劇団鹿殺し「百千万」

 劇団鹿殺し第12回公演「百千万(モモチマ)」(6月23日-28日)を王子小劇場でみました。入り口で眉をそり上げ、アイシャドウを塗ったお兄ちゃんが幟を抱えて客入れしています。いささか気持ちの悪いチラシの絵柄と同じ雰囲気。 … “劇団鹿殺し「百千万」” の続きを読む

 劇団鹿殺し第12回公演「百千万(モモチマ)」(6月23日-28日)を王子小劇場でみました。入り口で眉をそり上げ、アイシャドウを塗ったお兄ちゃんが幟を抱えて客入れしています。いささか気持ちの悪いチラシの絵柄と同じ雰囲気。結局、舞台も似たような印象に終始しました。ゴキブリコンビナートと大人計画を足して2で割って、結果をすこし薄めたような感じのステージです。


 福井県の美浜原発3号機で爆発事故が起き、巨大な頭部を持つ子供「エンゲキ」が生まれます。父が欲しがった越前ガニや行方知れずの母を求めて、彼女が美浜町を目指すロードムービー、ある種の成長物語=ビルドゥングス・ロマンのような展開でした。
 ほぼ時系列順に6話構成。カニ売りとの出会い、父が属したことのある大学の原子力研究所の内幕、核爆発事故の真相などがチープなセット上で進行します。筋はあってなきがごとし、というより最後まで太線で引いてしまったので、かえってウソっぽく感じられてしまいます。

 役者はだれもが薄汚れて見え、粗野な男っぽい雰囲気。男の体臭というか、精液まみれの空気を漂わせています。エイズで亡くなったクイーンのボーカル、フレディー・マーキュリーのビデオ映像を流しながら、マイクを男性器に見立てて振り回すコピー・パフォーマンスは十八番(おはこ)のようでした。振りも堂に入って、さすがにビシッと決まっていたのが、そんなイメージをかき立てました。

 後半は局部を辛うじて隠した男性陣が、ほぼ全裸で踊ったり体をぶつけ合ったりの見せ場が出てきます。そこで宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をとことんコケにしたシーンは特筆モノでした。乙女チックな幻想に泥を浴びせるのですから、宮沢ファンにとっては憤激モノかもしれませんが、ぼくは文句なく笑えました。どこかで被いが外れるのではないかという一部観客の期待は満たされなかったようです。少なくともぼくが見た23日は、微妙なはみ出し!だけでした。

 原発反対のプラカードが出てきたりそれらしいせりふが散りばめられています。初期の大人計画にもそんなシーンがあったと記憶しますが、しかし本筋というより、ストーリー展開の上で織り込まれた背景のひとつに過ぎないような気がします。

 公演がひとまず終了したら、役者たち自身が両袖で「アンコール」「アンコール」と叫び出します。苦笑気味の客席がぱらぱら拍手すると、おそろいの黒いTバック姿で役者たちが登場し、路上ライブで鍛えたと思われるおそろいのダンスシーンを見せていました。劇団のWebサイトによると、セルフアンコールだそうです。男の肌のすべすべやムキムキ、それにモッコリ好きのファンにはたまらないおまけだったのではないでしょうか。

 劇団サイトに、昨年11月の大阪公演アンケートがいくつか掲載されています。
 「あたたかい劇でした」「初めて旅に出たくなりました」「やりたい放題、汗だくでやっている姿にしびれました」「楽しかったです。なんか元気でました」「カッコいいよ!粋だよ!キタねー、変態が!最高だよ!」…。
 筆跡がどれも似たり寄ったりに見えたのがご愛嬌ですが、ファンの関心のありようとともに、こういうアンケートを掲載した劇団の心情が吐露されているとみたほうがいいのかもしれません。(北嶋孝@ノースアイランド舎、6月29日、7月1日補筆)

[上演記録]
劇団鹿殺し第12回公演「百千万」(モモチマ)
東京・王子小劇場(6月23日-28日)

作 :丸尾丸一郎
演出:髭の子チョビン

出演:髭の子チョビン、丸尾丸一郎、山本聡治、JIRO..J.WOLF、渡辺プレラ、オレノグラフィティ、中村達也
サポート:リアルマッスル泉
歌手:青山和弘

スタッフ:
舞台監督 吉田慎一
舞台美術 津郷峰雪
照明デザイン 戒田竜治(満月動物園)
照明操作 海老澤美幸
音響協力 (有)T&Crew
衣装 赤穂美咲
コスチューム製作 坂下智宏
映像 三木康平・高堂勝
写真 溝添真紀
フライヤーデザイン&WEBデザイン 李
製作助手 山田裕美、内藤玲奈、束野奈央、李

企画製作 オフィス鹿

投稿者: 北嶋孝

ワンダーランド代表

「劇団鹿殺し「百千万」」への6件のフィードバック

  1. 劇団鹿殺し『百千万』

    王子小劇場に劇団鹿殺しの第12回公演「百千万」(モモチマ)を観に行ってきました。 うーん、熱狂舞台。 劇場前には「劇団鹿殺し」と書かれた黒字の旗、燕尾服や着物着た役者達が客入れ・・・畳の席に靴を脱いで入場、天井には裸電球・・・最前列はビニールシート、アン…

  2. ふらふらと迷い込んでよませていただきましたが、なんとも意地の悪い文章で気分がわるくなりました。
    感想は個人の自由としても、
    ホームページのアンケートの文字がにたりよったりというのは、偏りすぎでしょう。
    見てみたところ、とてもそんな風に断言できるようなものではありませんでした。
    だれもが目にするウェブ上で無責任に他人を疑うようなことを言いきってしまうのは
    書かれた方の大人としての姿勢を疑ってしまいます。

  3. 大阪公演のコメントに関しては、実際似て見えたのでその通り書きましたが、誤解を招かないように表現を修正しました。(なんだ、変わってないじゃんと怒られるかもしれませんが)
    いずれにしろ鹿殺し公演の評価が食い違っているようです。ぜひレビューを書いてみませんか。どこがどんなふうに、なぜ評価に値するか、しっかり書き込んでいたければありがたいですね。目から鱗、になるかもしれません。期待しています。

  4. 運営者の方には申し訳ありませんが、上演記録に間違いがありますので指摘させていただきます。

    菱田S裕大。現在オレノグラフィティと名乗っております。(Sはミスタイプと推測させ呈いただきます)
    中西辰也。達也です。彼の名は。尚、本公演時では新人ではなく、客演扱いです。
    また、坂下氏、ジャンキー氏は本公演に出演しておりません。

    おそらく昨年の大阪公演の記録と混ざっていらっしゃるようですね。失礼かとは思いますが、指摘させていただきます。

  5. [上演記録]の誤りをご指摘いただきありがとうございます。関係者の方々にご迷惑をおかけしました。大阪公演と紛れて転記した際、ミスをしてしまったようです。あらためて劇団Webサイトの東京公演ページと、劇場で配布した資料を参照して修正しました。ご確認ください。

  6. ピンバック: SEISHI IRIMAJIRI(李™)

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