劇団タコあし電源×デジタルハリウッド大学院大学プロデュース公演「面接の人達2006」公演が1月28日(金)-2月7日、東京の中野・劇場MOMOで開かれました。就職活動中の大学生、青木理恵さんから身につまされるレポートをいただきました。以下、全文です。
◎作り手の自覚以上に高いニーズ 就職活動を通した自己成長物語
人生のうちで、就職活動ほど特殊なものはない。
・・・そう考えてしまうのは、私自身が今まさにその渦中にいるからなのだろうか。
物語の舞台は、ある就職塾。
就職を目指す学生や、リストラ再就職組の人々が織り成す、
就職活動を通した自己成長物語である。
と、安易にまとめてしまえばそれだけの話なのだ。
就活と恋愛の両立の難しさ。
就活と本当の夢との距離の取り方。
面接。自己PR。一分間スピーチ。
やりたい仕事と、自らの能力に適した仕事とはどう違うのか?
何十社と落ち続けていく自分を、どう位置づければ良いのか?
自分の意識とは無関係とも思えるほどの無常さで繰り広げられる、就職戦線の惨さ。
現在の就職活動というものを本当に知らなければ、描けないドラマである。
「就職活動を続けてきた自分を否定したくない」
面接官と口論になり、
「就職なんかしなければいい」
と言われてしまった男の子が、そう答える。
私は今まさに、そんな思いと戦っているのである。
軽やかな笑いを含んだそつのない構成は、特殊な方法論を使ったものではなかったが、
現在大学4年生、卒業寸前の2月まで就職の決まらない私にとっては、
特別に響いてくるものがあった。
「こんなに自分と向き合って、こんなに惨めになったことはない」
登場人物のセリフが、私の胸をかきむしって涙が出る。
就職支援企業が提供についていたり、
就活生必読の書「面接の達人」が作中で用いられたりと、
これほどリアリティの維持に力が注がれた小劇場作品を見たのは、初めてだと思う。
演劇を本気でやりたいと願う人の多くは、
「夢追い型」と呼ばれるフリーターとなるケースが多い。
演劇と就職活動ほど、並列しがたいものもそうないだろう。
それが同時に目の前で表現される、奇妙な矛盾感。
なのに、この一作を見たことで、どんな就職支援本を読むよりも
深く「就職」について考えさせられてしまったのである。
この作品は多分、作り手の自覚以上にニーズの高い内容である。
日本中の、就職活動学生たちが求め続けている作品だと純粋に思う。
演劇のビジネス活用としてのモデルにも、十分になりえる。
全国の大学で公演してほしい。
それくらい学生には、就職活動というものの具体的イメージが乏しいのである。
もっと早い段階で見られていたら、私も少しは状況が違っていたような気がする。
などというのは言い訳なので、まだ私も諦めずに就職活動を続けるつもりである。
(青木理恵 2005.2.2)
[上演記録]
■劇団劇団タコあし電源×デジタルハリウッド大学院大学 プロデュース公演 「面接の達人2006」
▼脚本
岡本貴也(タコあし電源)
イケタニマサオ(くろいぬパレード)
渡邉睦月(TBS「逃亡者」「太陽の季節」他)
池谷ともこ、みつだりきや
▼演出:ブラジリィー・アン・山田(ブラジル)
▼プロデュース
岡本貴也+デジハリ大学院演劇プロジェクト
▼1月28日-2月7日/中野・劇場MOMO