「最前線の演劇知」(後期)第3回報告

◎周りの役者にリアクションがないと、”台詞が聞こえる”とは言えない-鵜山仁さん

鵜山仁さん クロストーク150分「最前線の演劇知」第3回が1月28日、文学座の鵜山仁さんを迎えて開催されました。会場は水天宮ピットが修理のため、この回だけ東京・雑司が谷の東京芸術劇場リニューアル準備室の会議室になりました。

 毎回小劇場の演出家を招いてきたクロストーク150分シリーズに、いわゆる”新劇”の劇団である文学座所属の鵜山さんを迎えることについて徳永さんは「鵜山さんは”新劇”らしからぬおもしろい方。”新劇”は見ず嫌いの人が多いと思うのでこの機会に紹介しようと思った」と話していました。

 「岩松了さんや野田秀樹さんと同世代の鵜山さんが新劇を選んだ理由は」という問いに、奈良市内の中学・高校での文化祭の恒例行事「学年劇」が下地になっているとの答え。そこでは、遠藤周作、福田善之、モリエール、シェークスピア、別役実、安部公房、アメリカの劇作家の反戦劇などが上演されたそうです。

 慶応大学を卒業後、舞台芸術学院で役者になりたくて勉強したがなれず。文学座を受けるときも、演技部は高倍率なので演出部を志望したそうです。「なぜ文学座だったのか?」という問いには「関西では新劇しか見られなかった。上京後、テント芝居なども見て憧れを抱いたが、そこに加わって徒弟修業みたいなことをするのは嫌だった。そのうち文学座も見るようになり、いろんな人が出ていろんな方向から光が当たる多様性を感じた。ここなら合うのではと思った」と語っていました。

 ”新劇”に対する否定的なイメージについて「最近では、ケラさんなどが新劇系の作品を演出している。”新劇みたい”というのは、滑舌の良すぎる芝居のことだろうが、旅公演で客席数も違う様々な劇場をいくつも回ると、商業演劇のように俳優がマイクを付けるわけではないので、俳優たちは肉声で台詞が聞こえるように発声する。するとプリントしたみたいな台詞になることがあるかもしれない」と説明していました。

鵜山仁さんと徳永京子さん
【写真は、鵜山仁さんと徳永京子さん 撮影=ワンダーランド 禁無断提供】

 徳永さんが以前『ヘンリー6世』の本読みで「当時の重苦しい政治の世界をシェイクスピアがどうつくりたかったのかが、年配の男性俳優の声の重々しさで分かった」と話し、俳優や配役についての考え方の話題に。またセリフと身体の働きについて、「(ある人物がセリフをしゃべったとき)聞いている周りの役者にリアクションがないと、”台詞が聞こえる”とは言えない」といった現場ならではの貴重な話もありました。

 参加者から、フランス留学経験についての質問があり、日常のコミュニケーションの話題から留学当時のフランス演劇への評価などを語ってくれました。
(文責編集部)

▽鵜山仁さんの演出舞台:
こまつ座「雪やこんこん」(井上ひさし生誕77 フェスティバル2012)
 2012年2月19日(日)~3月11日(日)
 紀伊國屋サザンシアター

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください