「最前線の演劇知」(後期)第5回報告

◎演劇は「いま、ここ」を映し出す最強の総合表現-徳永京子

徳永京子さん 2月11日、クロストーク150分「最前線の演劇知」もついに最終回となりました。後期、4人の演出家をゲストに迎えた徳永京子さんはこの日、ご自身が話し手となって演劇に対する強い思いを述べました。題して「演劇最強論」。ほかの芸術芸能分野に比べて演劇がいかにパワーに満ちているかを次々に解き明かしました。

 受講者を出版社の編集者と仮定し「演劇最強論」という本の企画を提案するという趣向を借りつつ「演劇は、テレビや映画、ドラマに対し、数の上では最弱でも持っている力は最強。中にいる人はそれに気づいていない」と強調しました。

 例えば、演劇が「いま、ここ」を映し出すという点では「俳優も観客も生身の人間」ということに加え、「昨日起きた事件をすぐに形にしやすい」「今日本でどんな問題が起きているかを形にしやすい」と、近松門左衛門やバナナ学園純情乙女組の特徴を例に挙げながら指摘。「観客のレスポンスが悪ければ改善していける、常に更新していけるというのは演劇の強みだ」と語りました。

 さらに演劇が総合芸術(総合表現)だという特質については、音楽、衣装、照明、文芸、など入口になるポイントがたくさんあり、思わぬ相乗効果が生まれることもあると述べた上で、お笑いの世界を見れば「自分を演劇化している芸人が多く、お笑いと演劇の歩み寄りはまだまだできるのではないか」と話していました。
 時代を問わない特色を持つという観点からは、「演劇には複数の時間軸があり、過去のことを描いていても見ている側のいまの時間とシンクロする箇所が出てくる、それが何百年も前の作品が表現され得る理由」だと、野田秀樹さんらの言葉も借りながら述べていました。

 「演劇は優れたコミュニケーションメディアだ」という見解も展開しました。
 「作品創造のときから演出家も俳優も常に外の誰かに向かって発信していかなくてはいけない」、つまり演劇は「このアイデアがダメだったら、すぐにその場で次の案を出していくことを求められる」双方向メディア。だから「演劇にはタフな表現者が生まれる」というのです。いのうえひでのりさんや松尾スズキさんなど今回のセミナーに登場した表現者のコメントを引用しながらこう述べていました。

徳永京子さん
【写真は、クロストーク150分(後期)第5回で話す徳永京子さん。撮影=石井雅美 禁無断転載】

 さらに、徳永さんは「演劇の観客も、他のジャンルに比べれば優秀だと思っている」とも。それは「演劇は口コミの力が大きい。ネットで発信している人を信頼しているということでもあるし、ネットやソーシャルメディアとの相性もよい。演劇はこの先明るいと思う」と演劇最強の弁を述べました。

 後半は日本の劇評と演劇ジャーナリズムについての話題に触れました。
 「お金のとれる悪口を書くのが目標」と言う徳永さんですが、かといって「その芝居を見なくていいやと思う人は増えてほしくない、次に繋がる橋渡しをしたい」と話していました。
(編集部)

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