劇団神馬「12人の怒れる学校へ行こう!」

◎ダルダル感いっぱいのファンタジー 不条理と情熱の高校異次元世界  青柳舞(共立女子大大学院)  「田中君は鶏を殺したのか!?」―なんと心躍る誘い文句ではないか。別に血を見て喜ぶ趣味や動物虐待に喜びを感じる変態さん、では … “劇団神馬「12人の怒れる学校へ行こう!」” の続きを読む

◎ダルダル感いっぱいのファンタジー 不条理と情熱の高校異次元世界
 青柳舞(共立女子大大学院)

 「田中君は鶏を殺したのか!?」―なんと心躍る誘い文句ではないか。別に血を見て喜ぶ趣味や動物虐待に喜びを感じる変態さん、ではないのであしからず。高校を舞台に「恋愛、部活、いじめ、バカ、青春、陪審員!」というサブタイトルは、完全私ハートにメッガヒット。田中君が鶏を殺したのか気になって、足は自然とタイニイアリスへ向かった。

 その高校は生徒の自主性、生徒による学校運営を目指している、という。そんな中、事件が起こる。学校で飼っていた鶏が殺されたのだ。自治委員会がその容疑者「3年D組田中太一」を特定、生徒内から無作為に選ばれた12人の陪
審員が、田中君は果たして有罪か無罪か議論していく。田中君は法廷(教室)に姿を現わさない。描かれていくのは陪審員のほうである。

 12人の陪審員がそれぞれ、学年に必ず1人はいそうな、個性炸裂な、癖のある高校生たち。しかもその裁判、高校生特有の他人に対する無関心、無干渉故の、ダルダル感で進んでいく・・・・・・。

 あぁこのダルダル感。誰しも高校で感じるのではないだろうか。たとえば、隠れてタバコを吸った挙句、証拠隠滅に手を抜いた大馬鹿者一人のせいで真夏の体育館で、自分にはまったく関係ないのに、説教につき合わされ、先生の道
徳を長々と聞かされるあのときのダルさ。登場する12人の高校生ももちろんやる気ゼロ。ダルさ100%。さっさと終わらせ誰もが早く帰りたい。だから適当に多数決によって評決を出す。が、正義の自治委員に怒られ、なんとなく、まじめな空気が流れ出す。そんな中、陪審員の一人が「田中君は鶏を殺していません」と無罪を訴える。時にバカをまじめにやりながら、白熱する討論の中、浮かびあがる事実。はたして・・・田中君は・・・が大まかなあらすじである。

 最初、何人かの人間性を書き込みが主でなかなか裁判のほうに入っていかないダルさ。舞台は放課後の教室。舞台転換なしの上に、そろそろ限界に達しそうになると、次の小さな事件が起きる。その繰り返しで進んでいくことのダルさ。このダルさループである。しかし、後半になるにつれて、だんだんとスピード感ある舞台になっていく。

 この話はある種のファンタジーでもあった、と言ったら言い過ぎだろうか? 高校生という時期は大人であって大人じゃなくて、子供であって子供じゃない不思議で面白い時代だ。高校は、閉鎖された異次元世界だった。時には不条理さを感じたり、不思議な情熱と一体感に突き動かされ、何でも出来そうで、出来ない青い春、それが高校だったなぁと、そんなことも同時に思い出させてくれる、そんな作品でもあった。

 ひとつだけ不満を書いておこう。この物語の中に出てくる高校生たちはみな個性的だが、服装に関してはかなりまじめであることだ。短きゃいいってもんじゃない事を知らず、見るに耐えない大根足を晒す女子も、見ているだけで、引きずり落としたくなるようなパンツ丸見せの腰パンを穿いた男子もいない。もっと細かいところを思うと、みんな高校生のくせにやたら綺麗な上履きを穿いている。今の高校生にはありえないと思う。私の高校時代も汚い上履きが当
たり前だったなぁ。うちの高校(しかも女子高)でもあまりに上履が汚すぎて先生に注意されていた子いたものだ。制服という無個性にキャラクターの個性をもっとだせたらよかったのではないだろうか。
(2006.7.27)(初出:週刊「マガジン・ワンダーランド」創刊号 8月2日発行)

【著者紹介】
青柳 舞(あおやぎ・まい) 1984年、東京都新宿区生まれ。跡見学園女子大学文学部卒。共立女子大大学
院演劇専攻在籍。

【上演記録】
劇団神馬 第19回公演「12人の怒れる学校へ行こう! 恋愛 部活 い
じめ バカ 青春 陪審員!」

タイニイアリス(新宿)(2006年7月7日-10日)
作・演出 上野 憲明

[出演]
五十嵐真理 / 印宮伸二 / 上野憲明 / 大野裕子 / 荻山恭規 / 関谷 誠
井伊順子(フリー) / 石川 吾(才賀京子事務所) / 倭文俊(フリー)
/ 野島ののじ(フリー) / 眞賀里知乃(大人の麦茶) / 松本紫(フ
リー)
川守田 政人(東京ギヤマン堂) / 都筑 大輔(フリー) / 広瀬 達也(東
京ギヤマン堂)
※3人の中から毎回2人がゲスト出演。

【関連情報】
上野憲明(劇団神馬代表)インタビュー(アリスインタビュー)
・劇団神馬Webサイト http://www.asutoeito.co.jp/shimba/


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