連載「もう一度見たい舞台」第2回 劇団風の子「2+3」

◎「嘘言うなー!」(ぜひ京都弁のイントネーションで)
 都留由子

「風の子50年史」と「遊びの中の演劇」(作・演出の関谷幸雄の著書)
「風の子50年史」と「遊びの中の演劇」(作・演出の関矢幸雄の著書)

 もう一度見たい舞台を挙げるときりがない。孝夫・玉三郎の「桜姫東文章」、スウェーデンの劇団(名前を忘れてしまった)の「小さな紳士の話」、デンマークのボートシアター「フルーエン」、五期会の「そよそよ族の叛乱」、プロメテの「広島に原爆を落とす日」。どの作品も、いくつかの場面が鮮やかに目の前に浮かぶ。

 が、ひとつ、具体的な場面はほとんど覚えていないのに、もう一度見たい作品がある。1980年に京都のどこかの小学校の体育館で見た、劇団風の子の作品「2+3」だ。
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佐藤佐吉演劇祭2012

◎劇場の意欲と志が見える 佐藤佐吉演劇祭2012を振り返る(座談会)

 小林重幸(放送エンジニア)+齋藤理一郎(会社員)+都留由子(ワンダーランド)+大泉尚子(ワンダーランド)(発言順)

 王子小劇場が隔年で開催する佐藤佐吉演劇祭は9月で全10公演を終了しました。6月末からほぼ3ヵ月の長丁場。ワンダーランドは演劇祭の全公演をクロスレビューで取り上げました。劇評を書くセミナーで劇場提供の主な公演を取り上げたことはありますが、演劇祭の全演目を取り上げるのは初めての試みでした。その10公演をすべて見て、クロスレビューにも毎回欠かさず参加した4人に、今回の演劇祭の特徴や目立った公演、クロスレビューに参加した感想や意見などを話し合ってもらいました。進行役は、ワンダーランドの北嶋孝です。(編集部)

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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第3回

◎「チェーホフの『桜の園』について」(宇野重吉著、麦秋社)
 都留由子

「チェーホフの『桜の園』について」表紙 劇団民藝の俳優で演出家だった宇野重吉が、チェーホフの『桜の園』を演出した際の上演台本と演出ノートを整理して出版したのがこの「チェーホフの『桜の園』について」である。注釈は不要だろうが、劇団民藝といえば新劇の老舗、宇野重吉といえば、1988年に亡くなるまで、滝沢修と並んでその民藝の重鎮だった人である。

 1978年に出版され、そのときに読んだ。当時、話題になったのだと思うが、それはあまり覚えていない。ただ、読んでびっくりしたことだけはよく覚えている。あまりにびっくりしたので、その後、学校を卒業し、身辺の変化と何回かの引越しを経てなお、この本は手元にあるほどである。
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ジェローム・ベル 「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第5回 課題劇評 その2

 「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」公演チラシ
公演チラシ(表)

劇評を書くセミナーF/T編 第5回(最終回)は11月19日(土)午後、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は2本。F/T主催公演の掉尾を飾ったジェローム・ベル 「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」と、ほぼ1ヵ月間、東京近隣だけでなく福島県内を会場にしたPort B 「Referendum – 国民投票プロジェクト」でした。早稲田大演劇博物館研究助手の堀切克洋さんを講師に迎えた当日のセミナーは、名前を隠して事前配布された劇評を読んで意見交換し、最後に筆者から感想を聴くというスタイルで進みました。属人的な要素をとりあえず外し、書かれた原稿だけを基に合評するのはちょっとスリリングでもありました。ここでは「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」を対象にした5本を掲載します。

【課題劇評】(到着順に掲載)
1.イヴはなぜ楽園を追放されたのか(山崎健太)
2.ポピュラー音楽の/による親しみやすさ(中山大輔)
3.なぜ舞台は続けられなければならないのか(クリハラユミエ)
4.ポップスターの悲劇(堀切克洋)
5.イエス、ヒズ・ショー・ゴーズ・オン(都留由子)
>> Port B 「Referendum – 国民投票プロジェクト」課題劇評ページ
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遊園地再生事業団「トータル・リビング 1986-2011」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第4回 課題劇評 その1

「トータル・リビング」公演チラシ
「トータル・リビング」公演チラシ

 ワンダーランドの「劇評を書くセミナーF/T編」第4回は11月12日(土)、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は、遊園地再生事業団「トータル・リビング 1986-2011」(2011年10月14日-24日)と岡崎藝術座「レッドと黒の膨張する半球体」(10月28日-11月6日)です。講師の木村覚さん(日本女子大講師)も劇評を執筆。参加者の原稿と併せて公演内容や時代背景、劇作家の特質などにも話が及びました。
 最初に「トータル・リビング 1986-2011」評4本を掲載します。
 この作品は若い女性が舞台奥に飛び降りるシーンを早々に配置。バブル前夜の1986年(チェルノブイリ原発事故が起こった年)と2011年を往還しながら「忘却」と「欠落」をさまよい、「世界の歪みとそれでもなお続く私たちの生活が浮かび上がる」(FTサイト)舞台を、それぞれどのようにとらえたのか-。じっくりご覧ください。掲載は到着順です。

1.「忘却」を忘れられない者たちは、この作品で「忘却」を忘却できるだろうか? (髙橋英之)
2.幽霊と記号あるいは没入と忘却 (木村覚)
3.白くつるんとしたもの (都留由子)
4.忘却に抗い穴を穿て (山崎健太)

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維新派「風景画-東京・池袋」

◎劇評を書くセミナーF/T編 第3回 課題劇評

「風景画-東京・池袋」公演チラシ
「風景画-東京・池袋」公演チラシ

 ワンダーランドの「劇評を書くセミナーF/T編」第3回は10月22日(土)、にしすがも創造舎で開かれました。取り上げた公演は、維新派「風景画-東京・池袋」(2011年10月7日-16日)です。9月末の瀬戸内・犬島公演をへて、東京のデパート屋上(西武百貨店池袋本店4階まつりの広場)に登場したパフォーマンスはどのように変貌し、都会のど真ん中にどのように出現したのか-。提出された課題作を基に、講師の岡野宏文さん(元「新劇」編集長)のコメントを挟みながら、駅に隣接したデパート屋上という立地の特質、維新派の活動形態や俳優の特徴など活発な話し合いが続きました。
 以下の8本の劇評は、セミナーでの話し合いを基に加筆、修正されました。掲載は到着順です。
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「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)
「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)

◎劇評を書くセミナー2011 F/T編 第2回 課題劇評

F/T2011 ワンダーランドが毎年開いてきた「劇評を書くセミナー」は今年、フェスティバル/トーキョーと提携して始まりました。
 第1回のトークセッション(9月25日)は入門編でしたが、第2回以降は劇評を書く実践編。公演をみて劇評を書き、受講者と公演や劇評の中身を話し合う機会になります。
 第2回(10月1日)で取り上げたのは、F/Tの委嘱作「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)と「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)でした。
 字数は2000字から4000字前後。いずれの公演も野外で開かれ、既成の枠組みから逸脱するような手法と展開だったせいか、セミナー受講者は原稿執筆に苦しんだようです。
 講師は新野守広さん(立教大教授、シアターアーツ編集委員)でした 。新野さんが執筆した2本を含めて提出された計8本の劇評が取り上げられ、ゼミ形式で2時間半余りしっかり討論されました。セミナー終了後の喫茶店で、講師の新野さんを交えてさらに話が尽きませんでした。
 以下、受講者執筆の6本を提出順に掲載します。原稿はセミナーでの議論を踏まえて再提出されました。すでに掲載されている新野さんの劇評と併せてご覧ください。
“「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)
「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)” の
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キジムナーフェスタ2011[報告]

◎子どもたちの力になるお芝居
 都留由子

キジムナーフェスタ2011公演チラシ 「キジムナー」は、沖縄の妖怪で、木の精、特にガジュマルの木の精である。川で元気に遊ぶ子どもを河童になぞらえるように、沖縄ではキジムナーは元気な子どものイメージなのだそうだ。
 そのキジムナーの名前を冠した「キジムナーフェスタ」は、「国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ」の愛称である。今年2011年のフェスティバルは7月の終わりの9日間。メキシコ、ジンバブエ、スペイン、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、韓国、オーストラリアなど14カ国の51作品が上演され、ステージ数は170、そのほかにも国際シンポジウム、ワークショップ、講演会、セミナー、などが多数開催された。公式HPによれば観客数は31,000人を超え、また、参加したゲスト、キャスト、スタッフは海外、国内、県内を含め500人にのぼったそうだ。9日間で31,000人ということは単純に計算すると3,400人の会場を毎日いっぱいにしていることになる。3,400席。渋谷のNHKホールの客席数だ。
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手塚夏子「私的解剖実験5-関わりの捏造」

◎振付家がつくり出したもの
都留由子

私的解剖実験5-関わりの捏造」公演チラシ「カタルシス」という言葉がある。学生時代、習ったのによくわからなかったこの言葉の意味を、あ、これか、と思ったのは、ミュージカル『コーラスライン』を見たときだった。まぶしいステージのダンスナンバーを見終わって席を立ったとき、やっぱりダンスにはカタルシスがあるね、と後ろの席から声が聞こえた。ああ、この快感がカタルシスなんだ! 本当にそれが正しいのかどうか、実は今でもわからないのだが、しかし、筆者の中では、ダンスを見る快楽とカタルシスという言葉はこのとき結びついてしまった。生身の人間の身体が動く。シンプルなそのことの、ぐいと心をつかむこの力の強さはどうだろう。それ以来、筆者にとってダンサーや振付家は、カタルシスをもたらすという特別な力を持った、神様に祝福された人になった。

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燐光群「ハシムラ東郷」

◎ここはどこ? あの人はだれ?
 都留由子

 さすがに現在ではどうかわからないが、ちょっと前なら、アメリカの子ども向けカトゥーンなどを見ていると、めがねをかけて、歯が出ていて背の低い、細い目がつり上がった男性が、着物とも何ともつかないものを着て、下駄を履いて登場することがあった。それはもちろん「日本人」で、妙な格好に加えて、刀やヌンチャクを振り回したり、空手や少林寺拳法の技を繰り出したりして、おいおい、なんだこれは? と思うことも多かった。

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