連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」最終回(第14回)

||| 自分の劇場と日本の演劇とどっちをとるか

-次に、劇場法(仮称)についてご意見を伺いたいのですが。公共劇場と民間劇場の位置づけ、その関係はどうあるべきか、みたいな話にもなると思うのですが、まず、劇場法についてどうお考えですか。

玉山悟さん玉山 どうなんでしょう。劇場法は、今、どういうふうになってるんでしょうか。今、出てるのは、まだ民間試案ですよね。

-そうですね。話が盛り上がっていたのに、震災で、あれ、劇場法はどうしたんだっけ? という感じが私たちにもあるんですが、もちろん立ち消えになったわけではないですよね。

玉山 あの話が出てきて盛り上がってた当初に、平田オリザさんが話していらした通りのものができるのなら、すばらしいと思います。

-最初に少し芸術監督についてのお話が出ましたが、芸術監督制についてはいかがですか。

玉山 各公共劇場が芸術監督を立てて、プログラムを主導的に編成していくというのは、いいことではないかと思います。ただ、今のアーツカウンシルで大丈夫なのか、劇場法だけ作ってアーツカウンシルが不備なら、作る意味がないのではないかという心配をしています。

-なるほど。公共劇場を、拠点劇場・中核劇場・その他の三種類にするとか、フランス的に、拠点劇場で作品を作って回していくというようなことについては。

玉山 そうなったらいいと思います。各市町村が、隣の町が500席のホールを作ったからうちの町は600席だべ、と言って、誰も使わないホールをどんどん建てて、その維持管理のためだけに使いもしないホールに毎年予算がつくという馬鹿馬鹿しいことはやめるべきだと思います。
 私は岩手出身ですが、本当に、何もない村に立派なホールが建ってる。向こうがあんなのを作ったからうちはその上だ、みたいなことだから。結局、静岡空港も茨城空港もそうでしょう。それって本当にいるの? って。だって、茨城-鳥取便なんて、永遠に飛ばないでしょう。北陸新幹線だって、建設費用は50年かけて回収するといいますが、50年後の北陸の人口はどれだけあるのかっていうことですよね。田中角栄の言ったような「国土の均衡ある発展」という時代ではないのだから。もう、そういう幻想は諦めて、お金をどこかに重点的に使うべきではないかと思います。
 いろんなセミナーなんかで聞いたところでは、そのために劇場法ができるんじゃないかと思っていたのですが。その理念に近いものができることを望んでます。当初の、芸団協-平田モデルとでもいうのかな。あれに近いものができるのならいいんじゃないかと思ってますね。

-そうなったときの公共劇場と民間劇場の関係についてですが。反対の立場を取る民間劇場の方には、助成金が全部公共劇場に流れてしまって、民間は圧迫されるのではないかと言う方もいます。

玉山 それはそうなるだろうと思っていますが、まあしょうがないでしょう。そうなったらそうなったで、別の戦い方を考えるんじゃないかな。

-民間は民間で切り開くしかないというお考えですか。

玉山 つまり、それは自分の劇場が大事か、日本の演劇が大事かということじゃないですか。日本の演劇の発展のために、ちゃんとした劇場法ができるなら―あくまでも「ちゃんとした」ですよ。わけのわからないマイナスになるような劇場法ならない方がいいけど。日本の演劇の発展のために劇場法ができるならいいじゃないですか、ということです。

||| 民間の小劇場で育てきたもの

-公共と民間の位置づけということで、東京芸術劇場で夏に行われた、芸劇eyes番外編『20年安泰。』について、ブログでの玉山さんのご発言がありました。あの時は、バナナ学園純情乙女組とかロロなど、こちらの劇場で生まれて育った劇団が出たんですよね。

玉山悟さん玉山 2011年の夏にちょっとした催し物をやりたくて、2010年に、いろんな団体に来年の夏のスケジュールはどうなってるって聞いたら、ちょっとイベントが決まってて、と断られることが多くて、それでその企画はできなくなったんです。そのあと、『20年安泰。』のチラシを見て、何だこれか、と思ったんです。あれは各団体20分のショーケース形式でしたね。だからよかったんですが、あれが公共の劇場が、若手の劇団を1週間ずつ5週間とかいうことだったら、本当に怒ったでしょうね。

-公共劇場は「育てる」という役割を果たしてないんじゃないかというご意見でしたね。

玉山 そうです。だって、公共劇場では旗揚げ公演はできないでしょう。キャパ300の公共劇場で旗揚げできる若い劇団がありますか? 公共劇場は無名の劇団の旗揚げに会場を貸すんですか?
 あうるすぽっとで無名の劇団が旗揚げ公演を打てますか? あうるすぽっとでやるならタレントを使ってとか、人気のある声優を使ってってことになりますよね。キャパ200、300の公共ホールは、関東近郊にもすごい数がありますけど、同じような状況ですよね。
 劇団というのは、どこかで旗揚げ公演というのを打たなくてはならないんです。だったら、劇団はどこで産声を上げ、どこで育つんですか? 無名の劇作家、演出家はどこで作品を発表するんですか?
 それは今、少なくとも東京では、民間が全部担っています。福岡だったら、ぽんプラザホールなんかがあって、ひょっとすると旗揚げから公共ホールってこともあるかもしれませんけど。
 公共ホールは、民間小劇場の実りだけ持っていくんですか? ってことです。それを許さんぞとは思いますが、まあ、きっとそうなるでしょう。うちは週50万円、あっちはうまくいけばタダですから。うちでやってた劇団が、公共劇場にいくということは、容易に予想できることです。

-劇団がそうするのは仕方ないということですね。

玉山 それは仕方がないでしょう。

-だから公共劇場さん、もうちょっと考えてください、っていうご意見ですか。

玉山 民間の劇場がクローズしたら、あなたがたはどこから作品を買い付けるんですか? とは思います。いい作品は湧いて出るわけじゃないし、学生劇団を隅から隅まで見て作品を買い付けるわけじゃないだろうし。どうするつもりなの? って。

-あの時にツイッター上で、何人かの人が反応されて、極論すると、それぞれの住み分けがあるんだから仕方ない、税金を投入する以上なかなか冒険はできない、『20年安泰。』も最大限の冒険だったと思うという意見もありました。そういう意見ももっともかなとも思います。でも確かに、多くの劇団は民間劇場でゼロから育てられてきたんですよね。

玉山 ロロなんかは、ゼロ以前からです。旗揚げ公演以前から相談に乗ってました。この台本を読んでください、ああいいよとか、旗揚げ公演をするってどうやるんですか、というところから相談に乗ってるんですから。これ面白いよ、うちで旗揚げ公演をやろう、じゃあ人はどこからどうやって集めて、というところから一緒にやってきてるから。バナナ学園なんかでも、お客さんがいない頃から、じゃあうちでやんなさい、空いてるから、というところから、長い間一緒にやってきたんです。
 そういう機能なく、安定して1000人規模の動員のできる作家、演出家、劇団をただ持っていくのは許さんぞってことです。そっちは小屋代がタダなんだから、うちから苗を持っていかれるのはしょうがないけれど、生まれてきた芽を誰が苗にまで育てているのかを忘れてほしくない。
 ただ、それは仕方がないことだとは思います。都内の小劇団だって、こまばアゴラ小劇場でやるか王子小劇場でやるかって言えば、それはアゴラでやるんです、小屋代はうちと比べて3分の1くらいですむんですから。それは仕方がないでしょう。その制度を崩せとは思っていない。
 というかそれ以前に、日本は、東京は、なぜ民間の株式会社が、赤字を出しながら低賃金・長時間労働でキャパ100の劇場をやらなきゃならないんだっていう問題です。だって、劇場って社会資本でしょう。そもそもこの規模の小屋を公共がやってないという日本の制度がおかしいんじゃないですか。
 川に橋があるように、海に港があるように、町には劇場がなくてはならないと思うんですけど、なぜ劇場は民間なんだ?! まずそこが謎なんですよ、東京という都市の。
 他の地域のことはわからないですけど、東京に限って言えば「劇団がお金を出して小規模の劇場を借りる」というシステム自体、40年程度の歴史しかないでしょう。前のシアターグリーンが70年代、下北沢のオフオフ、駅前も80年代はじめの創立。だから民間の劇場という商売の歴史自体がすごく浅いし、根拠がないといえばないかもしれない。そもそもこれって公共でやるべき仕事なんじゃない? って思います。

-そういう役割を公共で果たすべきという考えは劇場法にはないんでしょうか。

玉山 民間の劇場はどうとかこうとか、何行かそういうこともあったようですが、さあ、どうなることでしょうか。別に、一方的にプログラムを持っていかれる状態になっても、それはそれで頑張るよ、別な喧嘩の仕方をするよ、と思っていますけどね。

||| どんどん大きい劇場に行けばいい

-王子小劇場のツイッターのプロフィールに「ライバルは駅前とアゴラ」とありましたけど。それは、単純に駅前劇場とこまばアゴラ劇場には負けないぞって意味ですか。

玉山 そうです。アゴラや駅前よりうちの方が全然面白いぞって思ってます。あたり前ですけど。

-王子小劇場の良さを言葉にするとなんでしょうか。アゴラにも駅前にも負けない! っていうところは。

玉山 何でしょうねえ。私が目をつけて引っ張ってくる劇団が2年後くらいに売れるってことでしょうか。うちでやってちょっとしたら売れるっていうパターンが多くて。バナナ学園もロロもそうですけど、ずっとそうなんです。それは「うちの」ではなくて、劇場オープン以来の私の選球眼なのかもしれない。

-バナナ学園やロロについて「この劇団はいける!」って思ったのはどういうところですか。

玉山 ロロは、最初に、この台本を王子で上演したいんですけどって持ってきたときから、これはすごい才能が出た! と思いました。バナナ学園は、クオリティは今と比べるとずっと低かったんですけど。これは賑やかでいいや、うちでやろう! と思ったんです。そうしているうちに、どんどん過激になっていって、それに従って面白くなってきました。その間、安く場所を貸してきました。

-ロロは通過してしまったって感じですか。

玉山 これは職員でも意見が分かれるところですが。今やってる劇団にずっとやってもらおうという意見の方が多いんですが、私はどんどん規模の大きい劇場に行けばいいと思います。劇団がひとつの劇場に長くいることはないと。
 ただ、うちの劇場を出たあと、同規模の劇場に行かれると腹が立ちます。ザ・ポケットとか吉祥寺シアターに行けよ、なんで同規模なんだよって。150席、200席規模の劇場に行くならともかく、うちの劇場から似た規模の劇場に行かれると、やっぱりね。大きな劇場に行くのなら、どんどん行ってほしいと思います。

-見込んだ劇団が化けて、どんどん大きくなっていくのは、やっぱり、やったぜ! という感じですか。

玉山 そうですね。うちは毎年、かなりの確率でヒット作を出してるんじゃないって思いますよ。

-それ以外にはどんな劇団がありますか。

玉山 それは来年の演劇祭を見てください(笑)。

-毎年の演劇祭や演劇賞はそういう意味合いもあるんですね。

玉山 演劇祭は、今、王子小劇場が考える面白い演劇はこれです! ってことです。うちの劇場のプログラムや演劇祭のプログラムを通して見ていると、あ、王子はこの劇団を押してるんだなっていうのは見えてくるはずだと思います。

-「アゴラ系」とか「王子系」とか言われたりしますよね。劇場の方は言われたくないかもしれませんが、見る方は、「アゴラ系好きじゃないんなら、王子系に行ったら?」みたいなことがあると思います。

玉山 らしいですね。アゴラっぽい、王子っぽいというのはあると思います。


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