るぼわーる「真説・さくら吹雪が風に舞う」

大劇場向きの芝居は個人的に好きじゃない。派手なオーバーアクションよりも、狭い空間で息詰めて見るような作品の方が好みだ。
だけど、嗜好の壁を越えて「良い」と言わしめる作品も確実に存在する。近代の日本を舞台にした今回のるぼわーるの作品は、私にとっては正に「良い」と言える大劇場芝居だった。


芸術家の卵たちが集まる東京郊外の集落「文士村」が舞台。
その村に伝わる、桜の季節の神隠し伝説を軸に、話は進む。
桜の樹の精霊なんかも登場したりしてかなり夢のあふれる舞台設定なのだが、
特筆したいのはこの作品が、神隠し伝説を
「真実を隠すために集落の人間全員ででっち上げた話」とした所である。
花嫁が失踪すれば鬼に攫われたと言い、子供がいなくなれば神隠しだということにして、現実に有った事故や事件を覆い隠す。
文士村に紛れ込んだ新聞記者たちがその伝説を引き剥がしていく過程が、作品にリアリティを与えていた。

最初は新聞記者の視点ではなく、
事件の犯人となる男の夢や回想、幻覚を交えて話が進んでいく。
特にことわり無く場面が転々とするし、
話の核になる女性も一人二役で登場するので最初のうちは混乱したが、
反面、話の展開に強く惹き付けられた。
劇評をするに当たって思い返すと、かなり細かい所まで辻褄が合っていて、
丁寧に作られた作品であることを新たに実感する。

やっぱり大劇場向きの芝居だ、と引いてしまう面も沢山あって、
空中で平泳ぎしてるみたいな役者の動きには慣れなかったし、
次のシーンの都合だけで退場したことがありありと分かる瞬間も多かった。
住人達の生活している「がらくただらけのバンガロー」も、
舞台が広々としすぎて、雑然とした感じが今一つ実感しにくかった。
しかし「バンガロー」は無いだろ。作品の舞台となる時代は具体的には特定されてないけど、
カフェの女給や首にスカーフ巻いた新聞記者が普通に登場する世界観と台詞の不一致は気になった。

ミュージカルと謳ってこそいないが、
作品中では劇中歌が数回挿入され、派手なダンスもある。
各所で見られた段取り優先の演技は、ミュージカル特有の不自然さでもあると思う。
完全に取り払うのは難しいものだけど、容認するには段取りが透けすぎだ。

ラストシーンでは、
文士村の人達は全員村を出て、後には事件の犯人だった男が一人、
すっかり正常に戻った様子で残る。

見ようによっては彼は住人たちの幻覚のようにも見え、
恐らくそう見えることを意図して演出したのだろうな、とは思うのだが、
如何せん説明が少なすぎてその辺がとっても分かりにくい。
新聞記者の反応も薄っぺらで拍子抜けする。「真吾はもう大丈夫だ」じゃないよ、
理由が有ったとは言え人を殺してるんだぜ、そいつ。
このラストシーンは一考の余地有り、だと思う。

話の出来栄えばかり語ってしまったが、ダンスと音楽が非常に印象深かった。
劇中にダンスを挿入する劇団は数多いけど、
バレエの経験者が振付を担当したらしくかなり本格的で、
狂い咲きした桜の散る様が鮮やかに表現されていたように思う。
桜吹雪を人が演じたっていいじゃん、っていう姿勢も含めて、好感が持てた。
それと歌。ちょうど持ち合わせが無くて諦めざるを得なかったけど、
サウンドトラックのCD欲しさに財布掴んで劇場を飛び出したのは初めてだ。
テーマソングの旋律が非常に美しい。作曲者の山貴優さんには今後の作品も期待している。

るぼわーるproduct No.10「真説・さくら吹雪が風に舞う」
作・演出=浅沼絵里子

出演=千葉洋紀/彦松洋介/千葉ひろき/田口慶子/石川真利子(un-even)
/饗庭大輔(un-even)/松崎恵美子/南吉人/上島佳代子(ロックンロール・クラシック)
/宮川英子(un-even)/辻井良介/児玉たかこ
/渡邉文絵/須原愛記/堀江慎也(un-even)

製作総指揮 木村康弘
音楽監督 山 貴優((有)O Creative)
振付  饗庭大輔(un-even)
振付助手 宮川英子(un-even)
照明  高野亜紀子((有)ハングオーバー)
音響 塩原良卓
舞台美術 加藤まゆこ
大道具製作 島田 渡
舞台監督 光田宣之
衣装デザイン あやし
衣装製作 阿部真理子/田口慶子
宣伝美術  武田和香
宣伝写真 横山直記
制作統括 渡辺文絵/古庄有子
記録 西方忠男
制作  Office Review
制作助手 寺田麻結
企画・製作  るぼわーる

2006年6月22日(Thr)~6月26日(Mon)
シアターグリーン・メインホール


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