第12回劇作家協会新人戯曲賞公開審査会が12月17日午後6時30分から東京・新宿の紀伊國屋ホールで開かれ、嶽本あゆ美「ダム」が新人戯曲賞を受賞しました。
受賞作「ダム」は熊本県の山奥に予定されたダム建設現場近くの民宿が舞台。廃村同然の故郷で細々と民宿を営む中年女性、彼女と付き合うダム工事事務所の若い職員、昔ダム開発反対運動に関わったが今は環境カウンセラーとして登場する50代後半の大学教授らが織りなす物語。「人物設定とプロットが綿密に仕組まれ、時代の変わり様を母子二代で描き出した」(斎藤憐)「40歳女性のつらさが痛いほど浮かんでくる」(鴻上尚史)「社会問題と土俗的モチーフが融合され、神話的世界を作ることに成功した」(永井愛)など高い評価を受けました。
嶽本さんは神奈川県出身。2003年、「かつて当方に国ありき・堀田善衛『漢奸』より」で文化庁舞台芸術創作奨励賞現代演劇部門佳作、2005年演劇集団「円」公演「オリュウノオバ物語-中上健次原作『千年の愉楽』より」脚本などを執筆。
今回の応募総数は183作。一次選考で21作品に。さらに第二次選考で選ばれた6作品を公開で審査した。審査員は、川村毅、鴻上尚史、斎藤憐、坂手洋二、永井愛、マキノノゾミ、横内謙介の各氏。6作品にそれぞれ意見を述べ合った後、推薦作を2作挙げる第1次投票した。結果「ダム」5票、新井哲「返事」4票、松田清志「風穴」3票、山之内宏一「宮さんのくんち」2票となった。再度討論した後、候補1作を挙げる第2次投票で、「ダム」が4票を獲得して受賞が決まった。次点は「風穴」2票、「返事」1票だった。
受賞作を含む最終候補作は「優秀新人戯曲集2007」(ブロンズ新社)に収録されている。最終候補6作品は以下の通り。
・突端の妖女 岩崎裕司
・宮さんのくんち 山之内宏一
・風穴 松田清志
・返事 新井 哲
・ダム 嶽本あゆ美
・マトリョーシカの鞦韆(ふらここ) 島林 愛