◎演劇は“個人の迷路”を提示できる-岩松了さん
ワンダーランド演劇セミナー2011「クロストーク150分『最前線の演劇知』」の第1回は4月16日(土)午後、東京芸術劇場が運営する水天宮ピット(正式名称「東京舞台芸術活動支援センター」)で開かれました。当日の参加受講者は52人。首都圏が多いものの、遠くは京都から参加した人も。年齢層は幅広く、職業もさまざま。俳優や舞台美術家など演劇関係者から学生・会社員・主婦まで演劇への高い関心がうかがわれました。
全5回のこのセミナーの案内役=聞き手を務めるのは、演劇ジャーナリストの徳永京子さん。第1回は、劇作家・演出家・俳優の岩松了さんを迎え、スリリングで楽しいトークを繰り広げました。
徳永さんは各回のゲストに、いくつかの共通の問いかけを準備しています。例えば「なぜ演劇を続けているのか」「いい戯曲とは何か」「いい演出とは」「いい役者とは」など。
岩松さんは「なぜ演劇か」という最初の質問に対して、「30歳過ぎまで、芝居を止めよう止めようと思いながら、つぶしが効かないからしょうがなく…」と苦笑しながらも「演劇は“個人の迷路”を提示できる。それを見せることで、すぐ近くのわかりやすいところでではなく、遠くと遠くで人と手をつなぐことのできるものだから」などと答えていました。
Q&Aコーナーでは、参加者から「宮沢章夫さんが、かつてバイトで焼きそばを売っていた劇作家がいるとおっしゃってましたが、それは岩松さんのことですか?(笑)」「演劇と空間の大きさとの関係についてどうお考えですか? やりやすいハコの大きさというのはありますか?」など質問が相次ぎました。
今年はすでに「国民傘」「カスケード」2本の公演が終わっていますが、6~7月の宮藤官九郎作・演出「サッドソング・フォー・アグリードーター」には、俳優として松尾スズキ・宮崎あおいとの共演、秋には再び劇作家として新作2本の上演が控えています。その合間を縫って、作品の秘密に迫る貴重な話を聞くことができた2時間半でした。
今回の「クロストーク150分 最前線の演劇知」は当初「50人限定企画」としましたが、応募者がすぐに定員を超えました。そのため会場に実際に椅子を並べて調整した結果、多少の余裕があることが分かったので程なく第2次募集に踏み切りました。それでもやむなく断るケースが出るなど高い人気はうれしいのですが、募集方法などに反省の余地を残しました。
(編集部)