文学系雑誌で演劇(人)特集

 小劇場演劇やコンテンポラリーダンスが既存の雑誌メディアで取り上げられることが多くなってきたようです。国語教育の専門誌『国文学解釈と鑑賞』が別冊で「現代演劇」を特集しました。戦後演劇の総ざらいのような内容になっていますが … “文学系雑誌で演劇(人)特集” の続きを読む

 小劇場演劇やコンテンポラリーダンスが既存の雑誌メディアで取り上げられることが多くなってきたようです。国語教育の専門誌『国文学解釈と鑑賞』が別冊で「現代演劇」を特集しました。戦後演劇の総ざらいのような内容になっていますが、もちろん小劇場演劇のいまも含めてずっしり手応えのある論文が並んでいます。
 「詩と批評」をサブタイトルにした月刊誌『ユリイカ』は11月臨時増刊号で「総特集 宮沢章夫」を発売しました。劇作、演出だけでなく、小説の分野でも脂の乗ってきた時期のタイミングよい企画ではないでしょうか。

 演劇にあらためて光が当たるのは、『ユリイカ』(2005年7月号)の特集「この小劇場を観よ!」がはしりかもしれません。その後いくつかのミニ小劇場特集が雑誌を飾ってきました。作家として小説を発表する人も目立っているので、いろいろな角度から劇場があらためて取り上げられてきたような気がします。

 今回取り上げた雑誌の目次は以下の通りです。

▽国文学解釈と鑑賞 別冊「現代演劇」
今村忠純 編
発行年月:2006年12月/A5判/総頁数:376頁
定価¥2800(本体¥2667)
http://www.shibundo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=037181268

■内容
戦争・敗戦・戦後の体験によって、あらたに始まった現代演劇生産の歴史を、多面的・多角的に算えなおすこと、さらにそこから新世紀の現代演劇の明日を測ろうと試みたのが本別冊である。日本の現代演劇の明日は、世界の演劇伝統と革新に通じる広くそして豊かなものでありたい。その願いこそが万人のものである。

【主要目次】
■座談会:現代演劇の昨日、今日、明日 (岸田今日子/岸田衿子/今村忠純)

■現代演劇とはなにか
・多頭怪獣としての新劇 (大笹吉雄)
・日本の現代演劇を「外国=西洋」に説明する―〈理念〉なき〈空虚〉をめぐって (内野 儀)
・剥き出しの「暴力」と果てしなき「セックス」―禁忌なき時代の演劇 (七字英輔)
・人形劇/ダンス/舞台装置 (永野曜一)

■戦後演劇の展開
・リアリズムの達成―木下順二/久保栄 (菅井幸雄)
・戦後という喜劇―福田と飯沢 (岩佐壮四郎)
・神と人との関係を問う―田中千禾夫と矢代静一 (宮内淳子)
・岸田國士と現代演劇―ピンターとの類似、そして時代を写す〈痙攣〉 (野田 学)

■小劇場演劇の展開
・テント・小劇場演劇の展開 (西堂行人)
・天井桟敷の系譜・または寺山修司の仕事 (中村三春)
・唐十郎―状況劇場から唐組へ (西堂行人)
・どこに演劇を出現させるか?―「黒テント」前史 (津野海太郎)
・「自由劇場」抄―レンとサムとデコがいた (村井 健)
・太田省吾の方法 (今村忠純)
・鈴木忠志の「グロテスクの美学」 (七字英輔)
・安部公房スタジオ―反言語の試み (拓植光彦)

■小劇場第二世代・第三世代
・つかブームから野田秀樹へ (風間 研)
・つかこうへいブーム (曾根博義)
・山崎哲と竹内銃一郎 (七字英輔)
・夢の遊眠社からNODA MAPへ (本橋哲也)
・都市 それはゆるぎなき全体―如月小春作「家、世の果ての・・・」より (高萩 宏)
・「3○○」から「宇宙堂」へ ―渡辺えり子と二つの劇団 (林あまり)
・近未来劇の系譜 (小森 収)
・劇作家不在の演劇 (小森 収)
・ク・ナウカの方法 (山中剛史)
・黒い笑いの過激な喜劇―松尾スズキの大人計画とケラのナイロン100℃ (高橋 豊)
・「窓枠」と「振動」―松田正隆論のための覚え書き (森山直人)
・岩松了試論―時効警察をめぐる対話形式による (川口賢哉)
・青年団のストラテジイ―平田オリザ (松本和也)

■物語化される「歴史」
・一九四五年八月六日のジャンケンポン (渡辺昭夫)
・二兎から一兎へ―永井愛のドラマトゥルギーの転換 (松井憲太郎)
・坂手洋二と鱗光群の仕事 (江原吉博)
・ザ・ガジラの仕事―鐘下辰男 (新野守広)
・木山事務所の仕事 (木山 潔)

■現代演劇の風景
・メロドラマ作家・秋元松代 (小谷野敦)
・交響する演技空間―三島由紀夫の芝居 (松本 徹)
・宮本研の対話劇―新劇のラストランナーの魅力 (岩波 剛)
・福田善之小論 (今村忠純)
・山崎正和論 (水落 潔)
・井上ひさし論 (小森陽一)
・清水邦夫論 (宮下展夫)
・ベケットから遠く離れて―別役実の歴史感覚 (日比野啓)
・絶望を指し示す―蜷川、野田、演出の現在 (長谷部浩)

■現代演劇とその周辺
・歌舞伎と近代劇 (近藤瑞男)
・現代演劇としての新派―試練の季節、二一世紀を迎えて (金井景子)
・宝塚歌劇の近代と脱近代―研究の視角と位置づけ (川崎賢子)
・ミュージカルの系譜 (藤田敏雄)
・日本オペラの戦後―海外公演に見る日本オペラ (竹澤嘉明)
・しなやかに、したたかに時代と関わる―コンテンポラリー・ダンス (立木燁子)
・「親子劇場」に関する素描 (宮川健郎)

■海外演劇と現代演劇
・二一世紀のシェイクスピア劇―多彩な翻訳の登場 (扇田昭彦)
・イプセン、この一〇〇年 (毛利三彌)
・チェーホフ劇 その多面性 (牧原 純)
・ブレヒトの受容 (岩淵達治)
・東アジア演劇の連帯と独自性を求めて―私の日中韓演劇の交流 (石澤秀二)
・about an attitude to life―not about a lifestyle ― 英語現代演劇の一断面 (みなもとごろう)




▽『ユリイカ2006年 11月臨時増刊号』総特集*宮沢章夫
定価1,300 円(本体1,238 円)
ISBN4-7917-0155-0
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%B5%DC%C2%F4%BE%CF%C9%D7

【対談】
身体と言葉の饗宴としての『鵺/NUE』 / 宮沢章夫+野村萬斎
近過去の世界との対話 演劇の現在、身体の可能性 / 宮沢章夫+佐藤信
文化的闘争の作法 八〇年代地下文化ゲリラはいかに暗躍したか / 宮沢章夫+青山真治

【拝啓 宮沢章夫様――】
ふと立ち止まる宮沢章夫 / 友部正人
宮沢さんに笑ってほしくて / 鈴木慶一
宮沢章夫の変貌 / 笠木泉

【先行者・宮沢章夫】
スタイルを捨てること / 岡田利規
宮沢さんのこと / 前田司郎
「ただ、立つ」という困難 / 松井周

【演劇再生請負人の軌跡】
〈Jという場所〉で歴史を「undo」すること 〈九・一一〉以降の宮沢章夫をめぐって / 内野儀
ポルノ+虐殺 あるいは、『谷中村滅亡史』 の影 / 鴻英良
ベケット/不在/別役実 宮沢章夫と不条理劇のドラマツルギー / 岡室美奈子
「かっこいい身体」と、その他の記憶(ノイズ) 宮沢章夫〈身体論〉β版 / 桜井圭介
小劇場の再生? 宮沢章夫の「京都時代」(仮)をめぐって / 森山直人

【言葉のパフォーマンスもすごいんです!】
「物件」を演じる言葉 宮沢章夫のエッセイにおける路上観察的感性 / 竹内孝宏
WISH YOU WERE HERE 宮沢章夫の小説について / 佐々木敦
宮沢章夫ストーカー日記 / 三坂知絵子

【資料】
宮沢章夫自筆年譜 / 宮沢章夫
宮沢章夫ビブリオグラフィー / 編=和久田賴男
遊園地再生事業団・全公演データ

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