燐光群はこれまでアジアの演劇人と協力していくつかの作品を作ってきました。「トーキョー裁判1999」でフィリピンから俳優ノル・ドミンゴ(PETA)を招聘、「南洋くじら部隊」はドミンゴの他にもインドネシアから7 名、アメリカから1 名の俳優を招いています。「ベッドタイムストーリーズ」第1弾は2004年に開かれ、フィリピンの俳優と共同で上演されました。2回目の今回は、フィリピンの劇作家2人と内田春菊の書き下ろしのオリジナル3作品が取り上げられれ、フィリピンの2作は日本人俳優バージョンとフィリピン俳優バージョンが上演されるという珍しい企画でした(3月23日-27日、東京・笹塚ファクトリー)。
それぞれの作品のあらすじなどは、燐光群のwebサイトを見ていただくのがいいと思いますが、最初の作品「アスワン~フィリピン吸血鬼の誕生~」は「山で殺されたある妊婦の胎児が、母親の体を食べ物とし、猪に育てられ成長する」物語。「演劇、観劇のカフェ」は、数奇な運命に揺さぶられるアスワン役を演じたアンジェリ・バヤニに関して「大きな瞳が、作品の中心に存在しているようでした。静かな芝居が物語の持つ神秘性を高めています」と魅力を語っています。
「#10の観劇インプレッション」は日本とフィリピンの2バージョン上演となった「それで裸になったつもり?」について「日本語・タガログ語ともだいたい同じ話だが細かい部分では違っており、演出の妙を感じた」と述べています。
「haruharuy劇場」は日本バージョン、フィリピンバージョンについて「言葉の違いがあるので一概には言えないが、日本バージョンだと「言葉=台詞」が立ってくる。言葉が届くという意味では、タガログ語よりも効果的なのは自明なのだが、その代わりに身体の特徴や、身体能力をおざなりにしてないかい? ということも指摘されなければならない。また、フィリピンバージョンでは、逆に身体を強く意識させてくれ、発声の力強さにもそれは現れていた。俳優の格やレベルの問題もあるので一概には言えないが、今回の試みは、いろんな意味で非常に興味深いものだった」と指摘していました。
また「haruharuy劇場」は最後の内田春菊作「フィリピンパブで幸せを」を取り上げ、「自分の体験をベースに、実らない愛の形を、結ばれない愛の形だったものを、キチンとした愛のカタチに結実させた。その手腕に脱帽。愛のカタチはいろいろあっていいのだという内田春菊の考えがストレートに出ていた」と評価しています。
このシリーズの企画、演出は、燐光群の吉田智久さん。欧米に出かけるケースが多い文化庁の在外研修でフィリピンに赴き、タガログ語を習得して現地のPETA(フィリピン教育演劇協会)との交流を深める中で生まれた試みのようです。
シリーズが生まれた経緯や参加俳優のコメントなどは燐光群のサイトに掲載されています。
[上演記録]
燐光群+フィリピン国際交流プログラム「フィリピン ベッドタイムストリーズ2」
(PHILIPPINE BEDTIME STORIES 2)
3月23日-27日、東京・ 笹塚ファクトリー
作○ロディ・ヴェラ/リザ・マグトト/内田春菊
演出○吉田智久
訳○珍田真弓
日本語版上演台本・芸術監督○坂手洋二
日本語+タガログ語上演(一部日本語字幕付き)
“Ang Unang Aswang” written by Rody Vera
「アスワン ~フィリピン吸血鬼の誕生~」 作○ロディ・ヴェラ
<CAST>
■Filipino Version
犬 Aso ・・・・・・・・・・・・・・ ロディ・ヴェラ Rody Vera
猫 Pusa ・・・・・・・・・・・・・ マイレス・カナピ Mailes Kanapi
猪 Baboy Ramo ・・・・・・ メイ・パナー Mae Paner
アスワン Aswang ・・・・ アンジェリ・バヤニ Angeli Bayani
男 Lalaki ・・・・・・・・・・・・ ノル・ドミンゴ Nor Domingo
母 Nanay ・・・・・・・・・・・・ 桐畑理佳 Rika Kirihata
■Japanese Version
犬1 Aso 1 ・・・・・・・・・・・・ 鴨川てんし Tenshi Kamogawa
犬2 Aso 2 ・・・・・・・・・・・・ 小金井篤 Atsushi Koganei
猫1 Pusa 1 ・・・・・・・・・・・ 木下祐子 Yuko Kinoshita
猫2 Pusa 2 ・・・・・・・・・・・ 樋口史 Fumi Higuchi
猪1 Baboy Ramo 1 ・・・・ 川中健次郎 Kenjiro Kawanaka
猪2 Baboy Ramo 2 ・・・・ 安仁屋美峰 Miho Aniya
アスワン Aswang ・・・・・ 阿諏訪麻子 Asako Asuwa
男 Lalaki ・・・・・・・・・・・・・ 杉山英之 Hideyuki Sugiyama
“Kung Paano Hubdan ang Hinubaran” written by Liza C. Magtoto
「それで裸になったつもり?」 作○リザ・マグトト
<CAST>
■Filipino Version
男 Lalaki ・・・・・・・・・・・ ロディ・ヴェラ Rody Vera
女 Babae ・・・・・・・・・・・ メイ・パナー Mae Paner
看護師1 Nurse1 ・・・・ ノル・ドミンゴ Nor Domingo
看護師2 Nurse2 ・・・・ アンジェリ・バヤニ Angeli Bayani
■Japanese Version
男 Lalaki ・・・・・・・・・・・ 鴨川てんし Tenshi Kamogawa
女 Babae ・・・・・・・・・・・ 木下祐子 Yuko Kinoshita
看護師1 Nurse1 ・・・・ 小金井篤 Atsushi Koganei
看護師2 Nurse2 ・・・・ 樋口史 Fumi Higuchi
“Ligaya sa Isang Pinoy Bar” written by Shungiku Uchida
「フィリピンパブで幸せを」 作○内田春菊
<CAST>
女 Babae ・・・・・・・・・・・ マイレス・カナピ Mailes Kanapi
男 Lalaki ・・・・・・・・・・・ 内海常葉 Tokoha Utsumi
女の母 Nanay ・・・・・・・ メイ・パナー Mae Paner
女の父 Tatay ・・・・・・・ 川中健次郎 Kenjiro Kawanaka
召使 Servant ・・・・・・・ ノル・ドミンゴ Nor Domingo
メイド Maid ・・・・・・・・ ロディ・ヴェラ Rody Vera
妹1 Sister 1 ・・・・・・・ 工藤清美 Kiyomi Kudo
妹2 Sister 2 ・・・・・・・ 安仁屋美峰 Miho Aniya
妹3 Sister 3 ・・・・・・・ アンジェリ・バヤニ Angeli Bayan
<スタッフ>
照明/竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響/島猛(ステージオフィス)
音響操作/勝見友理
舞台監督/高橋淳一
美術/じょん万次郎
衣裳/大野典子
演出助手/清水弥生・坂田恵
文芸助手/久保志乃ぶ
宣伝意匠/高崎勝也
イラスト/内田春菊
美術協力/Carla Valverde
協力/高津映画装飾株式会社 PETA
Herbert Go 丸岡祥宏 吉田和美 米倉由貴絵
岡野彰子 加藤真砂美 河本三咲 増永紋美 八代名菜子
制作/古元道広・近藤順子
制作助手/小池陽子
Company Staff/中山マリ 猪熊恒和 大西孝洋 江口敦子 樋尾麻衣子
向井孝成 宮島千栄 裴優宇 久保島隆
助成/東京都芸術文化発信事業
後援/フィリピン大使館
独立行政法人 国際交流基金
平成17年度文化庁芸術創造活動重点支援事業