TPAM in Yokohama 2013

◎TPAMエクスチェンジ「地域演劇」グループミーティングレポート
  廣澤 梓

 TPAMが開催地を東京から横浜に移して3年目の今年。それは名称を「東京芸術見本市」(Market)から「国際舞台芸術ミーティング」(Meeting)に変更して3年ということでもある。
 提携事業としてON-PAM(舞台芸術制作者オープンネットワーク)の設立イベントが行われたこともあり、2013年のTPAMは舞台制作者のネットワーク作りの場という性格をより打ち出そうとしていたのではないか。
 ネットワーキング・プログラムの一環として開催されたTPAMエクスチェンジは、青年団・こまばアゴラ劇場の制作であり、ON-PAMの発起人のひとりでもある野村政之さんがファシリテーターを務めた。

 会場のBankART Studio NYKの2階ではスタンド、映像プレゼンテーション、グループ・ミーティング、スピード・ネットワーキングの4つの場が用意された。参加団体の多くが海外へのアプローチに重点を置く中で、日本国内の各地でユニークな活動をしている団体も目立っていた。

 グループ・ミーティングは2月16日(土)と17日(日)の二日間にわたって行われた。参加者4~6人がひとつのテーブルにつき、20分ずつホスト1団体の活動について話を聞ける場として設けられていた。
 今回わたしが参加できたのは、2月16日に開催された4つのミーティングである。それぞれ宮城県仙台市、愛知県名古屋市、三重県津市、福岡県北九州市を拠点に活動する団体によるものだった。ここでは各団体のミーティングについて紹介したい。もちろん舞台制作者に向けた内容であったが、観客も含め、演劇に関わる人に広く共有されたほうが良いように思われたからだ。
 なお同日に1団体につき複数のミーティングが行われたため、ミーティングのタイトルとともに参加した時間も付しておく。

「ARC>Tと仙台の演劇活動」10:35-10:55
 「東日本大震災を機に失われた文化・芸術に関するひと・まち・場の再生と、東北復興に向けた諸活動にアートを通じて寄与するため、またそれに必要なネットワークづくりを推進する」ために震災直後の2011年4月4日に発足。
 宮城県仙台市にオフィスを持つArt Revival Connection TOHOKU、通称ARC>T(アルクト)には、2012年8月時点で個人として146名、30団体が登録している。その事務局長を務める鈴木拓さんが今回の進行役であった。
 震災という出来事を前にしてアートができることなどない、という認識から活動をスタートしたというARC>T。アーティストの側から提案するのではなく、その地域のニーズに応えるべくアーティストの技能をカスタマイズしていく、需要供給型の活動=出前を行っている。しかしその一方で、アーティストの自己表現という側面がないがしろにされがちであるという団体の抱える問題もテーブルではシェアされた。

※ここに紹介した鈴木さんを中心とするARC>Tの活動は、発足から丸2年経った2013年4月4日を以て終了している。今後の活動については、新体制による報告を待ちたい。

「名古屋/地域で一筋40年/うりんこ/継続するカンパニー」11:00-11:20
 名古屋を拠点に活動する劇団うりんこ・うりんこ劇場は、1973年に設立した創立40周年を迎えるカンパニー。現在40人前後の劇団員を抱える児童劇専門の劇団である。東海3県のこどもたちの面倒はうりんこが見る、という言葉が印象的だった、うりんこの制作部に所属する平松隆之さんが進行役。
 その活動期間の長さの他にも、作家・演出家不在の俳優だけの集団であり、作品ごとに招聘していること、株式会社であり収入の9割は学校や公立文化施設等で行う公演収入であること、といった驚くべき話が次々飛び出す。
 地域で演劇をすること、それは常にその土地にいるということであり、いい加減な仕事はできない。こども相手ならなおさらである。「20年後も演劇したい?」と参加者に問う平松さん。長く活動をするためには拠点を持つこと、すなわち地域コミュニティへ参加することを薦めるという。社会で必要とされる劇団のあり方、演劇のあり方について考えさせられた時間だった。

TPAMエクスチェンジ グループ・ミーティング
【写真は、TPAMエクスチェンジ グループ・ミーティングの様子。撮影=pawanavi 井手悠哉 提供=国際舞台芸術ミーティングin Yokohama事務局 禁無断転載】

「三重県文化会館と津の演劇環境」11:25-11:45
 ミーティングの進行役である三重県文化会館の松浦茂之さんがほとんど決めているという、招聘公演のラインナップが魅力的。2013年度のプログラムも柿喰う客、ハイバイ、□□□(クチロロ)、KUDAN Project等充実している。
 配布資料を元に次々に取り組みや会館の施設を紹介していくが、気がつくと話題は民間の劇場である津あけぼの座/津あけぼの座スクエアに及んでいた。「公立劇場の職員が民間劇場の宣伝もする、こんなことは普通ない」と松浦さん。地域の演劇を担う団体同士が協力して作り上げているという津の演劇。
 あけぼの座を運営する特定非営利活動法人パフォーミングアーツネットワークみえとの共同主催公演として紹介されたM-PADは津市内の飲食店・寺院で料理を楽しみながら朗読を聞けるというイベント。昨年で3回目を迎えたという。観客の9割は普段劇場には来ない人たちだそうで、地域と連携して新たな演劇の観客を生むきっかけづくりも積極的に行っている。

「枝光本町商店街アイアンシアターについて」11:50-12:10
 参加者に自己紹介と参加理由を尋ねた後は、自分は明日までここにいるから、何か聞きたいことがあれば捕まえて聞いて欲しいと言ったきり、特に自らプレゼンテーションすることはしなかった市原幹也さんのテーブル。福岡県北九州市八幡東区枝光にある銀行だった建物をリノベーションした劇場の芸術監督兼レジデントカンパニーであるのこされ劇場≡の主宰を務める。
 その席では参加者による質問に市原さんが答える他、あえてホストが話をしないことで、ホストそっちのけで参加者が他の参加者に質問するということも起こった。このとき話をした劇団制作の方とはTPAMのクロージング・パーティで再会し、今度はまた別の人を交えて話をすることになる。
 北九州市は政令指定都市の中で最も高齢化率が高いという。閉じていきがちなコミュニティに演劇を通じて、余所から来た人を出会わせる活動を行ってきたアイアンシアターならではの、ホストをメディアに人が繋がっていくミーティングになった。

 わたしが参加できたグループ・ミーティングは、16日だけでも参加団体が20を越える中でのほんの一部にすぎない。また非常に短い時間であったため、それぞれの団体の活動についてザッピングしたという程度だ。しかし、一度に地域演劇を牽引する4人のエネルギーに直接触れることができた貴重な80分間だった。それは演劇をめぐって、これまで東京中心に語られてきたものとは異なった状況を予感させる時間でもあった。

 グループ・ミーティング参加団体の紹介文には「関心をお持ちの劇場関係者、アーティスト・団体関係者の方お集まり下さい」の文字が並んでいた。ミーティングは予約を受け付けていたが、海外志向の強い団体に予約が集中していたようだ。地域で活動している団体のテーブルには、前日の時点で空きが多かったという。その話を事前に聞いていたため、舞台制作者ではないわたしも当日テーブルに着くことができた。蓋を開ければ実際にはどのテーブルも賑わいを見せていた印象だったが。
 しかし、そもそもTPAMエクスチェンジへの入場は、16日に関しては誰もが購入できるパスを持っている人が対象で、17日にいたっては誰でも可能だったのだ。だが、禁止こそされてはいないとは言え、このような状況でグループ・ミーティングへの舞台制作者以外の人の出入りは難しかったように思う。

 グループ・ミーティングに限らず、横浜に移転して以来、毎年TPAMに参加していて疑問に思うのは、この催しにおける観客の位置づけである。「見本市」を掲げていた頃からずっと、あくまで舞台制作者中心であり、そのネットワーク作りもままならないという状況は理解する。
 しかし、ショーイング・プログラムは作品の買い付け目的の人だけでなく、一般の観客も見ることができる。だが、そのための手段を知るべくウェブサイトを見れば、予約やチケット購入ではなく、いきなり見慣れない「登録」の文字が並び、多くの人は戸惑うはずだ。また、TPAMの演目を目当てに横浜にやってきた人が、まずどこを訪ねればよいかも不明瞭である。よほど強く意志を持った人でないとアクセスすることが難しいのが現状だ。
 地域演劇のポイントに、地域に住む人たちといかに関係を持つかということがあったが、世界の舞台芸術を一挙に見ることができるイベントが開催されていて、横浜の人たちがどれだけTPAMに参加できたのだろうと思う。今年も横浜駅に並んでいたTPAMのポスターは、果たしてそこを通る人たちへのアピールを目論んでいたのだろうか。

 ミーティングを冠した後もTPAMは、未だにその対象に一般の観客を想定できていないように思う。舞台制作者向けのイベントであるとしても、今回のグループ・ミーティングのような場を設けることと、上演に立ち会う観客に配慮することは、舞台芸術をめぐる環境をよりよくするという意味で、同じ問題意識によるものではないか。
 早くも開催時期を2014年の2月8日(土)から16日(日)と発表したTPAM in Yokohama 2014。どのような「ミーティング」の場になるのか、今から楽しみである。

【筆者略歴】
廣澤梓(ひろさわ・あずさ)
 1985年生まれ。山口県下関市出身、神奈川県横浜市在住。上演芸術に興味を持ち始めた大学在学中より一貫して観客に興味がある。2008年より百貨店勤務。2010年秋より「イチゲキ」を始める。2012年秋には「Blog Camp in F/T」に参加。2013年1月よりワンダーランド編集部に参加。
ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/archives/category/ha/hirosawa-azusa/

【開催記録】
TPAM in Yokohama 2013(国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2013)

主催:国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2013 実行委員会(国際交流基金、公益財団法人神奈川芸術文化財団、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団、国際舞台芸術交流センター)
事務局:国際舞台芸術ミーティング in 横浜 事務局(国際舞台芸術交流センター内)
会期:2013年2月9日(土)‐2月17日(日)
会場:ヨコハマ創造都市センター(YCC)、KAAT神奈川芸術劇場、BankART Studio NYK、横浜赤レンガ倉庫1号館他
協力:BankART1929、象の鼻テラス、STスポット、急な坂スタジオ、有限会社ネビュラエクストラサポート(Next)、黄金町エリアマネジメントセンター、株式会社アイ・ティー・シー・エー(三本コーヒーグループ)
後援:横浜市、神奈川県
助成:公益財団法人ポーラ美術振興財団
協賛:株式会社野毛印刷社、株式会社横浜ビール
提携事業:舞台芸術制作者ネットワーク・ミーティング


「TPAM in Yokohama 2013」への1件のフィードバック

  1. 今回のTPAMにボランティアでお手伝いをしました。主にインフォメーションでのお手伝いでしたが、カタログを見ていても、また実際に観にいらした一般の方を見ていても、参加や鑑賞の仕方には私自身も非常に困惑を感じ、一般の人がこれを把握して鑑賞して回るのは相当ややこしいだろうなと察せられるところがあり、実際困惑されている様子も拝見しました。イベントの雰囲気自体は、どっぷりと浸れてとても楽しいものでしたが、一般参加者向けの広報にもっと工夫が必要だというご意見に同感です。

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