティバル/トーキョーと提携して始まりました。
 第1回のトークセッション(9月25日)は入門編でしたが、第2回以降は劇評を書く実践編。公演をみて劇評を書き、受講者と公演や劇評の中身を話し合う機会になります。
 第2回(10月1日)で取り上げたのは、F/Tの委嘱作「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)と「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)でした。
 字数は2000字から4000字前後。いずれの公演も野外で開かれ、既成の枠組みから逸脱するような手法と展開だったせいか、セミナー受講者は原稿執筆に苦しんだようです。
 講師は新野守広さん(立教大教授、シアターアーツ編集委員)でした 。新野さんが執筆した2本を含めて提出された計8本の劇評が取り上げられ、ゼミ形式で2時間半余りしっかり討論されました。セミナー終了後の喫茶店で、講師の新野さんを交えてさらに話が尽きませんでした。
 以下、受講者執筆の6本を提出順に掲載します。原稿はセミナーでの議論を踏まえて再提出されました。すでに掲載されている新野さんの劇評と併せてご覧ください。
“「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)
「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)” の
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岡崎藝術座「街などない」
マルセロ・エヴェリン他「マタドウロ(屠場)」
モモンガ・コンプレックス「とりあえず、あなたまかせ。」
笠井叡「血は特別のジュースだ。」
KIKIKIKIKIKI「ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん」

◎ニッポンのからだ―KYOTO EXPERIMENT2011報告(第3回)
 水牛健太郎

 三回目の今回は、5日から10日までの間に見た公式プログラム3本と、フリンジ2本を取り上げる。

岡崎藝術座「街などない」公演チラシ
岡崎藝術座「街などない」公演チラシ

 まずはフリンジの1本、岡崎藝術座の「街などない」。元・立誠小学校の一室の大きな本棚の前に4人の若い女性が、光る生地を使った衣装を着て座っている。そのうちの1人が、かなり露骨なセックスに関する話を他の女性に対して仕掛け、渋々ながら話に乗ってくる人がいたり、黙っている人がいたりと様々だが、最後近くまで延々と続く この「ぶっちゃけガールズトーク」が作品の基調を成す。
“岡崎藝術座「街などない」
マルセロ・エヴェリン他「マタドウロ(屠場)」
モモンガ・コンプレックス「とりあえず、あなたまかせ。」
笠井叡「血は特別のジュースだ。」
KIKIKIKIKIKI「ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん」” の
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平田オリザ+石黒浩研究室「アンドロイド演劇《さようなら》」
白井剛/京都芸術センター「静物画‐still life」

◎人と人ならざるもの-KYOTO EXPERIMENT 2011報告(第2回)
  水牛健太郎

 KYOTO EXPERIMENT二回目の週末の出しものは、平田オリザ+石黒浩研究室の「アンドロイド演劇《さようなら》」と白井剛/京都芸術センター「演劇計画2009」のダンス作品「静物画‐still life」であった。

 アンドロイド演劇は通常の演劇の枠を超えて話題となっているヒット企画である。幟(のぼり)こそ立っていないが、「あのアンドロイド演劇、京都に来(きた)る!!」という感じだ。会場は約百五十席あったが、通路にも一段ごとに人が座る盛況だった。京都の演劇公演としては相当な入りである。客層も、家族連れや高齢者など、ふだんの小劇場演劇の客とは明らかに違う人が多く含まれていた。
“平田オリザ+石黒浩研究室「アンドロイド演劇《さようなら》」
白井剛/京都芸術センター「静物画‐still life」” の
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