三条会『ニセS高原から』

 三条会の舞台から伝わってくるものは、身体の力強さと言葉の重量感、そして何よりも演出という意図が持つ意味の権力だ。それらが舞台空間の中に満遍なく、拡張しようとする意思と共に埋め込まれている。その彼らがこの度対峙した作品は … “三条会『ニセS高原から』” の続きを読む

 三条会の舞台から伝わってくるものは、身体の力強さと言葉の重量感、そして何よりも演出という意図が持つ意味の権力だ。それらが舞台空間の中に満遍なく、拡張しようとする意思と共に埋め込まれている。その彼らがこの度対峙した作品は、敢えてプラマイゼロの地点に佇もうとする平田オリザの作品「S高原から」である。この本の演出に際して三条会は、徐に反旗を翻すと、1時間弱という時間を懸けて盛大に戦いを挑んでいったのだ。
 その時間は私には大変に心地の良いものであった。何故なら、そこには「S高原から」という脚本への愛と平田オリザという演出家への尊敬の念が満ちていたからだ。さもなくば、このような大胆不敵な二次創作は不可能であっただろうし、演出という意図が齎す表現の創造性に酔いしれる瞬間も訪れなかっただろう。
 最後の一瞬で「ニセS高原から」は原版「S高原から」へと浸透していく。その光景は、2つの意図が生む結晶であり、暗闇の中に表現の楽園を見る思いだった。私は裏返る舞台という演出家の意図に感じるべき感情を見失ったのだった。

草稿は「デジログからあなろぐ」をご覧ください。


関美能留(三条会)組

 大川潤子(三条会)・岡野暢・鬼頭愛(百景社)・久保田芳之(reset-N)
 榊原毅(三条会)・瀧澤崇・立崎真紀子(三条会)
 寺内亜矢子(ク・ナウカ)・中村岳人(三条会)・橋口久男(三条会)
 舟川晶子(三条会)・山本晃子(百景社)

ス タ ッ フ

舞台美術杉  山至×突貫屋
照明       佐野一敏(三条会)
音響       薮公美子
宣伝美術    藤原未央子
制作       榎戸源胤(五反田団)
           尾形典子(青年団)
           木下京子(ポツドール)
           斉藤由夏(青年団)
           田中沙織(蜻蛉玉)
プロデューサー 前田司郎

主催  (有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場

「三条会『ニセS高原から』」への1件のフィードバック

  1.  「デジログからあなろぐ」サイトに掲載されたレビューを読んで、着眼に感心しました。芝居全体をめくりあげた感じがします。それにしても刺激的な三条会の舞台でしたね。多くの人に自分の目で確かめてもらいたいと思います。
     先日原文を読んだあと、どういう形で紹介されるか待っていました。このあともよろしくお願いします。

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