群像新人文学賞優秀作に飯塚数人さん

飯塚数人さん講談社の第53回群像新人文学賞評論部門の優秀作に、人形劇を中心に演劇評論を続ける飯塚数人さんが選ばれた。受賞作は「福田恒存VS武智鉄二-西洋か伝統か、それが問題だ!」。現在発売中の「群像」六月号に掲載されている。

受賞作は劇作家福田恒存と演出家武智鉄二の間で1956年(昭和31年)に戦わされた論争を取り上げた。「戯曲はせりふであり、せりふは文学である」とし、演劇と文学とのつながりを重視した福田と、演劇を「世界観の上に立って、空間性と時間性との上に、光と音とで構成された造形」と規定した前衛演劇の旗手武智の間の論争を、西洋化と近代化を巡る路線の違いとして位置づけた。「真の西洋理解による近代の確立」を説いた福田に対し、武智は「西洋化でない近代化」を目指し、「真の伝統理解にもとづく近代の確立」を主張したという。

10日、東京都文京区の講談社で行われた授賞式では、選考委員で評論家の田中和生氏が「飯塚さんの作品は、文学史的に忘れられている論争を取り上げているが、今見えないものを見えるようにするという評論の役割を果たしているもので、その反時代性を高く評価したい。今後も文学の現在の在り方をぶち壊す評論を期待する」と評価した。続いてあいさつに立った飯塚さんは「どうも。以上を持ちまして受賞の言葉に代えさせていただきたいと思います。ありがとうございました」とだけ述べて、席に戻った。

飯塚さんは「演劇メディアにも投稿してきたが、演劇評論を何の違和感もなく受賞作とする文芸誌は懐が深い。今後、私がやりたいのは演劇を通じたエコロジー批評だ」と話していた。

▽第53回群像新人文学賞
http://shop.kodansha.jp/bc/books/bungei/gunzo/#C_01
http://shop.kodansha.jp/bc/books/bungei/gunzo/literary.html#53

▽飯塚さんのワンダーランド掲載劇評:
DULL-COLORED POP「JANIS」/ねじくれたジャニスをみごとに造形 独自の音楽劇創出の試み
http://www.wonderlands.jp/archives/12466/

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