振り返る 私の2010

高田匂子(主婦)

  1. 「花と爆弾」公演チラシ 劇団青年座「昭和の子供」(作・西島大、演出・千田恵子)
  2. 劇団昴「イノセントピープル」(作・畑澤聖悟、演出・黒岩亮)
  3. 劇団匂組「花と爆弾」(作・大森匂子、演出・福正大輔)

 ランキングではなく、記憶に残るという意味で、この三本になりました。
1は、今年亡くなった劇作家、西島大の追悼公演です。この、自伝的要素の色濃い初期の作品は、今でも色あせることなく、心にせまってきます。たとえ、時代が変わろうが、表現様式が多様化しようが、作家の止むに止まれぬ思い、その抑えがたいものが表現されていれば、切なく胸を打つのだということを、あらためておもい知らされ、身のひきしまるおもいがしました。
2は、今、私がスゴイ…とおもっている劇作家のひとり、畑澤聖悟の作品です。さすがにスゴイ。スゴクテウマイ。ショックです。
3は、自画自賛。作者、大森匂子の35年前の処女作品を、大逆事件100年後の今年、とにかく打った「匂組」の勇気にたいして。
年間観劇数 124本。昨年の約半数にも満たなかったです。

大泉尚子(ワンダーランド)

  1. 「あかりのともるかがみのくず」公演チラシさいたまゴールドシアター「聖地
  2. 黒田育世「あかりのともるかがみのくず」(F/T10)
  3. 阿部一徳「阿部一徳の ちょっといい話してあげる/異形の愛 GEEK LOVE

 1.〈世界の〉蜷川、〈気鋭の〉松井周に、ゴールドシアターの面々は臆するどころか、蹴っ飛ばし、大きくはみ出すくらいの勢いを見せた。あの横紙破りなまでの存在感。それと、F/T10「DORAMATHOLOGY/ドラマソロジー」の、自分は死後どうなるかというイメージを語るお年寄りの、飄々と、どこか透明感さえも感じさせる表情とは、裏腹なようでいて実は表裏一体なのかもしれない。
 2.飴屋法水・古川日出夫などと、意欲的なコラボを続ける黒田育世が、洗練にはむしろ背を向け、見世物小屋のような猥雑な世界を踊った。その勇気にも脱帽。
 3.ひとり語りで描く、フリークの極致。ブレーキをとっぱずして生み出される極端なものの姿が、ぬるい純愛・家族愛の物語をいくつ聞くより、世界の輪郭をなぞらせてくれた。
年間観劇数 約140本。

山内哲夫(100字レヴュー

  1. 「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」公演チラシ 三匹の犬 「現実はきびしく私たちは若い けれど要求は唐突で 思い切るという手もあるかもしれない
  2. 少年王者舘「 ガラパゴス
  3. チェルフィッチュ 「 ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶

 意外にベテラン勢ばかり選出。特に鈴江俊郎の新プロジェクトは見事な二人芝居。反戦運動の挫折が切なく時代の残酷さをあぶり出した。少年王者舘も貫録。歴史を上手に料理し舞台に載せた手腕に感服。チェルフィッチュはやはり「ダンス」路線がいい。派遣など社会的なテーマも効果的だった。若手ではマームとジプ シーとロロが素晴らしい活躍。東京タンバリンも好調だった。赤堀雅秋は姦しが見事。ダンスではほうほう堂が嬉しい復活。特に留守番企画は秀逸だった。20周年の珍しいキノコも活発、屋上公演への挑戦は拍手。クロムモリブデン、あひるなんちゃら、国分寺大人倶楽部も高い水準の公演を連発。見逃せなくなった。維新派の犬島も大きな成果。
年間観劇数 200本。

高木龍尋(高校講師)

  1. ピースピット「MOTHER
  2. 二兎社「かたりの椅子
  3. 劇団Ugly duckling「凛然グッドバイ(春眠)」

 何となくではあるが、佳作に恵まれたような気がする。「どうなのかしら?」といった劇場で思わず「おおっ」と声が出てしまうような作品に出会えた。そのひとつが―というと語弊があるのだが―ピースピット。劇団ではなくプロデュース企画なのだが、毎度関西小劇場演劇界のお祭り的公演作品であった。このお祭り具合に少々辟易していたのだが、「MOTHER」はかつて「有毒少年」を観たときの感動を思い出した。二兎社については私が言うまでもないだろう。一言でいえば“お役所と言葉の恐怖”というところ。最後にUgly ducklingはこの作品が最終公演とのこと、残念で仕方がない。必ずこの作品については文章を書いておきたいので内容についてはここで触れないが、年明けには東京・福岡で公演があるとのこと。是非とも観られたし。
年間観劇数 約70本。

鈴木アツト(劇団印象-indian elephant-主宰、個人ブログ「ゾウの猿芝居」

  1. 「夜にだって月はあるから」公演チラシ May「夜にだって月はあるから」
  2. はえぎわ「春々
  3. シアターコクーンプロデュース「タンゴ」(長塚圭史演出)

 1は、作者の祖父の世代がモチーフ。在日朝鮮人の演劇人が自らのルーツや歴史に真っ向から向き合った快作で、しかも全く説教臭くなく、誰が見ても楽しめるエンターテインメントとして成立していた。演劇村だけでしか通用しない言葉で語られる流行の作品群とは一線を画している。
 2は、スズナリの使い方が秀逸だった。先輩の監視とアドバイスに家族の方向性を全て委ねてしまう男の設定も不気味で滑稽で、日本の今があったと思う。年末の「ガラパコス」もおもしろく見た。
 3は、舞台美術プランとして演出家の長塚圭史氏が登場するというアイディアに度肝を抜かれた。次点に、イ・ユンテク演出の「ロビンソンとクルーソー」(SPAC)。
年間観劇数 不明。

水牛健太郎(ワンダーランド)

  • 「オイディプス王」「タイタス・アンドロニカス」公演チラシ
    「オイディプス王」「タイタス・アンドロニカス」公演チラシ
    劇団山の手事情社「タイタス・アンドロニカス」
  • ハイリンド×サスペンデッズ「グロリア」
  • マームとジプシー「ハロースクール、バイバイ」

(観劇順)

 楽しい年だった。無理も背伸びもなく、遠いところには行かず、高いチケットは買わず。つまらないと思ったら中座。そうして見たいものだけ見ていたら、あくびも居眠りもほとんどない観劇生活になった。娯楽・極楽。そのかわり進歩もなかった。そんなわけだから、この三本は「面白かったです」というだけの意味しかない。それも私が見た少ない本数の中で。演劇界の今後を占うような意味は皆無であることは、ま、見ればわかると思います。でも「面白い!」ということだってなかなかないことですよね。貴重。2011年は諸事情により、あまり見に行けないと思います。楽しい時間はすぐに過ぎるもの。元気で行こう。絶望するな。では失敬!
年間観劇数 85本。

北嶋孝(ワンダーランド)

  1. 「クララ症候群」公演チラシ 東京デスロック「2001年-2010年宇宙の旅<2001-2010 A Space Odyssey>」
  2. うさぎストライプ「おやすみなさい
  3. 劇団エリザベス×ブルーノプロデュース「クララ症候群

 演劇シーンの俯瞰でもベスト3でもなく、個人的に「記憶に残った」3本を挙げた。「-宇宙の旅」は東京デスロックの新しいステップだろう。劇団史と団員の個人史が、宇宙と人類の来歴に重ねられた記念碑のような作品。その演出部所属の橋本清さんが主宰するブルーノプロデュース公演も忘れがたい。k.r.Arry(劇団エリザベス)の作品に依りながら、役者のコトバを基に演劇を構成しようとする方法は親団体(?)の舞台に影響を与えたのではないか。
 わずか2日間上演の「おやすみなさい」は旗揚げ公演。夢のイメージを紡ぎながら、光と陰に彩られるリアルのインターフェースを伸びやかに描いていた。作・演出の大池容子さんが出演した水素74%「転転転校生」(作・演出:田川啓介)での経験が生かされたのだろうか。評判のままごと(柴幸男主宰)やロロ(三浦直之主宰)も併せると、日大芸術学部の現役とOBという共通点が浮かんでくる。最近の演習担当講師が中野成樹さん(+フランケンズ)というのも関係あるのだろうか。
年間観劇 約185本。

* 初出:マガジン・ワンダーランド第222号、(2010年12月29日発行。購読は登録ページから)。
 サイトの改廃、ページ内容の変更、リンク切れなどがあるかもしれません。その際はご容赦ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください